目次
• 配電設備で遮断器の短絡容量確認が欠かせない理由
• 計算前にそろえる基礎資料と前提条件
• 計算ポ イント1 評価点と最大短絡電流条件を決める
• 計算ポイント2 電源側の短絡容量をインピーダンスへ換算する
• 計算ポイント3 変圧器容量とパーセントインピーダンスを反映する
• 計算ポイント4 ケーブルと母線のインピーダンスを加算する
• 計算ポイント5 電動機や分散電源からの短絡電流を考慮する
• 計算ポイント6 非対称電流と短絡投入時のピーク値を確認する
• 計算ポイント7 遮断容量と保護協調を含めて機種を決定する
• 短絡電流計算の実務例
• 遮断器選定で起こりやすい計算ミス
• 計算結果を設計と現場へ反映する手順
• まとめ
配電設備で遮断器の短絡容量確認が欠かせない理由
配電設備の遮断器を選定するときは、通常時に流れる負荷電流だけでなく、短絡事故が発生したときに流れる電流も確認しなければなりません。負荷電流に対して十分な定格電流を持つ遮断器であっても、事故点に流れ得る短絡電流が遮断器の定格遮断電流を上回っていれば、安全に電流を遮断できない可能性があります。
短絡事故では、通常運転時の何倍、場合によってはそれ以上の大きな電流が極めて短時間に流れます。この電流によって遮断器内部の接点や消弧機構に大きな電磁力と熱が加わります。選定条件を超える短絡電流を遮断しようとすると、遮断器の損傷、アークの継続、盤内への高温ガスの放出、周辺機器への波及といった重大な事象につながるおそれがあります。
実務でいう「短絡容量不足」は、遮断器の定格遮断電流が設置点の推定短絡電流を下回っている状態を指すことが一般的です。ただし、短絡容量という言葉は、電源系統が供給し得る短絡電力を表す意味でも使用されます。そのため、設計書や計算書では、電源側の短絡容量と遮断器側の遮断容量を区別して記載することが重要です。
遮断器の選定では、受電点の短絡容量、変圧器の容量とインピーダンス、幹線の長さと導体サイズ、母線の構成、電動機からの寄与、発電設備の運転状態などを順番に整理します。単に変圧器容量だけを見て遮断器を決めると、並列運転や設備増設による短絡電流の増加を見落としやすくなります。
また、最大短絡電流だけを求めればすべての検討が終わるわけではありません。遮断器が事故電流を遮断できるかを確認するためには最大値が必要ですが、末端回路で保護装置が確実に動作するかを確認するためには最小短絡電流も重要です。配電設備全体の安全性を確保するには、遮断能力、動作感度、選択遮断、ケーブル保護を一つの流れとして確認する必要があり ます。
計算前にそろえる基礎資料と前提条件
短絡電流計算の精度は、計算式よりも入力条件の整理によって大きく左右されます。詳細な計算を行っても、電源系統や設備構成の情報が古ければ、実際の配電設備と一致しない結果になります。最初に単線結線図、機器仕様書、幹線表、変圧器銘板、遮断器銘板、電力供給条件などをそろえます。
受電設備では、供給側から提示される受電点の短絡容量または短絡電流が重要な基礎データになります。提示値がない場合は、設計者や設備管理者の判断だけで推定せず、供給条件を確認したうえで計算条件を設定します。過去の計算書に数値が記載されていても、系統増強、変電設備の更新、受電方式の変更によって条件が変わっている可能性があります。
変圧器については、定格容量、一次電圧、二次電圧、パーセントインピーダンス、台数、結線方式、運転方法を確認します。同じ容量の変圧器でも、パーセントインピーダンスが異なれば二次側の短絡電流は変わります。変圧器を複数台設置している場合は、常時並列なのか、母線連絡遮断器を開放して分離運転しているのか、非常時だけ並列になるのかも明確にします。
幹線については、導体材料、断面積、線路長、配線方式、並列条数、周波数、ケーブルまたは母線の抵抗値とリアクタンス値を確認します。図面上の長さではなく、可能な範囲で実際の布設経路に近い長さを使用することが重要です。立ち上がり、盤内配線、迂回経路を無視すると、計算値と実設備の差が大きくなる場合があります。
回転機や自家発電設備が接続されている配電設備では、定格出力、電圧、始動方式、過渡リアクタンス、運転台数、系統との接続状態も必要です。電力変換装置を介して接続される分散電源については、短絡時に供給する電流が機器の制御方式によって異なるため、一般的な係数だけで判断せず、仕様資料に示された事故電流特性を確認します。

