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鉄道DXで駅設備メンテを見える化する6つの要点

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

駅設備のメンテナンスは、利用者の安全性、運行の安定性、駅係員や保守担当者の負担軽減に直結する重要な業務です。一方で、駅には改札、案内表示、昇降設備、照明、空調、通信設備、防災設備、旅客案内設備など多くの設備があり、点検履歴や故障状況が紙、表計算、口頭連絡、担当者の経験に分散しやすい課題があります。鉄道DXを進めるうえでは、単に点検記録を電子化するだけでなく、駅設備の状態、作業の進捗、リスクの優先順位、現場対応の判断材料を見える化することが欠かせません。本記事では、鉄道DXで駅設備メンテを見える化するための6つの要点を、実務担当者が導入前に確認しやすい形で解説します。


目次

駅設備メンテの見える化が鉄道DXで重要になる理由

要点1として設備台帳と現場情報を一元化する

要点2として点検記録をリアルタイムに近づける

要点3として故障予兆と劣化傾向を把握する

要点4として作業進捗と対応責任を明確にする

要点5として駅利用者への影響度で優先順位を決める

要点6として現場定着を前提に運用を設計する

駅設備メンテの見える化で注意すべき落とし穴

鉄道DXを次の改善につなげる考え方


駅設備メンテの見える化が鉄道DXで重要になる理由

鉄道DXという言葉は、単に紙の帳票を電子化することや、システムを導入することだけを意味するものではありません。鉄道事業の現場では、安全、定時性、快適性、効率性を同時に求められます。その中で駅設備メンテナンスは、利用者が日々接する設備を安定して使える状態に保つ業務であり、運行部門、駅務部門、保守部門、協力会社、管理部門が関係する複合的な業務です。


駅設備の不具合は、ひとつひとつを見ると小さな事象に見えることがあります。たとえば案内表示の一部不調、照明のちらつき、設備扉のがたつき、昇降設備の一時停止、通信機器の断続的な不安定化などです。しかし、これらが放置されると利用者の移動に支障が出たり、駅係員の問い合わせ対応が増えたり、保守作業が突発対応中心になったりします。特に混雑駅や乗換駅では、設備の停止が旅客流動に影響し、現場負荷が急激に高まる場合があります。


従来のメンテナンスでは、点検結果が紙で保管され、故障連絡が電話や口頭で共有され、対応状況が担当者ごとに管理されることもあります。この状態では、どの駅のどの設備に不具合が集中しているのか、同じ故障が繰り返されていないか、対応が遅れている作業はどれか、次に重点点検すべき設備は何かを把握しにくくなります。結果として、経験のある担当者の判断に依存しやすくなり、担当変更や人員不足が起きたときに業務品質が揺らぎやすくなります。


鉄道DXで駅設備メンテを見える化する目的は、現場の状態を早く、正確に、関係者が同じ認識で把握できるようにすることです。設備台帳、点検記録、故障履歴、修繕履歴、部品交換履歴、写真、位置情報、対応期限、作業者、確認者などをつなげることで、単なる記録が判断材料に変わります。これは保守担当者だけでなく、駅係員、管理者、企画部門にとっても重要です。現場で何が起きているかを見える化できれば、設備投資、更新計画、人員配置、委託範囲、教育内容も具体的に検討しやすくなります。


また、駅設備メンテの見える化は、事故やトラブルを減らすための予防的な取り組みにもつながります。故障してから修理するだけでなく、異常の兆候を早めに把握し、影響が大きくなる前に対処する考え方です。鉄道の現場では安全側に判断することが基本ですが、その判断を支える情報が分散していると、確認に時間がかかります。必要な情報をすぐに参照できる環境を整えることが、現場判断の質を高めます。


要点1として設備台帳と現場情報を一元化する

駅設備メンテを見える化する最初の要点は、設備台帳と現場情報を一元化することです。設備台帳は、駅設備の管理における基礎情報です。設備名称、設置場所、管理番号、設置年月、点検周期、保守区分、機器種別、関連図面、更新予定、過去の修繕履歴などが整理されていなければ、点検や修繕の記録を後から活用することが難しくなります。


しかし、現場では設備台帳と実際の設備状態が一致していないことがあります。改修工事で設備配置が変わった、仮設対応が長期化している、設備名の呼び方が部署ごとに違う、同じ場所に似た設備が複数ある、古い図面と現地が合わないといったケースです。この状態でDXを進めると、データ化したにもかかわらず検索できない、記録先を間違える、現場写真と台帳が紐づかないといった問題が起きます。


設備台帳の一元化では、まず駅ごと、階層ごと、エリアごとに設備を整理し、現場で使われる呼称と管理上の正式名称を対応させることが重要です。利用者エリア、駅係員エリア、機械室、ホーム、通路、出入口、改札周辺、待合空間など、実際の作業導線に沿って設備を分類すると、現場担当者が記録しやすくなります。台帳が管理部門だけの資料になってしまうと、現場では活用されません。現場で見つけた不具合を、その場で正しい設備に紐づけられる設計が必要です。


また、設備台帳には写真や位置情報を組み合わせると効果的です。駅設備は同じような外観のものが多く、名称だけでは判別しにくい場合があります。現場写真、設置位置、周辺目印、階層情報を登録しておけば、初めて担当する作業者でも対象設備を特定しやすくなります。さらに、過去の不具合写真と現在の状態を比較できれば、劣化の進み方や再発傾向も把握しやすくなります。


一元化で注意したいのは、最初から完璧な台帳を作ろうとしすぎないことです。駅設備は数が多く、古い設備や改修履歴が複雑な設備もあります。全設備を一度に精密化しようとすると、調査だけで時間がかかり、現場改善が進まないことがあります。まずは利用者影響が大きい設備、故障頻度が高い設備、安全確認が必要な設備、点検負荷が高い設備から優先して整備するのが現実的です。


設備台帳と現場情報がつながると、点検結果や故障履歴が単発の記録ではなく、設備単位の履歴として蓄積されます。これにより、同じ駅で同じ種類の不具合が繰り返されているか、特定の設置環境で劣化が早いか、更新計画を前倒しすべき設備があるかを検討できます。鉄道DXの入口は、派手な仕組みよりも、現場の事実を同じ単位で記録できる土台づくりにあります。


要点2として点検記録をリアルタイムに近づける

駅設備メンテの見える化で次に重要なのは、点検記録をできるだけリアルタイムに近づけることです。紙の点検票を現場で記入し、事務所に戻ってから入力する運用では、記録が反映されるまで時間差が生じます。その間に別の担当者が同じ設備を確認したり、管理者が最新状況を把握できなかったり、緊急度の高い不具合が埋もれたりする可能性があります。


点検記録を現場で直接入力できるようにすると、設備状態の共有が早くなります。たとえば、点検結果、異常の有無、写真、作業メモ、一次対応内容、再点検の必要性、使用停止の有無などを現場から登録できれば、関係者が同じ情報をもとに判断できます。駅設備は利用者の目に触れるものが多いため、異常の発見から共有までの時間を短くすることは、利用者対応の面でも効果があります。


リアルタイム化といっても、すべてを常時監視する必要があるわけではありません。重要なのは、現場で発生した事実が遅れずに記録され、必要な相手に届くことです。通常点検、臨時点検、故障受付、修繕完了報告、確認結果など、業務の節目ごとに記録タイミングを定めることで、情報の抜け漏れを減らせます。特に、異常ありの記録だけは速やかに通知する、利用者影響がある設備は優先度を上げる、作業完了時には写真で確認するなど、ルールを明確にしておくと実務に乗せやすくなります。


点検記録の電子化では、入力項目を増やしすぎないことも大切です。現場担当者が毎回長文を入力しなければならない仕組みでは、運用が定着しません。選択式の項目、定型コメント、写真添付、音声入力、設備台帳からの自動呼び出しなどを組み合わせ、必要な情報を少ない手間で残せる形にする必要があります。DXの目的は現場の負担を増やすことではなく、記録の質を保ちながら確認や共有の手間を減らすことです。


また、点検記録をリアルタイムに近づけることで、管理者の見え方も変わります。これまでは月次報告や定例会でまとめて確認していた情報を、日次や随時で把握できるようになります。未対応件数、異常件数、再発件数、対応期限超過、駅別の傾向、設備種別ごとの傾向などを一覧できれば、現場支援の優先順位を決めやすくなります。現場から上がってきた情報を責めるためではなく、早く支援し、早く手を打つために活用する姿勢が重要です。


点検記録のリアルタイム化は、駅係員と保守担当者の連携にも効果があります。駅係員が利用者から受けた問い合わせや現場で気づいた異常を登録し、保守担当者が確認結果や対応予定を返す流れができれば、電話確認や個別連絡の回数を減らせます。誰が、いつ、何を確認し、次に何をするのかが見えるため、同じ問い合わせへの対応品質も安定します。


要点3として故障予兆と劣化傾向を把握する

駅設備メンテを見える化する目的は、現在の不具合を把握するだけではありません。蓄積したデータから故障予兆や劣化傾向を把握し、予防保全につなげることが大切です。鉄道DXでは、設備が止まってから対応する事後保全だけでなく、故障の兆候を見つけて先回りする考え方が重視されます。


駅設備の劣化は、急に発生するものばかりではありません。動作音が大きくなる、振動が増える、反応が遅くなる、表示が不安定になる、温度上昇が目立つ、部品交換の間隔が短くなる、同じ箇所で軽微な不具合が続くといった兆候が現れることがあります。これらは一回の点検だけでは判断しにくい場合がありますが、時系列で記録すると変化が見えます。


故障予兆を把握するためには、異常発生時の記録だけでなく、正常時の状態も残しておくことが重要です。正常な動作音、通常時の表示状態、標準的な点検値、清掃や調整の実施日、部品交換後の状態などが記録されていれば、異常との差分を確認できます。正常時の基準がないまま異常だけを記録しても、劣化の進み方を判断しにくくなります。


劣化傾向を見る際には、設備単位、駅単位、エリア単位、設備種別単位で情報を切り替えられると便利です。ある設備だけが繰り返し故障しているのか、同じ駅の環境条件によって複数設備に影響が出ているのか、同じ時期に導入した設備群で不具合が増えているのかによって、取るべき対策は変わります。単体修繕で済む場合もあれば、設置環境の改善、点検周期の見直し、部品在庫の見直し、更新計画の変更が必要になる場合もあります。


故障予兆の見える化では、データの粒度にも注意が必要です。あまりに粗い分類では傾向が見えませんが、細かすぎる分類では入力負担が増え、データがばらつきます。たとえば、故障内容を自由記述だけにすると、同じ事象でも担当者によって表現が変わります。選択式の分類と自由記述を組み合わせることで、集計しやすさと現場の説明力を両立できます。


さらに、写真や簡易な状態メモを継続的に残すことも劣化把握に役立ちます。駅設備は設置環境の影響を受けやすく、湿気、粉じん、温度変化、利用者接触、清掃頻度、屋外環境などによって劣化の仕方が変わります。数値データだけでなく、現場写真や作業コメントを紐づけることで、後から原因を考える材料が増えます。


ただし、故障予兆の把握を過度に自動化しようとすると、導入が複雑になりすぎることがあります。最初から高度な分析を目指すよりも、まずは故障履歴の蓄積、再発の見える化、対応期間の把握、設備別の傾向確認から始めるのが実務的です。蓄積データの品質が高まってから、しきい値管理や傾向分析を広げていくほうが、現場に定着しやすくなります。


要点4として作業進捗と対応責任を明確にする

駅設備メンテでは、不具合を発見することと同じくらい、対応がどこまで進んでいるかを見える化することが重要です。現場では、受付済み、確認中、一次対応済み、部品待ち、協力会社手配中、作業日調整中、復旧済み、確認完了など、複数の状態が存在します。この状態が共有されていないと、問い合わせが増えたり、二重対応が発生したり、対応漏れにつながったりします。


作業進捗を見える化するには、ステータス管理を明確にする必要があります。単に未対応と対応済みだけでは、実際の業務を表しきれません。現場確認が必要なのか、部品調達が必要なのか、利用者導線への影響があるため作業時間帯を調整する必要があるのか、設備停止を伴うのかによって、次の行動は変わります。各ステータスに意味を持たせ、誰が見ても現在の状態が分かるようにすることが大切です。


対応責任の明確化も欠かせません。駅設備メンテは、駅係員、設備保守担当、専門保守担当、協力会社、管理部門など複数の関係者が関わります。そのため、不具合の受付者、現地確認者、修繕担当者、完了確認者、承認者を分けて管理できると、作業の流れが整理されます。誰が責任者か分からない状態では、緊急度の低い案件ほど放置されやすくなります。


また、対応期限の設定も重要です。すべての不具合を同じ期限で処理しようとすると、現場は優先順位を付けにくくなります。安全に関わるもの、利用者移動に影響するもの、案内品質に影響するもの、駅係員の業務負荷に影響するもの、設備寿命に関わるものなど、影響度に応じて対応期限を変えることが実務的です。期限が見える化されると、管理者は遅延案件を早めに把握し、支援や調整を行いやすくなります。


作業進捗の見える化では、完了の定義を明確にしておく必要があります。修理作業を終えた時点で完了なのか、動作確認まで終えた時点で完了なのか、駅係員が利用者対応上問題ないと確認した時点で完了なのかを決めておかなければ、認識のずれが起きます。特に利用者が直接使う設備では、技術的に復旧していても、案内表示や周辺安全確認が不十分だと現場対応が残ることがあります。


作業写真の活用も有効です。修繕前、作業中、修繕後の写真を残すことで、遠隔地の管理者でも状態を確認しやすくなります。駅設備は夜間作業や短時間作業が発生することもあるため、後から確認できる証跡を残しておくことは、品質管理や再発防止にも役立ちます。ただし、写真を残す際には、利用者の写り込みや個人情報に注意し、撮影範囲や保管方法を運用ルールとして定める必要があります。


作業進捗と対応責任が明確になると、現場の心理的負担も軽くなります。担当者が抱え込むのではなく、チームとして現在地を共有できるため、応援要請や判断相談もしやすくなります。鉄道DXは監視を強めるためのものではなく、現場の状況を見える化し、関係者が早く連携できる状態をつくるためのものです。


要点5として駅利用者への影響度で優先順位を決める

駅設備メンテの見える化では、単に故障件数や未対応件数を並べるだけでは不十分です。実務では、どの不具合から対応すべきかを判断する必要があります。その判断軸として重要なのが、駅利用者への影響度です。鉄道DXでは、設備の状態だけでなく、利用者動線、混雑時間帯、案内の重要度、バリアフリー対応、代替手段の有無などを含めて優先順位を見える化することが求められます。


同じ設備不具合でも、駅や時間帯によって影響は大きく変わります。利用者が少ない場所の一部設備不具合と、主要動線上の設備不具合では、対応の緊急度が異なります。乗換動線、ホーム上、改札付近、出入口付近、昇降設備周辺、案内表示が集中する場所などは、利用者の流れに直結しやすいため、優先度を高く設定する必要があります。


また、高齢者、障がいのある利用者、ベビーカー利用者、大きな荷物を持つ利用者などに影響する設備は、単純な利用人数だけでは評価できません。昇降設備や誘導案内に関わる設備の不具合は、代替経路があるか、案内が十分か、駅係員の支援が必要かを含めて判断する必要があります。見える化の仕組みに利用者影響の分類を持たせることで、現場判断が属人的になりにくくなります。


優先順位を決める際には、安全、運行、旅客案内、快適性、業務負荷の観点を組み合わせると整理しやすくなります。安全に直結するものは最優先であり、運行や旅客流動に影響するものも早期対応が必要です。一方で、快適性に関わる設備でも、長期間放置されれば利用者満足度や駅の印象に影響します。小さな不具合を軽視せず、影響度と対応期限を結びつけて管理することが大切です。


さらに、駅ごとの特性を反映することも必要です。ターミナル駅、地域拠点駅、観光地に近い駅、学校や病院の最寄り駅、イベント時に混雑する駅などでは、同じ設備でも重要度が変わります。全駅一律の優先順位では、現場に合わない運用になることがあります。駅特性を設備台帳やメンテナンス計画に反映し、重要設備をあらかじめ設定しておくと、緊急時にも判断しやすくなります。


利用者影響の見える化は、説明責任にもつながります。なぜこの設備を先に直すのか、なぜこの作業を夜間に行うのか、なぜ更新計画を前倒しするのかを、データに基づいて説明できます。現場の感覚は非常に重要ですが、それを記録や指標で補強することで、部門間の合意形成が進みやすくなります。


ただし、優先順位の指標を複雑にしすぎると、現場で使われなくなります。最初は、利用者安全に関わるもの、移動経路に影響するもの、案内に影響するもの、駅係員の対応負荷が増えるもの、再発しているものなど、分かりやすい分類から始めるのがよいです。運用しながら分類を見直し、実態に合う優先度設計へ育てていくことが、鉄道DXを継続させるポイントです。


要点6として現場定着を前提に運用を設計する

駅設備メンテの見える化は、仕組みを導入しただけでは成果につながりません。実際に使う現場担当者が、日々の業務の中で無理なく使えることが必要です。鉄道DXが失敗しやすい理由のひとつは、管理側が見たい情報を重視しすぎて、現場の入力負担や作業導線を十分に考慮しないことです。


現場定着を考えるうえで重要なのは、入力することで現場にもメリットが返る設計にすることです。記録を入力しても管理者に送られるだけで、現場の確認や調整が楽にならない仕組みでは、定着しにくくなります。過去の対応履歴をすぐに見られる、同じ故障の対処方法を確認できる、写真付きで申し送りできる、対応予定が分かる、問い合わせに答えやすくなるといった実感が必要です。


また、現場で使う端末や入力方法も重要です。駅設備の点検は、移動しながら行うことが多く、狭い場所や暗い場所、通信環境が不安定な場所で作業することもあります。手袋をしている場合や、両手がふさがる場合もあります。そのため、入力画面は分かりやすく、少ない操作で記録できる必要があります。現場写真を撮って設備に紐づける、選択項目で状態を登録する、後から補足できるようにするなど、作業実態に合わせた設計が求められます。


教育とルール整備も欠かせません。どの不具合を登録するのか、どのレベルなら即時連絡するのか、写真はどの角度で撮るのか、完了報告には何を残すのか、誤登録した場合はどう修正するのかを明確にしておく必要があります。ルールが曖昧だと、担当者によって記録の質がばらつき、後から分析できないデータになります。


現場定着には、段階導入が効果的です。いきなり全駅、全設備、全業務を対象にすると、調整範囲が広がりすぎます。まずは特定の駅、特定の設備群、特定の点検業務から始め、使い勝手や入力項目を改善しながら広げるほうが成功しやすくなります。小さく始めて、現場の声を反映し、成果を確認しながら横展開することが重要です。


さらに、見える化の画面や帳票は、利用者ごとに必要な情報を分けることが大切です。現場担当者は今日の作業、対象設備、注意点、過去履歴を見たいはずです。管理者は未対応件数、期限超過、駅別傾向、設備別傾向を確認したいはずです。企画部門は更新計画や投資判断に関わる集計情報を必要とします。全員に同じ画面を見せるのではなく、役割ごとに情報の見せ方を変えることで、使いやすさが高まります。


現場定着を阻むもうひとつの要因は、既存業務との二重管理です。紙の点検票を残したまま電子入力も求めると、現場負担は増えます。移行期にはやむを得ない場合もありますが、いつまでに何を電子化し、どの紙帳票を廃止または簡素化するのかを決めておく必要があります。DXの効果を出すには、システム導入と同時に業務そのものを見直す視点が欠かせません。


駅設備メンテの見える化で注意すべき落とし穴

鉄道DXで駅設備メンテを見える化する際には、いくつかの落とし穴があります。まず注意したいのは、データを集めること自体が目的化することです。点検項目を増やし、写真を大量に保存し、細かな分類を作っても、それが判断や改善に使われなければ意味がありません。何のために記録するのか、誰がどの判断に使うのかを明確にしておく必要があります。


次に、現場の表現を無理に統一しすぎることにも注意が必要です。分析のためには分類が必要ですが、現場の気づきや違和感は自由記述でしか残せない場合があります。すべてを選択項目だけにすると、細かな異常の兆候が抜け落ちることがあります。反対に、自由記述だけでは集計が難しくなります。選択式で最低限の分類を行い、必要に応じて写真やコメントで補足する形が実務的です。


また、見える化によって件数が増えたように見えることがあります。これは必ずしも設備状態が悪化したという意味ではありません。これまで見えていなかった軽微な不具合や未記録の作業が記録されるようになった結果、件数が増える場合があります。導入初期の数値を評価する際には、記録率の向上と実際の不具合増加を分けて考える必要があります。


データ品質の維持も重要です。設備名の選択ミス、写真の添付漏れ、完了ステータスの更新漏れ、同じ不具合の重複登録などが増えると、見える化の信頼性が下がります。定期的にデータを確認し、入力ルールを見直し、現場へフィードバックする仕組みが必要です。データ品質は一度整えれば終わりではなく、運用しながら保つものです。


さらに、部門間の連携不足にも注意が必要です。駅設備メンテは、駅務、保守、工務、電気、通信、建築、清掃、警備など複数の領域にまたがる場合があります。設備ごとに管理部門が分かれていると、利用者から見ればひとつの不具合でも、内部では複数部署の調整が必要になることがあります。見える化の仕組みでは、担当部署の切り分けだけでなく、連携が必要な案件を把握できるようにすることが重要です。


セキュリティや情報管理も軽視できません。駅設備の配置、設備写真、作業予定、障害情報などは、取り扱いに注意が必要な情報を含む場合があります。誰がどの情報を閲覧できるのか、外部関係者にどこまで共有するのか、端末紛失時にどう対応するのか、写真データをどのように管理するのかを定める必要があります。利便性と安全性のバランスを取りながら、現場で守れるルールにすることが重要です。


最後に、導入効果を短期的な作業時間削減だけで判断しないことも大切です。駅設備メンテの見える化は、記録時間の削減だけでなく、対応漏れの防止、再発防止、利用者影響の低減、引き継ぎ品質の向上、更新計画の精度向上といった複数の効果があります。短期的には入力ルールの習熟や台帳整備に手間がかかることもありますが、中長期で見ると現場判断の質を高める基盤になります。


鉄道DXを次の改善につなげる考え方

駅設備メンテの見える化は、鉄道DXの中でも現場に近く、効果を実感しやすい取り組みです。設備台帳を整え、点検記録を現場から共有し、故障予兆や劣化傾向を把握し、作業進捗と責任を明確にし、利用者影響で優先順位を決め、現場に定着する運用を設計することで、メンテナンス業務は大きく変わります。


重要なのは、見える化を単なる管理強化にしないことです。現場担当者が入力した情報が、現場支援、作業調整、再発防止、設備更新、利用者対応に返ってくる流れをつくる必要があります。現場から上がるデータは、駅の安全と快適性を守るための資産です。その資産を活かすには、記録する人、確認する人、判断する人、改善する人が同じ目的を共有することが欠かせません。


鉄道DXは、一度の導入で完了するものではありません。駅設備の状態、利用者の動き、保守体制、設備更新計画は常に変化します。そのため、見える化の仕組みも運用しながら改善していく必要があります。最初から理想形を追い求めるよりも、現場で困っていることを一つずつ減らし、記録の質を高め、判断に使えるデータを増やしていくことが現実的です。


駅設備メンテの見える化が進むと、これまで経験や個別連絡に頼っていた業務が、組織として共有できる業務に変わります。担当者が変わっても過去の履歴を確認でき、同じ不具合への対応を標準化でき、重要設備の状態を早く把握できます。これは人手不足や技術継承の課題に対しても有効です。熟練者の判断をデータと記録で補完できれば、若手担当者の育成にもつながります。


さらに、駅設備メンテのデータは、将来の設備投資や駅改良にも活用できます。どの設備がよく故障しているのか、どの場所で利用者影響が大きいのか、どの作業に時間がかかっているのかが分かれば、更新順位や改修範囲を検討しやすくなります。現場の不具合記録は、単なる過去の記録ではなく、次の改善を考えるための根拠になります。


これから鉄道DXで駅設備メンテの見える化を進める場合は、まず現場の記録単位をそろえ、設備台帳と点検記録をつなげるところから始めるのがよいです。そのうえで、写真、位置、作業進捗、優先度、履歴を段階的に結びつけることで、現場で使える仕組みに育てられます。大切なのは、見える化した情報を毎日の業務で使い、改善の判断に反映することです。


駅設備メンテの見える化は、利用者に直接見えにくい取り組みかもしれません。しかし、設備が安定して動き、案内が分かりやすく、移動しやすい駅を維持するためには欠かせない基盤です。鉄道DXを現場で意味のあるものにするには、設備の状態を正しく見て、早く共有し、的確に対応する仕組みを整えることが重要です。次の段階では、現場で取得した情報をより扱いやすくし、駅設備メンテの確認や共有をさらに進めるための手段として、汎用的なモバイル端末や現場入力ツールの活用も検討していくとよいでしょう。


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