配電設備に設置される避雷器は、雷サージや開閉サージなどの過電圧を制限し、変圧器、遮断器、ケーブル、計器用変成器などの絶縁を保護する重要な機器です。一般的なギャップレス酸化亜鉛形避雷器は、通常運転時には高い抵抗特性を示し、過電圧が加わると電流を流して機器端子に現れる電圧を抑えます。
漏れ電流による状態監視は、主として系統電圧が常時印加されるギャップレス酸化亜鉛形避雷器を対象とする方法です。直列ギャップを備えた形式や外部直列ギャップ形などでは、通常時の通電状態や適用できる診断方法が異なり、同じ考え方をそのまま当てはめられない場合があります。点検を計画するときは、避雷器の形式、構造、定格、監視装置の有無を銘板、図面、取扱説明書で確認する必要があります。
ギャップレス酸化亜鉛形避雷器には、通常運転時にも小さな漏れ電流が流れます。内部素子の電圧電流特性が変化すると、抵抗性の成分が増え、発熱や絶縁性能低下につながる可能性があります。ただし、漏れ電流は避雷器内部の劣化だけで決まるものではありません。系統電圧、温度、湿度、表面汚損、降雨、電圧波形、測定位置、接地線の構成、測定方式などの影響を受けます。
したがって、一度の測定値だけで正常または異常を断定するのは適切ではありません。対象機器のメーカーが示す点検方法や判定基準を優先し、同じ条件で蓄積した過去値、相間差、外観、温度、接地状態、運転履歴を組み合わせて評価します。共通の一律数値をすべての避雷器へ適用したり、測定値だけから残存寿命を推定したりしないこと が重要です。
本記事では、配電設備の保守担当者がギャップレス酸化亜鉛形避雷器の状態変化を早期に捉えるために確認したい、漏れ電流点検の5項目を解説します。点検前の安全確認、総漏れ電流と抵抗分漏れ電流の扱い、環境条件の影響、異常傾向が見つかった後の対応、記録管理まで、実務で押さえるべき考え方を整理します。
目次
• 配電設備における避雷器と漏れ電流点検の役割
• 漏れ電流点検を始める前の安全確認と準備
• 点検1 総漏れ電流の基準値と経時変化を確認する
• 点検2 抵抗分漏れ電流の増加傾向を確認する
• 点検3 温度・湿度・汚損による影響を確認する
• 点検4 相間差と同条件の避雷器を比較する
• 点検5 外観・発熱・接地状態と測定結果を照合する
• 漏れ電流に異常傾向が見つかったときの対応
• 点検記録を配電設備の予防保全に生かす方法
• 避雷器の劣化を見逃しやすい点検上の注意点
• まとめ
配電設備における避雷器と漏れ電流点検の役割
避雷器は、配電設備へ侵入する雷サージや系統で発生する開閉サージなどの過電圧を制限し、保護対象機器の絶 縁へ加わる負担を抑える役割を担います。避雷器単体だけで保護性能が決まるわけではなく、適用する定格、設置位置、保護対象までの配線長、接地経路、絶縁協調などを含めた設計が必要です。
漏れ電流点検が状態監視として利用される代表例は、系統へ直接接続されるギャップレス酸化亜鉛形避雷器です。この形式では、通常運転時の漏れ電流に静電容量に由来する成分と、酸化亜鉛素子の抵抗特性に由来する成分が含まれます。抵抗特性の変化は内部状態を評価する手掛かりになりますが、実際の測定値には設置条件や測定方式の影響も重なります。
一方、直列ギャップを備えた避雷器や外部直列ギャップ形避雷器では、通常運転時に酸化亜鉛素子が系統から電気的に切り離され、通常漏れ電流を同じ方法で監視できない形式があります。古い炭化けい素形なども含め、避雷器の種類によって診断方法は異なります。点検項目を決める前に、対象機器がどの形式であるかを確認しなければなりません。
ギャップレス酸化亜鉛形避雷器であって も、漏れ電流の絶対値は定格電圧、連続使用電圧、素子構成、外被構造、系統電圧、温度などによって異なります。他設備や異なる形式の避雷器で得られた値を、そのまま判定値として使用することは避けます。メーカーの保守資料、付属監視装置の取扱説明書、事業所の保全基準、新設時または交換直後の測定値を基準にします。
漏れ電流点検で重要なのは、同一機器をできる限り同一条件で継続して測定し、変化の傾向を確認することです。初回値だけでは、設備固有の正常範囲か、すでに変化が進んだ状態かを判断しにくい場合があります。新設時、交換後、定期点検時に測定条件をそろえ、経時変化を追跡できるようにします。
落雷や系統事故の後に外観異常が見られなくても、内部素子が電気的または熱的なストレスを受けている可能性はあります。ただし、落雷のたびに一律の作業を行うのではなく、雷活動、避雷器監視装置やサージカウンタの記録、保護装置の動作、停電の有無、設備重要度を踏まえて臨時点検の要否を決めます。

