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鉄道DXでホームドア保守を効率化する5つの確認

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

ホームドアは、駅ホームの安全性を高める重要な設備です。一方で、列車の運行、旅客流動、駅係員の対応、設備保守、工事計画など、多くの業務と密接に関係しているため、単に設置すれば終わりではありません。日々の点検、異常発生時の対応、部品交換、設定変更、記録管理、関係部署との連携まで含めて、継続的に安定稼働させる仕組みが必要です。鉄道DXをホームドア保守に活用する目的は、作業をデジタル化すること自体ではなく、現場で起きている状態を早く、正確に、関係者が同じ認識で把握できるようにすることです。


目次

鉄道DXでホームドア保守を見直す必要性

確認1 保守対象と点検項目を現場単位で整理する

確認2 異常兆候をデータで早期に把握する

確認3 作業記録と原因分析をつなげる

確認4 駅係員・保守担当・指令との連携を標準化する

確認5 更新計画と教育にデータを活用する

鉄道DXを現場に定着させる運用設計

まとめ


鉄道DXでホームドア保守を見直す必要性

鉄道DXという言葉は、乗客向けサービスや運行管理、設備監視、保守管理など、幅広い領域で使われています。ホームドア保守におけるDXは、紙の点検票を電子化するだけでは十分とはいえません。重要なのは、ホームドアの状態、点検結果、異常履歴、対応内容、部品交換履歴、駅ごとの運用条件を一体で扱い、次の保守判断に活かせる状態にすることです。


ホームドアは、駅の安全対策として大きな役割を担います。列車が到着し、停止位置が合い、車両扉の扱いとホームドアの開閉が適切に連携し、旅客が乗降し、列車が発車するまでの短い時間に、複数の機構と制御が正しく動く必要があります。開閉速度、戸挟み検知、施錠状態、センサー反応、非常時の操作、駅係員による確認など、保守対象は多岐にわたります。わずかな違和感や再発性の低い異常でも、運行影響や安全確認の増加につながる可能性があります。


従来の保守では、定期点検、現場巡回、故障発生後の対応、紙や表計算による記録管理が中心になりがちです。この方法でも一定の管理は可能ですが、駅ごとの状況比較、異常の傾向把握、部品劣化の予兆確認、作業品質のばらつき確認には時間がかかります。特に、複数駅にホームドアが設置されている場合、どの駅でどのような異常が多いのか、どの設備で同じ部位の交換が集中しているのか、どの時間帯に対応が発生しやすいのかを俯瞰するには、データの整備が欠かせません。


ホームドア保守のDXでは、現場の負担を増やさずに必要な情報を蓄積し、判断に使える形へ変換することが求められます。作業者が入力する項目が多すぎると、記録は形だけになり、現場に定着しません。逆に、記録項目が少なすぎると、後から原因を追えません。そのため、設備状態をどの単位で見える化するか、異常情報をどの粒度で残すか、作業記録をどの業務に活用するかを事前に整理することが重要です。


また、ホームドアは旅客の行動とも関係します。混雑時、車いすやベビーカー利用時、大きな荷物を持つ旅客が多い時間帯、イベント後の集中乗車時など、通常とは異なる利用環境では、扉周辺での滞留やセンサー反応が増える場合があります。設備単体の問題に見えても、実際には駅の運用、旅客動線、案内方法、列車停止位置、保守周期などが複合的に関係することがあります。鉄道DXでは、こうした現場要因を切り離さずに扱う視点が必要です。


ホームドア保守を効率化するためには、単に故障件数を減らすだけでなく、異常発生時の初動を早くし、原因特定を短縮し、再発防止策を現場へ展開し、更新投資や教育計画につなげる流れを作ることが大切です。この記事では、鉄道DXでホームドア保守を効率化するために確認すべき5つの観点を、実務担当者が導入前に検討しやすい形で解説します。


確認1 保守対象と点検項目を現場単位で整理する

鉄道DXをホームドア保守に活用する最初の確認は、保守対象と点検項目を現場単位で整理できているかどうかです。ホームドアと一口にいっても、駅、番線、号車位置、扉番号、開閉機構、検知部、制御部、非常操作部、表示部、通信部、電源部など、管理すべき単位は細かく分かれます。データ化を始める前に、この管理単位が曖昧なままだと、後から異常履歴を集計しても原因分析に使いにくくなります。


たとえば、ある駅で開閉不良が発生した場合、駅全体の問題として記録するだけでは不十分です。どのホームのどの位置で発生したのか、特定の扉に偏っているのか、同じ部位で繰り返しているのか、列車種別や時間帯に関係があるのかを後から確認できる必要があります。これらを把握するためには、設備台帳、点検記録、故障記録、部品交換履歴が同じ識別情報で結び付いていることが重要です。


現場では、設備番号の呼び方が部署や委託先によって異なることがあります。図面上の番号、保守台帳の番号、現場で使われる呼称、作業報告書の表記がそろっていないと、同じ設備を指しているのか別の設備を指しているのか判断に迷います。DXを進める際には、まず設備識別のルールを統一し、誰が見ても同じ対象を指せる状態にする必要があります。これは地味な作業ですが、後工程の効率を大きく左右します。


点検項目についても、単に多くの項目を並べるのではなく、保守判断に使う観点から設計することが大切です。開閉動作、異音、振動、センサー反応、施錠状態、表示、非常時操作、周辺部材の損傷、清掃状態、ケーブルや接続部の状態など、点検項目ごとに正常、要観察、要処置の基準を明確にします。基準が曖昧だと、作業者によって判断がばらつき、データとして比較しにくくなります。


また、写真や動画を記録に添付する場合も、撮影位置や撮影対象のルールを決めておくと、後から確認しやすくなります。扉全体の状態、損傷箇所、部品交換前後、周辺の障害物、表示状態など、何を残すのかをあらかじめ定めることで、単なる保存ではなく、再確認や教育に使える記録になります。現場写真が多く蓄積されても、対象設備や撮影意図が分からなければ活用は進みません。


点検の頻度も整理が必要です。すべての項目を同じ頻度で確認するのではなく、日常確認、定期点検、重点点検、異常後点検、更新前調査など、目的に応じて分けると運用しやすくなります。鉄道DXでは、点検結果を蓄積しながら、異常が多い設備や負荷が高い駅に重点を置く考え方も可能になります。ただし、現場の安全に関わる項目を安易に省略するのではなく、基準と責任分担を明確にしたうえで見直すことが必要です。


保守対象と点検項目を整理する段階では、現場担当者の意見を必ず取り込むことが重要です。実際に点検する人が使いにくい項目設計では、入力漏れや形式的な記録が増えます。逆に、現場の経験を反映した点検項目は、異常の兆候を早く捉える手がかりになります。ホームドア保守のDXは、現場を置き換えるものではなく、現場の知見をデータとして残し、次の判断に活かすための仕組みです。


確認2 異常兆候をデータで早期に把握する

2つ目の確認は、故障が発生してから対応するだけでなく、異常兆候をデータで早期に把握できるかどうかです。ホームドアのトラブルは、突然発生したように見えても、事前に小さな変化が出ている場合があります。開閉時間がわずかに長くなる、特定の扉だけ動作音が変わる、センサー反応の再確認が増える、施錠確認に時間がかかる、同じ警報が短期間に繰り返されるといった変化です。


こうした兆候は、現場の熟練者であれば感覚的に気づくことがあります。しかし、担当者が交代したり、複数駅を広域で管理したりする場合、個人の経験だけに頼ると見逃しが発生しやすくなります。鉄道DXでは、ログを取得できる設備から得られる情報、点検記録、作業報告、駅係員からの申告を組み合わせ、異常の前触れを見つけやすくすることが重要です。


たとえば、開閉に関するログを蓄積できれば、通常時と比べて動作時間が長くなっている設備を抽出できます。警報履歴を確認できれば、短時間で復旧した軽微な異常が、実は同じ扉に集中していることが分かる場合があります。点検結果と交換履歴を重ねれば、特定部品の劣化傾向や交換後の再発状況を把握できます。これらは、紙の記録を個別に見ているだけでは気づきにくい情報です。


ただし、データがあるだけでは異常兆候を把握できません。何を異常の兆候とみなすか、どの閾値で注意喚起するか、どの段階で現場確認に進むかを運用として決める必要があります。すべての小さな変化を警告にすると、現場は通知に追われ、本当に重要な異常を見落とす恐れがあります。一方で、条件を厳しくしすぎると、兆候を捉える前に故障へ至る可能性があります。実績を見ながら、過剰通知と見逃しのバランスを調整することが大切です。


異常兆候の把握では、駅ごとの環境差も考慮する必要があります。利用者数が多い駅、屋外に近いホーム、風雨や温度変化の影響を受けやすい場所、イベント時に混雑が集中する駅など、設備への負荷は均一ではありません。同じ数値変化でも、ある駅では通常範囲であり、別の駅では注意が必要な変化かもしれません。そのため、全駅一律の基準だけでなく、駅別、番線別、設備別の傾向を見ながら判断する仕組みが求められます。


また、異常兆候をデータで把握する際には、現場の申告を軽視しないことが重要です。ログ上は大きな異常がなくても、駅係員が「開閉音がいつもと違う」「反応が遅い気がする」「旅客の滞留が増えた」と感じる場合があります。こうした定性的な情報を記録に残し、後日発生した異常と照合できるようにすると、現場感覚とデータ分析がつながります。DXは数値だけで判断する仕組みではなく、現場の気づきを組織で共有する仕組みでもあります。


異常兆候を早期に把握できるようになると、保守計画の立て方も変わります。故障してから緊急対応するのではなく、運行影響が少ない時間帯に重点確認を行う、部品交換を前倒しする、同型設備を横断的に確認するなど、計画的な対応が可能になります。結果として、突発対応の負担を減らし、駅係員や保守担当者の心理的な負担も軽減できます。ホームドア保守の効率化では、この予防的な保守への転換が大きな意味を持ちます。


確認3 作業記録と原因分析をつなげる

3つ目の確認は、作業記録が原因分析につながる形で残っているかどうかです。ホームドアに異常が発生した際、現場ではまず安全確認と運行影響の抑制が優先されます。そのため、対応直後の記録は最低限になりやすく、後から原因を追おうとしても、発生状況や応急処置の詳細が不足していることがあります。鉄道DXでは、現場の対応を妨げない範囲で、原因分析に必要な情報を確実に残す工夫が必要です。


作業記録で重要なのは、発生した事象、確認した状態、実施した処置、処置後の結果を分けて記録することです。「復旧済み」だけでは、何が原因で、どの作業に効果があったのか分かりません。扉の再起動で復旧したのか、障害物の除去で復旧したのか、センサー清掃で改善したのか、部品交換が必要だったのかによって、次の対策は変わります。記録の粒度が原因分析の質を左右します。


また、異常発生時の条件も重要です。発生時刻、列車到着前後、混雑状況、天候、周辺工事の有無、清掃作業後かどうか、過去にも同様の事象があったかなど、設備単体では説明できない要因が関係する場合があります。これらをすべて自由記述にすると入力負担が大きくなりますが、選択式と自由記述を組み合わせれば、現場負担を抑えながら分析に使える記録を残せます。


原因分析を進めるには、作業記録と設備台帳、ログ、部品履歴を結び付けることが必要です。ある扉で同じ異常が繰り返されている場合、直近の作業内容だけでなく、過去の交換部品、調整履歴、清掃履歴、設定変更履歴まで確認できると、原因を絞り込みやすくなります。逆に、記録が部署ごとに分断されていると、保守担当者が複数の資料を探し回ることになり、対応時間が長くなります。


再発防止にも記録の活用が欠かせません。異常が解消されたとしても、同じ条件で再発する可能性があるなら、横展開が必要です。同型の設備、同じ時期に設置された設備、同じ部品を使う設備、似た環境条件の駅を抽出し、事前確認を行うことで、次のトラブルを未然に防げる場合があります。これは、単発の対応記録ではなく、構造化されたデータとして蓄積されているからこそ可能になります。


作業記録の品質を高めるには、入力画面や記録様式の設計も重要です。現場で長文を入力させるだけでは、忙しい時間帯に負担が大きくなります。よく発生する事象、確認項目、処置内容を選択式で用意し、必要に応じて補足を入れられる形にすると、記録のばらつきを抑えられます。写真、動画、音声メモなどを活用する場合も、対象設備と自動的にひも付く仕組みにしておくと、後から探しやすくなります。


一方で、記録を標準化しすぎると、例外的な事象を表現しにくくなることがあります。ホームドア周辺では、旅客行動、荷物、清掃、ホーム上の混雑、設備の個体差など、定型項目だけでは説明しきれない状況も起こります。そのため、選択式で基礎情報をそろえつつ、現場の気づきを自由記述で残せる余地を持たせることが重要です。DXの目的は記録をきれいに整えることではなく、次の判断に役立つ情報を失わないことです。


作業記録と原因分析がつながると、保守会議や改善活動の質も高まります。感覚的な議論ではなく、発生件数、再発傾向、対応時間、処置内容、部品交換後の効果などをもとに、優先順位を決められます。どの駅から重点対策を行うべきか、どの点検項目を見直すべきか、どの教育内容を追加すべきかが明確になります。ホームドア保守のDXでは、記録を現場の証跡として終わらせず、改善の材料として循環させることが重要です。


確認4 駅係員・保守担当・指令との連携を標準化する

4つ目の確認は、駅係員、保守担当、指令など関係者間の連携が標準化されているかどうかです。ホームドアの異常は、設備保守だけで完結する問題ではありません。旅客案内、安全確認、列車運行、ホーム上の誘導、応急処置、保守出動、復旧判断など、複数の役割が短時間で関わります。連携が属人的だと、情報の伝達漏れや判断の遅れが発生しやすくなります。


異常発生時に重要なのは、誰が、何を確認し、どの順番で共有するかを明確にしておくことです。駅係員は現場の状況を確認し、旅客の安全確保と案内を行います。保守担当は設備状態を確認し、応急対応や復旧判断に必要な情報を整理します。指令は運行への影響や関係箇所との調整を行います。この役割分担が曖昧だと、同じ情報を複数回確認したり、必要な情報が届かなかったりします。


鉄道DXを活用する場合、異常発生時の情報共有をデジタル上で一元化することが有効です。発生場所、発生時刻、事象の種類、現場写真、応急対応、復旧見込み、運行影響、旅客案内の状況などを、関係者が同じ情報として確認できるようにします。これにより、電話や口頭だけに頼る場合と比べて、認識違いを減らしやすくなります。ただし、緊急時には通話や無線など即時性の高い手段も必要なため、デジタル記録と現場連絡を補完的に設計することが大切です。


連携標準化で見落とされやすいのが、初動時の言葉のそろえ方です。たとえば、「開かない」「閉まらない」「反応しない」「警報が出た」「一時停止した」といった表現は、現場感覚では伝わっても、保守側から見ると原因が異なる場合があります。用語の定義をそろえ、事象分類を統一しておくと、記録の品質が高まり、後の分析にも使いやすくなります。駅係員が入力しやすい表現と、保守担当が分析しやすい分類を両立させることが重要です。


また、復旧判断のプロセスも標準化が必要です。現場で一時的に動作が戻ったとしても、安全確認が不十分なまま通常運用へ戻すことは避けなければなりません。どの確認が完了すれば復旧とみなすのか、応急対応後にどの範囲を監視するのか、再発した場合にどの段階で使用停止や追加対応を判断するのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。DXは判断を自動化するためだけでなく、判断に必要な情報を漏れなく提示するために活用できます。


関係者間の連携では、平常時の情報共有も重要です。定期点検の予定、部品交換の予定、重点監視中の設備、過去に異常が多い扉、駅係員に注意してほしい兆候などを共有しておくと、現場の気づきが早くなります。保守担当だけが情報を持っている状態では、駅側が異常の前兆に気づいても重要性を判断しにくくなります。逆に、駅係員の気づきが保守計画に反映されないと、現場からの申告意欲が下がります。


ホームドア保守では、委託先や協力会社が関わる場合もあります。この場合、情報共有の範囲、記録の形式、対応結果の報告方法、個人情報や業務情報の取り扱いを明確にする必要があります。DX導入時には、単にツールを共有するのではなく、業務ルール、閲覧権限、更新権限、承認手順を整理し、必要な人が必要な情報にアクセスできる状態を作ることが大切です。


連携の標準化が進むと、異常発生時の対応時間短縮だけでなく、業務の心理的負担も軽減されます。現場担当者は、何を報告すればよいか分かりやすくなり、保守担当者は原因調査に必要な情報を早く集められます。指令や管理部門は、運行影響や再発リスクを把握しやすくなります。ホームドア保守の効率化は、設備データだけでなく、人と組織の連携を見える化することでも実現します。


確認5 更新計画と教育にデータを活用する

5つ目の確認は、蓄積したデータを更新計画と教育に活用できているかどうかです。ホームドア保守のDXは、日々の点検や異常対応を効率化するだけでなく、中長期的な設備管理にも役立てる必要があります。どの設備を優先的に更新するか、どの部品の在庫を厚くするか、どの駅で追加教育が必要かを判断するには、現場から蓄積されたデータが重要な材料になります。


設備更新は、単に設置からの年数だけで判断するものではありません。利用環境、異常履歴、部品交換頻度、復旧時間、運行影響、保守作業のしやすさ、周辺設備との関係などを総合的に見る必要があります。同じ時期に設置された設備でも、負荷が高い駅では劣化傾向が早く現れることがあります。逆に、年数が経過していても安定している設備もあります。データを活用すれば、実態に応じた優先順位付けがしやすくなります。


部品管理にもデータは有効です。過去の交換履歴を分析すれば、どの部品がどの程度の頻度で交換されているか、どの駅で特定部品の消耗が多いか、交換後に再発していないかを確認できます。これにより、在庫の持ち方や保守計画を見直す材料になります。必要な部品が不足して復旧が遅れる事態を避けるためにも、故障履歴と部品管理を切り離さずに扱うことが大切です。


教育面でも、ホームドア保守のデータは大きな価値を持ちます。新人や経験の浅い担当者にとって、設備の構造や点検項目を学ぶだけでなく、実際にどのような異常が起こりやすいのか、どの確認を見落としやすいのか、どの対応が再発防止につながったのかを知ることは重要です。過去の事例、写真、作業記録、復旧までの流れを教材化すれば、現場経験を補う実践的な教育が可能になります。


駅係員向けの教育にも活用できます。ホームドアの専門保守を行うわけではなくても、日常的にホーム上で設備に接する駅係員は、異常の初期発見に重要な役割を持ちます。どのような音や動きに注意すべきか、どの状態をすぐ報告すべきか、旅客案内時にどの点に気をつけるべきかを、実例にもとづいて共有することで、現場の対応力が高まります。データを使った教育は、知識の標準化と技能継承の両方に役立ちます。


更新計画と教育にデータを活かすには、経営層や管理部門にも分かりやすい指標が必要です。現場では細かな異常内容が重要ですが、管理判断では、発生件数、再発率、対応時間、運行影響、重点対策後の改善状況など、全体を把握できる情報が求められます。現場データをそのまま大量に提示するのではなく、意思決定に使える指標へ整理することが必要です。


ただし、指標だけを追いすぎると、現場で本当に起きている問題が見えにくくなることがあります。たとえば、故障件数は少なくても、一度発生すると復旧に時間がかかる設備は重点管理が必要です。対応時間が短くても、同じ軽微異常が何度も発生している場合は、根本対策が必要かもしれません。指標は判断を助けるものであり、現場の声や実態と合わせて見ることが重要です。


ホームドア保守のDXを中長期的に成功させるには、日々の記録が更新判断や教育改善につながっていることを現場に示す必要があります。入力した記録がどのように活用され、どの改善につながったのかが分かれば、現場の協力を得やすくなります。逆に、記録しても何も変わらないと感じられると、データ品質は低下します。DXの定着には、入力、分析、改善、共有の循環を作ることが不可欠です。


鉄道DXを現場に定着させる運用設計

ホームドア保守で鉄道DXを進める際には、システム導入よりも運用設計が重要です。どれほど高度な仕組みを用意しても、現場で使われなければ効果は出ません。現場の作業動線、点検時間、通信環境、端末の使いやすさ、入力負担、緊急時の対応方法を具体的に想定し、無理なく使える形にする必要があります。


まず考えるべきは、入力負担の最小化です。保守担当者や駅係員は、点検や旅客対応、運行確認など多くの業務を抱えています。記録作業が増えすぎると、DXは効率化ではなく負担増として受け止められます。選択式入力、自動時刻記録、設備番号の読み取り、写真の自動ひも付け、過去記録の参照などを活用し、必要な情報を少ない操作で残せるようにすることが大切です。


次に、データの品質管理が必要です。入力項目が統一されていなかったり、自由記述の表現がばらばらだったりすると、後から分析しにくくなります。事象分類、処置分類、原因分類、点検結果の判定基準を整備し、定期的に見直すことが重要です。分類は最初から完璧である必要はありません。運用を始めてから、現場で使いにくい項目や不足している項目を改善していく考え方が現実的です。


運用設計では、情報の見せ方も重要です。現場担当者には、今日確認すべき設備、注意が必要な扉、過去の異常履歴、直近の作業内容がすぐ分かる表示が有効です。管理者には、駅別の傾向、再発状況、対応時間、未完了作業、重点対策の進捗が分かる表示が必要です。同じデータでも、立場によって必要な見え方は異なります。誰に何を見せるのかを整理することで、データ活用が進みます。


また、現場での例外対応もあらかじめ想定しておく必要があります。通信が不安定な場所、端末が使えない状況、緊急対応中で入力できない場面、複数の異常が同時に発生する場面など、理想どおりに運用できないケースは必ずあります。そのような場合に、後から記録を補完する方法、最低限残すべき項目、責任者による確認方法を決めておくと、運用が止まりにくくなります。


鉄道DXの定着には、小さく始めて改善する姿勢も有効です。いきなり全駅、全設備、全業務を対象にすると、要件が複雑になり、現場負担も大きくなります。まずは異常履歴の見える化、点検記録の標準化、写真記録のひも付け、再発設備の抽出など、効果が見えやすい範囲から始める方法があります。現場で効果を確認しながら対象を広げることで、無理なく定着させやすくなります。


さらに、DX導入後の評価方法を事前に決めておくことも重要です。導入しただけでは成果とはいえません。異常発生から共有までの時間が短縮されたか、再発の把握が早くなったか、点検記録の抜け漏れが減ったか、部品交換計画が立てやすくなったか、教育資料として活用されているかなど、実務に即した評価が必要です。評価指標を現場と共有すれば、何のために記録するのかが明確になります。


ホームドア保守のDXは、設備、データ、人、業務ルールをつなぐ取り組みです。システムだけを導入しても、現場の判断や関係者の連携が変わらなければ効果は限定的です。一方で、現場の声を反映しながらデータを整備し、点検、異常対応、原因分析、更新計画、教育へ循環させれば、保守業務の質を着実に高められます。


まとめ

鉄道DXでホームドア保守を効率化するには、設備状態をデータ化するだけでなく、現場で使える形に整理し、関係者の判断につなげることが重要です。まず、保守対象と点検項目を現場単位で整理し、駅、番線、扉、部品、点検結果を同じ識別情報で扱える状態を作る必要があります。次に、ログや点検記録、現場申告を活用し、故障後対応だけでなく異常兆候の早期把握を目指します。


さらに、作業記録を原因分析に使える形で残すことが大切です。発生事象、確認内容、処置、結果を分けて記録し、過去履歴や部品交換履歴と結び付けることで、再発防止や横展開につながります。駅係員、保守担当、指令の連携を標準化することも欠かせません。異常発生時に必要な情報を同じ認識で共有できれば、初動対応や復旧判断の精度が高まります。


蓄積したデータは、日々の保守だけでなく、設備更新、部品管理、教育にも活用できます。どの設備を優先的に見直すべきか、どの事例を教育に使うべきか、どの駅で重点確認が必要かを判断する材料になります。ホームドア保守のDXは、短期的な作業効率化と中長期的な安全品質向上をつなぐ取り組みです。


大切なのは、現場に負担をかけるデジタル化ではなく、現場の気づきや作業実績を次の改善に活かす仕組みにすることです。記録が共有され、分析され、改善策として戻ってくる循環ができれば、ホームドア保守はより計画的で、再発に強く、教育にも活かしやすい業務へ変わっていきます。鉄道DXを進める実務担当者は、設備データ、現場記録、関係者連携、更新計画を一体で見直し、自社の運用に合った段階的な導入を検討することが重要です。


ホームドア保守の見える化をさらに現場で進めるには、点検記録や位置情報、写真記録をすぐに確認できる仕組みが役立ちます。現場で得た情報をその場で残し、関係者が同じ状況を確認できる運用を整えることで、保守判断のスピードと精度を高めやすくなります。次のステップとして、現場記録と確認業務をより扱いやすくするスマートフォンやタブレット端末の活用も検討すると、鉄道DXを日常業務に落とし込みやすくなります。


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