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鉄道DXとドローン巡視で沿線確認を省力化する5手順

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

鉄道DXを現場に定着させるうえで、沿線確認の省力化は重要なテーマです。徒歩巡視や車上確認は、線路沿いの状況を丁寧に把握できる一方で、移動時間、立入調整、記録整理、報告書作成に多くの手間がかかります。そこで選択肢の一つとなるのが、ドローン巡視で取得した画像や位置情報をデジタル化し、点検記録、異常箇所、対応履歴を一体で管理する方法です。本記事では、鉄道DXの実務担当者に向けて、ドローン巡視を単なる撮影作業で終わらせず、沿線確認の業務改善につなげるための5手順を解説します。


目次

鉄道DXで沿線確認を見直す目的

手順1 現行巡視の対象と負担を整理する

手順2 ドローン巡視に向く確認範囲を切り分ける

手順3 撮影条件と安全管理を標準化する

手順4 取得データを台帳と結び付ける

手順5 判定と報告の流れをデジタル化する

ドローン巡視を定着させる運用設計の考え方

まとめ


鉄道DXで沿線確認を見直す目的

鉄道における沿線確認は、安全輸送を支える重要な業務です。線路脇の斜面、のり面、排水設備、架線柱周辺、橋りょう付近、踏切周辺、隣接地との境界、植生の繁茂状況など、確認すべき対象は広範囲にわたります。異常の兆候を早期に把握し、運行への影響を抑えるためには、現場を見て判断する力が欠かせません。一方で、確認範囲が長大であること、天候や列車運行に左右されること、作業者の移動負担が大きいことから、従来の方法だけで効率を高めるには限界があります。


鉄道DXの目的は、現場作業を単純にデジタルへ置き換えることではありません。必要な確認品質を維持しながら、人が現地で行うべき判断と、デジタル技術で補助できる作業を整理し、全体の業務量を最適化することにあります。ドローン巡視は、その入口となり得る方法です。人が近づきにくい場所や、広い範囲を俯瞰して確認したい場面で、画像や動画を取得し、事務所や拠点で確認できる状態にすれば、移動や立入の回数を減らしやすくなります。


ただし、ドローンを導入すれば直ちに巡視が省力化されるわけではありません。撮影した画像がどの設備を示しているのか分からない、過去画像と比較できない、異常判定の基準が担当者ごとに異なる、報告書作成が従来どおり手作業のまま残る、といった状態では、かえって業務が増えることもあります。鉄道DXとして成果を出すには、飛行計画、撮影、記録、判定、共有、是正対応までを一つの流れとして設計する必要があります。


沿線確認の省力化で特に重要なのは、現場確認の回数を減らすことだけを目的にしないことです。鉄道設備は、地形、構造物、周辺環境、季節変化の影響を受けます。画像だけで判断しにくい異常もあります。そのため、ドローン巡視は「人の目を不要にする仕組み」ではなく、「人が判断すべき箇所を早く見つける仕組み」として位置付けるのが現実的です。広範囲の一次確認をドローンで行い、変状が疑われる場所や重要度の高い箇所に人員を集中させることで、業務全体の密度を高めやすくなります。


また、ドローン巡視で得られる画像や位置情報は、単回の点検記録にとどまりません。同じ地点を近い条件で継続的に記録すれば、植生の伸び、斜面の表面変化、排水の詰まり、土砂堆積、部材周辺の変化などを時系列で確認しやすくなります。これは、経験豊富な担当者の記憶や紙の記録に依存しがちだった沿線管理を、組織で共有できる情報資産へ変える取り組みです。鉄道DXにおけるドローン巡視は、撮影機材の導入だけではなく、沿線状態を継続的に見える化する業務改革として考えることが大切です。


手順1 現行巡視の対象と負担を整理する

最初の手順は、現在の沿線確認業務を分解し、どこに負担が集中しているかを明らかにすることです。鉄道DXでは、デジタル化する対象を曖昧にしたまま始めると、現場にとって使いにくい仕組みになりがちです。まず、巡視の目的、対象設備、確認頻度、移動方法、必要人数、所要時間、記録様式、報告先、是正対応までの流れを整理します。特に、徒歩で長距離を移動している区間、立入調整に時間がかかる区間、斜面や高所など目視確認が難しい箇所、写真整理に時間がかかる業務を洗い出すことが重要です。


沿線確認には、定期的に行うものと、降雨、強風、地震、工事後、苦情や通報後など、特定の条件で実施するものがあります。定期巡視では、同じ範囲を繰り返し確認するため、ドローン巡視による標準化の効果を検証しやすくなります。一方、災害後や異常時の確認では、迅速な状況把握が重視されます。人が近づく前に上空から概況を把握できれば、安全確認や優先順位付けに役立つ場合があります。このように、巡視の種類ごとに目的が異なるため、同じドローン巡視でも求められる撮影内容や判断基準は変わります。


現行業務の整理では、単に「時間がかかっている作業」を探すだけでなく、「判断に必要な情報は何か」を確認することが大切です。たとえば、植生確認であれば、線路や設備への接近状況、視認性への影響、倒木リスク、作業車両の進入可否などが必要になります。のり面確認であれば、表面のはらみ、ひび割れ、湧水、土砂の流出、排水経路の状態などが論点になります。ドローン画像で確認できる情報と、現地で近接確認や計測をしなければ分からない情報を分けておくことで、ドローンに過剰な役割を持たせずに済みます。


また、記録作業の負担も重要な確認ポイントです。従来の沿線確認では、現場で写真を撮り、帰所後に写真を選別し、位置や設備名を記入し、報告書に貼り付けるという作業が発生しがちです。この作業は一つひとつは小さくても、件数が増えるほど大きな負担になります。ドローン巡視を導入する場合も、撮影データが大量になるため、記録整理の仕組みを設計しないと、確認作業よりもデータ整理に時間を取られるおそれがあります。撮影前から、ファイル名、撮影地点、対象設備、異常区分、確認日、担当者、対応状況をどのように管理するかを決めておく必要があります。


現場の負担を把握する際には、管理者側の視点だけでなく、実際に巡視を行う担当者の意見を反映することが欠かせません。図面上では簡単に見える区間でも、現地では移動経路が限られている場合があります。写真では分かりにくいが、現場では毎回注意している箇所もあります。逆に、長年の慣習で確認しているものの、記録としては十分に活用されていない項目もあります。こうした実態を整理することで、ドローン巡視に任せられる範囲と、人が引き続き確認すべき範囲を判断しやすくなります。


この段階で目指すべき成果は、導入機材を決めることではなく、沿線確認の業務地図を作ることです。どの区間で、どの対象を、どの頻度で、どの精度で確認し、どのように記録しているかが見えれば、次の手順でドローン巡視の適用範囲を具体化できます。鉄道DXは、現場の課題を正しく定義するほど効果を検証しやすくなります。


手順2 ドローン巡視に向く確認範囲を切り分ける

次の手順は、ドローン巡視に向く範囲と、従来の確認方法を残す範囲を切り分けることです。ドローンは広い範囲を短時間で俯瞰しやすい一方、線路近接作業、電気設備周辺、狭い構造物内、強風の影響を受けやすい場所、第三者への配慮が必要な場所では、慎重な運用が求められます。すべてを一度に置き換えるのではなく、効果が高く、リスク管理しやすい対象から始めることが実務上は現実的です。


ドローン巡視に向きやすいのは、徒歩での接近に時間がかかる場所、広い範囲を上から見たほうが状態を把握しやすい場所、定点的な変化確認が必要な場所です。たとえば、線路沿いの植生、のり面の表面状況、河川や水路周辺、橋りょう付近の周辺状況、線路外からの支障物接近、災害後の概況確認などが考えられます。上空からの画像により、地上からは見通しにくい範囲を一つの流れとして把握できるため、異常の候補を抽出しやすくなります。


一方で、ドローン画像だけで完結させにくい対象もあります。部材の細かな損傷、ボルトや締結部の状態、内部腐食が疑われる箇所、電気的な確認が必要な設備、触れて確認する必要がある変状などは、画像確認だけでは判断が不足する場合があります。このような対象は、ドローンで異常の有無を一次確認し、必要に応じて近接目視や計測につなげる運用が適しています。ドローン巡視の役割を「判定の最終手段」とするのではなく、「現地確認の優先順位を決めるための情報収集」とすることで、無理のない導入になります。


範囲の切り分けでは、運行安全、飛行安全、法令・社内ルールへの適合をあわせて確認する必要があります。鉄道沿線は、列車運行、架空線、信号設備、通信設備、保守作業、隣接道路、民地、河川、公共施設などが複雑に関係します。飛行ルートを設定する際は、設備との離隔、飛行高度、離着陸場所、緊急時の退避、第三者への影響、関係部署との連絡方法を確認します。航空法上の機体登録、飛行空域、飛行方法、許可・承認、飛行計画の通報が必要となるケースもあるため、実施前に最新の制度と関係先のルールを確認することが前提です。


通常時の計画だけでなく、風が強まった場合、通信が不安定になった場合、想定外の人や車両が接近した場合の中止基準も決めておくべきです。鉄道沿線では、ドローンの落下や接触が列車運行や設備に影響するおそれがあるため、飛行そのものが目的化しないように注意します。安全に実施できない条件であれば、従来巡視や地上撮影など別の方法を選ぶ判断も必要です。


また、ドローン巡視に向くかどうかは、撮影後の活用方法によっても変わります。単に動画を撮るだけでは、後から特定の地点を探すのに時間がかかります。対象設備ごとに撮影地点を決め、近い角度、近い高度、近い方向で記録できるようにすれば、前回画像との比較がしやすくなります。定期巡視であれば、撮影ルートを標準化する価値が高くなります。異常時巡視であれば、広域の概況を短時間で押さえ、危険箇所に近づかずに状況を共有できることが重要になります。


最初の導入範囲は、難易度が高すぎない区間を選ぶと定着しやすくなります。いきなり複雑な都市部や設備が密集した区間で始めると、調整事項が多く、効果検証が進みにくくなります。比較的飛行条件を管理しやすく、巡視負担が明確で、画像による変化確認の効果が見込みやすい区間を選ぶことで、運用手順を磨きながら横展開できます。鉄道DXの導入では、成功しやすい範囲で実績を作り、現場の納得感を高めることが重要です。


手順3 撮影条件と安全管理を標準化する

ドローン巡視を業務として使うには、撮影条件と安全管理を標準化する必要があります。担当者ごとに撮り方が異なると、画像の比較が難しくなり、判定のばらつきが生じます。また、撮影時の安全確認が個人の経験に依存すると、運用を継続したときにリスクが高まります。鉄道DXとしてドローン巡視を定着させるには、誰が実施しても一定の品質と安全性を確保しやすい手順にすることが欠かせません。


撮影条件では、対象、距離、高度、角度、解像度、撮影方向、撮影時間帯、天候条件を定めます。沿線確認では、同じ場所を継続的に比較することが多いため、毎回の撮影条件をできるだけそろえることが重要です。たとえば、のり面の確認では正面方向だけでなく、斜め方向から撮影したほうが起伏や水みちを把握しやすい場合があります。植生確認では、線路や設備との位置関係が分かるよう、広めの画角と近めの画角を組み合わせると、全体像と詳細の両方を確認しやすくなります。


動画と静止画の使い分けも整理しておくべきです。動画は連続した状況把握に向いていますが、後から特定箇所を探すのに時間がかかることがあります。静止画は報告書や台帳との紐付けに向いていますが、周辺の流れを把握しにくい場合があります。実務では、広域の概況を動画で確認し、異常候補や重要地点を静止画で記録するなど、目的に応じた組み合わせが有効です。撮影した時点で、どの画像がどの設備や区間を示すのか分かるよう、記録方法を統一しておくことが重要です。


安全管理では、飛行前、飛行中、飛行後の確認項目を明確にします。飛行前には、天候、風、見通し、周辺の人や車両、列車運行への影響、設備との離隔、離着陸場所、関係部署への連絡、機体や電源の状態を確認します。必要な許可・承認や飛行計画の手続きがある場合は、実施前に完了していることを確認します。飛行中には、操縦者と補助者の役割を分け、機体の位置、周囲の変化、緊急時の中止判断を共有します。飛行後には、取得データの保存、異常の有無、機体状態、ヒヤリとした事象の記録を行います。これらを毎回の習慣にすることで、ドローン巡視を特別な作業ではなく、管理された業務として扱えるようになります。


鉄道沿線では、電線、架線柱、信号設備、通信設備、樹木、建物、橋りょう、斜面など、飛行上の障害物が多く存在します。上空から見ると余裕があるように見えても、現地では風の巻き込みや死角が生じることがあります。そのため、事前に地図や過去画像でルートを確認し、現地で最終確認する流れが望まれます。特に、初めて飛行する区間では、いきなり本番撮影を行うのではなく、離着陸場所や安全な飛行範囲を確認する準備段階を設ける考え方が有効です。


また、撮影データには周辺環境や第三者の情報が写り込む可能性があります。沿線確認の目的に必要な範囲を超えて撮影しない、保存場所や閲覧権限を管理する、不要なデータを適切に扱うといった配慮も必要です。鉄道DXでは、現場情報を共有しやすくするほど、情報管理の重要性も高まります。安全管理と情報管理を一体で考えることで、組織として安心して活用できる仕組みになります。


標準化の成果物としては、飛行計画、撮影手順、確認項目、異常時の連絡方法、データ保存ルール、報告様式をまとめた運用手順書が必要です。ただし、最初から完璧な手順書を作ろうとすると導入が重くなります。まずは試行区間で手順を作り、実際の運用で出た課題を反映しながら改善する方法が現実的です。標準化は、現場を縛るためではなく、迷わず安全に実施するための土台です。


手順4 取得データを台帳と結び付ける

ドローン巡視で省力化の効果を出すには、取得した画像や動画を設備台帳、位置情報、点検履歴と結び付けることが重要です。撮影データが保存フォルダに並んでいるだけでは、後から必要な情報を探すのに時間がかかります。どの区間の、どの設備の、いつの状態なのかが分かるように整理されて初めて、デジタル情報として活用できます。鉄道DXの価値は、現場で得た情報を組織で使える形に変えるところにあります。


まず必要なのは、管理単位を決めることです。沿線を距離標、駅間、設備番号、構造物単位、管理区域などで区切り、撮影データを紐付けます。管理単位が曖昧なままだと、同じ場所を別の名称で記録したり、過去画像との比較ができなかったりします。既存の設備台帳や巡視記録で使われている単位を尊重しながら、ドローン巡視の画像管理に適した粒度を設定することが大切です。現場で使われている呼称と、管理システム上の名称がずれている場合は、対応表を整備しておくと混乱を防げます。


次に、撮影データに必要な属性を付けます。確認日、撮影者、区間、対象設備、撮影方向、異常の有無、異常区分、対応優先度、確認結果、再確認予定などを記録できるようにします。これらの属性があることで、後から「前回と比べて変化した箇所」「未対応の異常」「再確認が必要な箇所」「特定の区間で多い異常」などを抽出できます。単なる画像保管から、点検管理へ進化させるには、この属性管理が欠かせません。


位置情報との紐付けも重要です。沿線確認では、異常箇所を現地で再確認する必要があるため、画像だけでなく位置を正確に伝える必要があります。地図上で撮影地点や異常箇所を確認できれば、関係者間の認識違いを減らせます。特に、斜面や河川周辺、線路外からの支障物などは、言葉だけで場所を説明しにくい場合があります。画像、位置、区間情報を一体で共有できると、現地対応の段取りがしやすくなります。


過去データとの比較も、ドローン巡視の大きな利点です。初回撮影は現状把握としての意味が強いですが、二回目以降は変化の確認ができるようになります。植生がどの程度伸びているか、排水溝周辺に土砂が増えていないか、のり面の表面に新たな変化がないか、周辺工事や土地利用の変化が設備に影響していないかを確認しやすくなります。過去画像をすぐに呼び出せる状態にしておけば、担当者の記憶に頼らず、比較しやすくなります。


ここで注意したいのは、すべてのデータを無制限に保存すればよいわけではないということです。ドローン巡視では大量の画像や動画が発生します。保存容量だけでなく、検索性、閲覧性、管理責任も考える必要があります。重要な記録として残すデータ、一定期間保存する確認用データ、不要になったデータを分類し、保存ルールを決めることが大切です。特に動画は容量が大きくなりやすいため、必要な場面を静止画として切り出す、異常箇所に印を付けた確認用画像を作るなど、実務で使いやすい形に整える工夫が必要です。


台帳との結び付けは、将来的な分析にもつながります。どの区間で植生対応が多いのか、どの季節に確認件数が増えるのか、どの構造物周辺で排水不良が起きやすいのか、といった傾向を把握できれば、巡視頻度や保守計画の見直しに活用できます。鉄道DXでは、現場で集めたデータを蓄積し、次の判断に使う循環を作ることが重要です。ドローン巡視の画像を台帳に結び付けることは、その循環を始めるための中核になります。


手順5 判定と報告の流れをデジタル化する

最後の手順は、判定と報告の流れをデジタル化することです。ドローンで効率よく撮影できても、確認結果の判定や報告書作成が従来どおり手作業のままでは、省力化の効果は限定的です。鉄道DXとして業務全体を改善するには、画像確認、異常登録、優先度判断、関係者共有、対応履歴管理までを一連の流れとして整える必要があります。


判定のデジタル化で重要なのは、異常の区分と判断基準をそろえることです。たとえば、植生であれば、設備や線路への接近度、視認性への影響、倒木のおそれ、作業の緊急度などを段階的に記録できるようにします。のり面であれば、変状の有無、範囲、進行性が疑われるか、排水との関係、過去との変化を確認します。明確な基準がないまま画像を見ても、担当者によって「要対応」と「経過観察」の判断が分かれます。基準をそろえることで、報告の質が安定し、引き継ぎもしやすくなります。


報告の流れでは、画像を貼り付けるだけの作業から、記録された情報を整理して確認できる形へ近づけることが大切です。確認日、区間、対象設備、異常区分、優先度、対応方針、添付画像が一体で管理されていれば、報告書作成の負担を減らせます。また、管理者は一覧で異常箇所を確認し、対応が必要なものから順に指示を出せます。現場担当者も、過去の対応履歴や前回画像を確認しながら再巡視できるため、情報の抜け漏れを防ぎやすくなります。


関係部署との共有も、デジタル化の効果が大きい領域です。沿線確認の結果は、保線、電気、土木、建築、用地、運輸、安全管理など、複数の部署に関係することがあります。従来は、写真付きの報告書を個別に共有し、必要に応じて問い合わせる流れになりがちでした。デジタル上で異常箇所、画像、位置、対応状況を共有できれば、関係者が同じ情報を見ながら判断できます。特に、線路外からの支障物や隣接地に関わる事象では、場所と状況を正確に共有できることが重要です。


また、是正対応後の記録も忘れてはいけません。異常を見つけるだけでなく、対応が完了したか、再発のおそれがあるか、次回確認で重点的に見るべきかを記録することで、巡視が継続的な管理につながります。対応前と対応後の画像を同じ台帳で確認できれば、作業効果の確認や説明資料としても活用できます。鉄道DXでは、点検、判定、対応、再確認を分断せず、一つの履歴として残すことが重要です。


判定や報告をデジタル化する際には、現場で入力する項目を増やしすぎないことも大切です。便利な項目をすべて追加すると、入力負担が増え、結局使われなくなるおそれがあります。最初は、業務判断に必要な最小限の項目から始め、運用しながら追加するほうが定着しやすくなります。現場では選択式で記録できる項目を増やし、自由記述は必要な場合に限定すると、入力のばらつきを抑えられます。


デジタル化の目的は、報告書をきれいに作ることではなく、必要な判断を早く正確に行うことです。ドローン巡視で取得した画像が、どの異常に関係し、誰が確認し、どのように対応し、今どういう状態なのかをすぐに把握できるようになれば、沿線確認の業務は改善しやすくなります。撮影の効率化だけでなく、判定と報告の流れまで見直すことで、鉄道DXとしての効果が明確になります。


ドローン巡視を定着させる運用設計の考え方

ドローン巡視を一時的な試行で終わらせず、日常業務として定着させるには、運用設計が欠かせません。導入直後は、撮影できること自体に注目が集まりやすいですが、継続運用では、誰が計画し、誰が飛行し、誰が画像を確認し、誰が対応判断を行い、どこに記録を残すのかが重要になります。役割分担が曖昧なままだと、撮影データが蓄積されても活用されず、担当者の負担だけが増える可能性があります。


まず、年間の巡視計画にドローン巡視を組み込むことが必要です。定期的に確認する区間、季節前に重点確認する区間、降雨後や強風後に確認する区間、過去に異常があった区間を整理し、飛行計画と人員計画に反映します。ドローン巡視は天候の影響を受けるため、実施日を固定しすぎると運用しにくくなります。複数の候補日を持たせる、優先度の高い区間から実施する、従来巡視と組み合わせるなど、現実的な計画にすることが大切です。


教育と訓練も定着の鍵です。ドローンの操縦技能だけでなく、鉄道沿線での安全確認、撮影対象の理解、画像判定、データ登録、異常時の連絡までを含めて教育する必要があります。操縦できる人だけが分かる仕組みでは、組織的な運用になりません。現場担当者、管理者、データ確認者が共通のルールを理解し、同じ基準で情報を扱えるようにすることが重要です。特に、初期段階では経験者と未経験者が一緒に確認し、判断の目線を合わせる機会を設けると定着しやすくなります。


効果測定の方法もあらかじめ決めておくべきです。ドローン巡視によって、移動時間が減ったのか、立入回数が減ったのか、報告書作成時間が短くなったのか、異常発見から共有までの時間が短縮されたのか、過去比較がしやすくなったのかを確認します。効果を数値と事例の両方で整理すれば、関係者に説明しやすくなります。省力化は単に人員を減らすことではなく、限られた人員を重要な判断や対応に集中させることです。その考え方を共有することで、現場の納得感が高まります。


小さく始めて改善する姿勢も重要です。最初から全線展開を目指すと、ルール作り、教育、データ管理、関係部署調整が重くなります。まずは限定した区間で、現行巡視との比較、撮影手順の検証、データ整理の手間、判定基準の使いやすさを確認します。その結果をもとに、対象区間や確認項目を広げていくほうが、無理なく定着します。鉄道DXでは、完璧な仕組みを一度で作るよりも、現場で使いながら改善できる仕組みを作ることが大切です。


さらに、ドローン巡視のデータを他の業務にも活用する視点を持つと、投資効果を高めやすくなります。沿線確認で撮影した画像は、災害時の事前比較、工事計画の現況確認、用地境界付近の状況把握、植生管理計画、教育資料、関係者説明などにも活用できる場合があります。ただし、目的外利用を広げる際には、情報管理や閲覧権限を整理する必要があります。安全に共有できる範囲を定め、必要な人が必要な情報を見られるようにすることが、組織的なDXにつながります。


ドローン巡視を定着させるうえで忘れてはならないのは、現場の信頼を得ることです。新しい仕組みが現場にとって負担増に見えると、活用は進みません。撮影によってどの作業が楽になるのか、記録がどのように簡単になるのか、異常時の説明がどのようにしやすくなるのかを、具体的に示す必要があります。現場の困りごとに合わせて運用を調整し、効果が見えた部分から広げることで、ドローン巡視は単なる新技術ではなく、日常業務を支える手段になります。


まとめ

鉄道DXとドローン巡視を組み合わせることで、沿線確認は省力化に寄与する可能性があります。ただし、その効果はドローンを飛ばすことだけで生まれるものではありません。現行巡視の負担を整理し、ドローンに向く確認範囲を切り分け、撮影条件と安全管理を標準化し、取得データを台帳と結び付け、判定と報告の流れまでデジタル化することで、業務全体の改善につながります。


沿線確認は、広範囲で多様な対象を扱う業務です。すべてをデジタルで置き換えるのではなく、人が現地で判断すべき作業と、ドローンやデータ管理で効率化できる作業を分けることが大切です。ドローン巡視は、危険箇所に近づく前の概況把握、徒歩移動が大きい区間の一次確認、過去画像との比較、関係者への状況共有に強みがあります。その強みを活かすには、法令や社内ルールに沿った安全な運用を前提に、撮影データを使いやすい形で残し、次回の巡視や対応判断に活かす仕組みが必要です。


実務で成果を出すには、最初から大規模な展開を目指すよりも、効果が見えやすい区間から始めることが有効です。試行区間で手順を整え、判定基準をそろえ、報告様式を改善し、現場の意見を反映しながら広げていけば、無理なく定着させることができます。省力化とは、確認を減らすことではなく、必要な確認に人の力を集中できる状態を作ることです。


今後の鉄道DXでは、ドローン巡視で取得した画像や位置情報を、点検台帳、現地メモ、対応履歴、三次元的な現況把握と結び付ける重要性が高まります。沿線の状態を継続的に記録し、変化を早く見つけ、関係者が同じ情報を見ながら判断できる体制を整えることが、安全管理と省力化の両立につながります。現場で扱いやすいデジタル記録を整備し、巡視結果を次の保守判断へつなげることが、鉄道DXにおけるドローン巡視活用の基本になります。


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