top of page

配電設備の母線締結部ゆるみを見抜く温度差6つの判定基準

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均8分15秒で読めます
​
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

配電設備の母線締結部は、変圧器や遮断器から送られる大きな電流を各回路へ分配する重要な接続点です。外観上は異常がなくても、締結力の低下、接触面の酸化や腐食、異物の介在、導体の熱伸縮、振動などによって有効な接触面積が減ると、接触抵抗が増え、締結部周辺に局所的な発熱が生じることがあります。


母線締結部の異常は、初期段階では停電や保護装置の動作として現れない場合があります。しかし、発熱が長く続けば、母線表面の変色、めっきや絶縁物の劣化、接続部の焼損、周辺機器への熱影響へ進行するおそれがあります。そのため、運転中の温度分布を確認し、比較対象との温度差を保守の手掛かりとして活用することが重要です。


ただし、温度が高いという事実だけで、締結部のゆるみを断定することはできません。負荷電流の不平衡、周囲温度、盤内の換気状態、隣接機器からの伝熱、母線材質、表面状態、測定角度、反射温度なども表示値に影響します。温度差を正しく判定するには、複数の比較対象と運転条件を組み合わせて評価し、停電後の点検で原因を確認しなければなりません。


この記事で示す6つの判定基準は、すべての配電設備へ一律に適用する数値基準ではなく、温度差を評価するための比較軸です。最終的な注意値や対応区分は、設備の設計、製造者の保守要領、適用規格、負荷条件、重要度、過去履歴を踏まえて定めます。


目次

• 母線締結部のゆるみが温度差として現れる理由

• 温度差判定の前にそろえる測定条件

• 判定基準1 同一回路の相間温度差

• 判定基準2 同形かつ同負荷の接続部との温度差

• 判定基準3 締結部と母線中央部の局所温度差

• 判定基準4 周囲温度に対する温度上昇

• 判定基準5 負荷電流を踏まえた温度差の再現性

• 判定基準6 時系列で拡大する温度差

• 温度差が小さくても見逃してはいけない兆候

• 異常を検出した後の確認と是正の進め方

• 誤判定を減らす撮影と記録の実務

• 配電設備の温度管理を保全計画に組み込む方法

• まとめ


母線締結部のゆるみが温度差として現れる理由

配電設備の母線は、電源側から受けた電力を複数の回路へ分配する主回路の一部です。母線締結部は、母線同士、母線と遮断器、母線と端子などを電気的かつ機械的に接続する位置であり、通電性能と機械的な安定性の両方が求められます。


正常な締結部では、ボルト、ナット、座金、締結金具などによって必要な接触圧力が保たれ、接触面を通じて電流が流れます。ところが、施工時の締付け不足、長期間の熱サイクル、振動、腐食、接触面の汚れ、導体の変形などによって接触圧力や有効接触面積が低下すると、接触抵抗が増加することがあります。


接続部で生じる電力損失は、電流をI、抵抗をRとすると、基本的にP=I²Rで表されます。このため、接触抵抗の増加が小さくても、大きな電流が流れる母線では発熱が顕在化しやすくなります。反対に、負荷が軽い時間帯では、接触状態が悪化していても明確な温度差が現れない場合があります。


締結部で生じた熱は、母線、端子、締結部材、周囲の空気へ伝わります。接触異常の初期では、母線の重なり部や締結部周辺に小さな高温域が現れ、進行すると母線の長手方向や近接する絶縁支持物へ温度上昇の範囲が広がることがあります。温度分布の形状を確認すれば、盤内全体の温度上昇と局所的な接続異常を切り分けやすくなります。


ただし、母線締結部が高温だからといって、原因が必ずボルトのゆるみとは限りません。過負荷、三相電流の不平衡、高調波を含む電流増加、接触面の酸化、母線の変形、端子施工不良、換気不良、隣接機器からの伝熱でも温度は上昇します。温度測定は異常箇所を絞り込むための手段であり、最終的な原因確認には、停電後の外観点検、部材状態の確認、製造者が認める方法による締結確認、必要に応じた低抵抗測定などを組み合わせます。電気設備の保守試験では、適用規格と製造者の許容値を踏まえ、設備が継続使用に適した状態かを総合的に評価する考え方が基本です。


温度差判定の前にそろえる測定条件

温度差を判定する前に、測定条件をできるだけそろえる必要があります。同じ締結部でも、負荷電流、運転時間、周囲温度、盤扉の開閉状態、撮影距離、角度が異なれば、表示される温度は変わります。条件が不ぞろいのまま数値だけを比較すると、正常な接続部を異常と判定したり、実際の異常を見逃したりする原因になります。


最も重要なのは、測定時の負荷状態です。母線締結部の発熱は電流の影響を強く受けるため、設備を起動した直後や負荷が極端に軽い状態では、本来の温度差が十分に現れないことがあります。可能な範囲で通常運転に近い負荷が継続し、温度変化が落ち着いた状態で測定します。


負荷率だけを一律の条件にするのではなく、測定時刻、各相電流、主要負荷の運転状況、運転開始からの経過時間を記録することが重要です。生産設備では工程によって電流が変動し、空調設備では外気条件によって負荷が変わります。前回と同じ負荷を再現できない場合でも、電流値と運転状況が残っていれば、温度差が負荷変動によるものか、接続状態の変化によるものかを検討しやすくなります。


次に、比較する表面の状態をそろえます。赤外線サーモグラフィは対象表面から検出した赤外放射を基に温度を算出するため、光沢のある金属面、酸化した金属面、塗装面、絶縁被覆面では測定値の出方が異なります。特に低放射率で反射しやすい金属面では、周囲の熱源や測定者自身の熱が映り込み、見かけの高温や低温が生じることがあります。定量測定では、対象表面の放射率と反射温度の扱いが重要です。


同じ温度の母線でも、光沢のある部分と変色した部分を直接比較すると、表面状態の違いによる見かけの温度差が生じることがあります。比較する際は、同じ材質、同じ表面処理、同じ形状、同じ撮影角度の箇所を選びます。高放射率の基準材や測定ターゲットを使用する場合は、停電状態で安全に施工し、設備の絶縁性能、沿面距離、放熱、保守性を損なわないことを確認します。充電中の母線へ近づいて貼り付ける作業は行いません。高放射率ターゲットは、金属導体の放射温度測定の信頼性向上に役立つ場合があります。


撮影角度と距離も統一します。金属表面を斜めから撮影すると反射の影響が増え、ボルト頭部、母線、締結金具の位置関係も分かりにくくなります。可能な限り対象面に近い正面方向から、測定器の距離係数と必要な測定スポット径を満たす距離で撮影します。盤の構造上、同一角度を確保できない場合は、撮影位置を床面表示、盤番号、点検窓番号などと関連付けて記録します。


盤扉を開けて測定する場合は、開放後の経過時間にも注意が必要です。扉を開けると盤内の暖気が流出し、外気が流入するため、高温部が冷却されて表示温度が変わることがあります。扉を開ける順番や撮影までの時間が毎回異なると、履歴比較の信頼性が下がります。安全に可能な範囲で、開放後の条件を統一して速やかに測定します。


設備構造が許す場合は、対象波長域に適合した赤外線点検窓や、常設温度センサーを活用し、充電部への接近や盤開放を減らす方法も検討できます。ただし、点検窓を介した測定では窓材の透過特性が測定値に影響し、常設センサーでは設置位置が監視できる範囲を左右します。いずれも製品仕様、施工条件、校正方法を確認したうえで使用します。


活線状態の配電設備を点検する作業には、感電やアークフラッシュの危険があります。測定のために無理にカバーを外したり、充電部へ接近したりしてはいけません。設備の電圧、短絡電流、盤構造、接近距離、作業内容を踏まえたリスク評価を行い、必要な教育を受けた担当者が、事業所の安全手順に従って実施します。


判定基準1 同一回路の相間温度差

第一の判定基準は、同一回路にある三相の締結部を比較する方法です。三相回路で各相の負荷電流、母線寸法、締結構造、盤内位置、周囲条件がおおむね同じであれば、正常時の温度分布も近い状態になると考えられます。その中で一相の締結部だけが局所的に高温となっている場合は、接触抵抗の増加や接続状態の違いを疑う根拠になります。


相間比較の利点は、周囲温度や盤内換気の影響をある程度共通条件として扱えることです。同じ盤内の近接した位置を比較するため、別の日に測定した絶対温度だけを比べるよりも、異常箇所を絞り込みやすくなります。


ただし、各相の温度差を評価する前に、電流差を確認しなければなりません。一相だけ負荷電流が大きい場合、その相の母線や接続部が高温になるのは不自然ではありません。照明負荷や単相負荷が相ごとに偏っている設備では、温度差が接触不良ではなく負荷不平衡を反映している可能性があります。


実務では、相ごとの電流と温度をできるだけ同時刻に記録し、温度差と電流差の対応を確認します。高温相の電流が他相と同程度であるにもかかわらず、特定の締結部だけが高い場合は、接触部の異常を疑う根拠が強くなります。反対に、母線全体が一様に高温で、その相の電流も明らかに大きければ、負荷配分、母線容量、換気条件を先に確認します。


小さな温度差を直ちにゆるみと断定する必要はありません。同じ負荷条件で再測定しても差が繰り返し現れる場合は、監視対象として登録します。差が拡大している場合、高温域が締結部を中心に集中している場合、変色や異臭などを伴う場合は、停電点検の優先順位を引き上げます。


相間比較では、ボルト頭部だけでなく、母線の重なり部、締結部の前後、端子へ接続される導体まで確認します。ボルト頭部と母線表面では材質や放射率が異なり、見かけの温度も変わり得るため、同種表面同士を比較することが重要です。点状の最高温度だけではなく、高温域の位置と広がりを確認します。


判定基準2 同形かつ同負荷の接続部との温度差

第二の判定基準は、構造と負荷条件が似た別の締結部を基準として比較する方法です。相間比較が難しい単相回路や、相ごとの負荷が大きく異なる設備では、同じ定格、同じ母線寸法、同じ締結方法を持つ別回路との比較が役立ちます。


比較対象には、同一盤内の隣接回路、同じ設備系列の別盤、同容量で同様に運転される回路などを選びます。ただし、外観が似ているだけでは十分ではありません。電流、運転時間、母線材質、表面処理、導体本数、盤内位置、換気条件、近接熱源が近いことを確認します。


例えば、盤上部の締結部と盤下部の締結部では、暖められた空気が上昇する影響により、正常でも盤上部の温度が高くなることがあります。また、変圧器、リアクトル、抵抗器などの発熱機器に近い接続部は、隣接熱源の影響を受けます。このような位置条件を無視して比較すると、局所発熱を誤って判定する可能性があります。


類似接続部との比較では、絶対温度だけでなく、温度差の一貫性を重視します。同じ構造の接続部が複数ある中で、一か所だけ繰り返し高温になる場合は、個別の接触状態に問題がある可能性が高まります。停電後に低抵抗測定を行う場合も、設備固有の基準値がないときは、同形で正常と考えられる接続部との比較が判断材料になります。


ただし、正常な比較対象が存在するとは限りません。同じ時期に同じ方法で施工された締結部では、複数箇所に共通の施工不良や経年劣化がある可能性もあります。すべての接続部が同程度に高温であれば相互差が現れないため、周囲温度との差、過去履歴、母線全体の温度、設計条件、製造者の許容値など別の判定基準を併用します。


比較対象を毎回変更すると履歴の意味が薄れるため、点検要領には基準とする接続部を明記します。盤番号、回路名称、相、締結位置を固定し、同じ組合せで比較を続けることで、微小な変化を捉えやすくなります。


判定基準3 締結部と母線中央部の局所温度差

第三の判定基準は、締結部の温度と、同じ母線上にある接続部から離れた位置の温度を比較する方法です。母線に流れる電流や盤内温度の上昇によって導体全体が温まる場合、温度はある程度連続的に分布します。一方、接触抵抗が増加した締結部では、重なり部や接触面周辺を中心とした局所的な高温域が現れることがあります。


比較点は、締結部の直近だけでなく、熱の影響が比較的小さい母線中央部にも設定します。締結部から母線の長手方向に複数点の温度を確認すると、局所発熱か、導体全体の発熱かを判断しやすくなります。


接続部付近を頂点として、その前後で温度が下がっている場合は、締結部が主な熱源である可能性があります。反対に、母線全体の温度がほぼ均一に高い場合は、過負荷、盤内温度の上昇、換気不良、上流機器からの伝熱などを先に検討します。近くに遮断器や変圧器がある場合は、その機器から母線へ熱が伝わっていないかも確認します。


局所温度差を評価するときは、測定点を固定することが大切です。前回はボルト頭部、今回は母線表面というように測定位置が変われば、材質、放射率、熱容量の違いによって数値が変わります。締結部側と母線中央側について、毎回同じ表面を測定します。


温度画像では、最高温度を示す一点だけに注目しないようにします。反射、汚れ、画素の混在、焦点ずれによって、一部だけ異常な表示になる場合があるためです。高温域が締結部の形状に沿って連続しているか、角度を変えても同じ位置に現れるか、可視画像と位置が一致するかを確認します。


締結部と母線中央部の差が小さくても、前回より差が増えている場合は注意が必要です。特に、負荷電流が前回より低いにもかかわらず局所温度差が拡大している場合は、接触状態、換気状態、周辺熱源、測定条件の変化を追加調査します。


判定基準4 周囲温度に対する温度上昇

第四の判定基準は、締結部の表面温度と周囲温度との差を、温度上昇として評価する方法です。室温や盤内温度は季節、時間帯、空調運転、日射などによって変化するため、表面温度の絶対値だけでは異なる日の状態を比較しにくい場合があります。


例えば、締結部の表面温度が同じであっても、周囲温度が低いときと高いときでは、設備自身の発熱や放熱条件が異なります。周囲温度との差を確認すれば、環境温度の変動をある程度切り分けられます。


ただし、どの位置を周囲温度とするかを決めておかなければなりません。盤外の室温と盤内空気温度には差があり、盤内でも上部と下部では温度が異なることがあります。締結部近傍に温度センサーを設けられない場合は、盤内上部、盤内下部、盤外のいずれを基準にするかを点検要領で統一します。


周囲温度との差が大きい場合でも、直ちに締結部のゆるみと判断することはできません。高負荷で母線全体が温まっている場合や、盤内換気が不十分な場合にも温度上昇は大きくなります。相間差、類似接続部との差、局所的な温度分布、負荷電流を併せて確認します。


反対に、周囲温度との差が小さいからといって安全とは限りません。低負荷時には接触抵抗の増加が温度として現れにくく、強い通風がある設備では表面温度が抑えられる場合があります。常設温度センサーがある場合は、瞬間値だけでなく、負荷変動に伴う上昇速度、ピーク値、持続時間の履歴を確認します。


温度上昇の社内基準を設けるときは、母線材質、めっき、絶縁物の耐熱性、周辺機器の許容温度、設備の負荷率、比較対象、適用規格を踏まえます。異なる形式の配電設備へ同じ数値を機械的に適用せず、製造者の保守要領と設備ごとの正常履歴を基礎に、注意、要調査、早期対応などの区分を定めます。


判定基準5 負荷電流を踏まえた温度差の再現性

第五の判定基準は、負荷電流と温度差の関係を確認し、同程度の条件で異常が再現するかを評価する方法です。母線締結部の温度は負荷に応じて変わるため、一回の温度測定だけでは接触異常の有無を判断しにくい場合があります。


まず、測定時の各相電流と締結部温度をできるだけ同時に記録します。可能であれば、負荷が安定した状態で一定時間ごとに複数回測定し、温度が上昇を続けているのか、ほぼ安定しているのかを確認します。


正常な締結部でも、負荷が増えれば温度は上昇します。しかし、接触抵抗が増加した締結部では、同程度の負荷変化に対して、類似接続部より温度差が大きくなることがあります。負荷増加に伴って高温域が急速に拡大する場合や、類似箇所との差が再現する場合は、追加調査の優先度が高まります。


前回点検との比較では、温度だけでなく電流もそろえて評価します。前回より温度が上がっていても、電流が大幅に増えていれば、接続状態が悪化したとは限りません。一方、前回より電流が少ないにもかかわらず温度や局所温度差が上昇している場合は、接触抵抗の増加、換気状態の変化、周辺熱源、測定条件の違いを調査します。


運転条件を完全にそろえられない設備では、温度差と電流値を時系列でグラフ化すると変化を捉えやすくなります。同一回路について、複数の負荷状態で温度差を記録し、過去の通常傾向から外れた測定点を抽出します。単純な温度上限だけで管理するより、設備ごとの正常状態を基準にできる点が利点です。


測定のために負荷を無理に増やしてはいけません。生産設備や重要負荷へ影響を与えたり、設備容量を超える運転を行ったりすることは避けます。通常運転で十分な負荷が得られない場合は、負荷が高くなる時期に再測定するか、常設センサーによる監視、停電時の外観確認や低抵抗測定など別の方法を選びます。


判定基準6 時系列で拡大する温度差

第六の判定基準は、過去の温度データと比較し、温度差が時間の経過とともに拡大しているかを確認する方法です。母線締結部の異常は、必ずしも一度に大きな温度上昇として現れるわけではありません。初期には小さな差でも、熱サイクル、振動、接触面の劣化などが重なることで徐々に進行する場合があります。


時系列評価では、測定条件をできるだけ統一します。盤の運転状態、負荷電流、周囲温度、測定位置、撮影角度、使用する測定器、放射率設定、反射温度の扱いなどが変わると、実際の劣化とは無関係な差が生じます。完全に同じ条件を再現できない場合は、違いを記録に残します。


重要なのは、温度の絶対値だけではなく、比較対象との差を追跡することです。同じ相の別接続部との差、同形回路との差、母線中央部との差、周囲温度との差を継続して記録すれば、季節変動や盤内温度の影響を抑えながら変化を確認できます。


例えば、相間温度差が点検のたびに拡大している場合は、各測定値が社内の緊急区分に達していなくても、劣化傾向として扱います。次回定期点検まで一律に待つのではなく、負荷が高い時間帯での再測定、点検周期の短縮、停電点検の前倒しを検討します。


時系列で評価すると、補修後の効果も確認できます。締結部の分解整備や部品交換を行った後、同程度の負荷で再測定し、温度差が解消したかを確認します。補修直後に正常でも、一定期間後に再び温度差が現れる場合は、母線の変形、支持状態、振動、締結構造、施工方法など根本原因が残っている可能性があります。


温度履歴は、単なる点検記録ではなく、設備ごとの正常状態を定義する基礎データになります。過去の結果を新しい測定結果と比較し、修理後に追跡点検を行うことで、劣化傾向と補修効果を確認しやすくなります。


温度差が小さくても見逃してはいけない兆候

温度差が小さい場合でも、他の兆候が重なっていれば注意が必要です。母線締結部の異常は、負荷が軽いと温度に現れにくいため、温度差だけで点検要否を決めると初期異常を見逃す可能性があります。


まず確認したいのは、締結部周辺の変色です。母線表面の褐色化、めっき面の変色、絶縁物の黄変、塗装の変色などが局所的に見られる場合は、過去に高温状態となった可能性があります。点検時の負荷が軽く、現在の温度が低くても、熱影響の痕跡が残っていることがあります。


異臭も重要な兆候です。絶縁物、樹脂部品、付着物などが加熱されると、通常とは異なる臭いが生じる場合があります。異臭を感じた場合は、臭いの確認のために盤へ顔を近づけず、安全な距離を保って運転状態を確認します。


放電音や異常音がある場合は、単なる締結部のゆるみだけでなく、絶縁劣化、端子部の接触不良、部分放電など別の異常が関係している可能性があります。音の発生位置が不明な状態で安易に盤を開放せず、設備停止を含む安全な調査方法を検討します。


ボルト、座金、母線表面に腐食生成物、すす状の付着、溶融痕、機械的な変形が見られる場合も、停電点検を優先する理由になります。粉じんの付着だけで接触異常を断定することはできないため、温度分布、変色、締結部材の状態と合わせて評価します。


保護装置が動作するほどではない断続的な電圧変動、負荷機器の不安定動作、照明のちらつきなどが発生している場合も、主回路接続部を確認するきっかけになります。ただし、これらの現象には電源品質、負荷側設備、制御回路など多くの原因があるため、母線締結部だけに絞らず、電源側から負荷側まで系統的に調査します。


温度差が小さくても、設備が重要負荷へ給電している場合、代替電源がない場合、過去に締結部異常が発生している場合は、点検の優先順位を上げます。判定は温度の数値だけでなく、設備停止時の影響と異常進行時の危険性を含めて行います。


異常を検出した後の確認と是正の進め方

温度測定で異常が疑われた場合は、まず測定誤差を除外します。同じ位置を別の角度から撮影し、反射による見かけの高温でないかを確認します。類似接続部、相間、母線中央部との比較を再度行い、負荷電流、周囲温度、撮影条件も記録します。


再測定でも局所温度差が確認された場合は、設備重要度、温度差の大きさ、増加傾向、外観異常の有無を基に対応時期を決めます。急速な温度上昇、焦げ臭、変色、異常音、煙などがある場合は、通常の定期点検を待たず、負荷の低減や設備停止を含む対応を検討します。対応は事業所の緊急手順と電気主任技術者などの管理体制に従います。


停電点検を行う際は、電源を遮断しただけで作業を始めてはいけません。誤投入防止、施錠と表示、無電圧確認、残留電荷への対応、必要な接地など、設備に応じた安全措置を行います。複数電源、非常用電源、分散電源、回生が生じる設備では、逆送電の可能性も確認します。停電した導体でも、適切にロックアウトまたはタグアウトし、無電圧を確認するまでは充電状態として扱います。


締結部は、単純に増し締めすればよいとは限りません。過熱によってボルト、ナット、座金、母線表面、めっき、絶縁支持物が損傷している場合、締め直すだけでは接触抵抗が十分に下がらないことがあります。接触面の荒れ、腐食、変形、溶融痕、変色、締結部材の損傷を確認し、製造者の保守要領に従って分解整備または部品交換を行います。


締付け条件は、設備仕様、締結部材、ボルト径、材質、表面処理、潤滑状態などによって異なります。製造者が指定する締付け値と施工手順を確認し、適切に管理された工具を使用します。根拠のない一般値で締め付けると、締付け不足だけでなく、ボルトの損傷、母線の変形、ねじ部の破損を招くおそれがあります。


既設の締結部にトルクレンチを掛けても、現在の軸力を単純に読み取れるとは限りません。工具を掛けることで締結状態が変化することもあるため、点検方法は製造者の保守要領と事業所の手順に従います。異常履歴がある接続部では、安易な増し締めだけで済ませず、分解点検や低抵抗測定を検討します。


低抵抗測定を行う場合は、対象設備と測定範囲に適した測定器を使用し、測定位置、試験電流、電流経路、接触方法を統一します。設備固有の基準値がある場合はその値と比較し、基準値がない場合は、同形で正常と考えられる接続部や過去の測定値との差を確認します。測定値が高いときは、ボルトのゆるみだけでなく、接触面の酸化、導体の損傷、施工状態、測定条件を調査します。


補修後は、外観確認や抵抗測定だけで完了とせず、復電後に安全な方法で温度を再測定します。通常負荷で温度差が解消したことを確認し、補修前後の画像、電流、周囲温度、交換部品、締付け条件を記録します。


誤判定を減らす撮影と記録の実務

温度診断の信頼性は、測定器の性能だけでなく、撮影方法と記録の統一によって大きく変わります。担当者ごとに撮影位置や判定方法が異なると、継続的な設備管理に利用しにくくなります。


最初に、盤ごとの標準撮影位置を決めます。盤正面からの全体画像、母線締結部の温度画像、同じ範囲の可視画像を対応付けます。温度画像だけでは、後からどの締結部を撮影したのか分からなくなることがあるため、盤番号、回路名称、相、上流側か下流側かを明確にします。


撮影範囲には比較対象を含めます。異常が疑われる締結部だけを拡大すると、相間差や母線中央部との差が分かりません。一枚の画像に複数相や周辺母線を収め、必要に応じて詳細画像を追加します。


温度表示の範囲もそろえます。自動表示では、画像内の最高温度と最低温度に応じて色分けが変わるため、わずかな差が強調されたり、大きな差が目立たなくなったりします。履歴比較では、可能な範囲で同じ温度範囲を使用し、色だけでなく数値でも確認します。


測定記録には、最高温度だけでなく、比較点の温度を残します。異常箇所、同相の母線中央部、他相の同位置、類似接続部、周囲温度を記録すれば、後から複数の判定基準で再評価できます。どの点とどの点の差を判定に使用したかを明確にします。


負荷情報として、各相電流、主要負荷の稼働状況、運転開始からの経過時間を残します。電流を直接測定できない場合は、生産ラインの運転台数、空調機の運転状況、受電電力など、その時点の負荷を推定できる情報を記録します。


測定器については、定期点検、校正状況、レンズの汚れ、保護窓の状態、放射率設定、反射温度設定、測定距離を管理します。点検窓を介して測定する場合は、窓材による透過率と波長帯の影響を考慮し、前回と同じ窓、角度、距離を使用します。


ファイル名や保存先も統一します。日付だけでなく、施設名、盤番号、回路名、相、測定位置が分かる命名規則を設けます。温度画像と可視画像は、一つの点検単位として対応関係が分かる形で管理します。


異常判定を行った担当者の所見も残します。「高温」だけではなく、「他相より高いが電流差も大きいため再測定」「負荷が前回より低いにもかかわらず局所温度差が拡大」「反射の可能性があるため別角度で確認」など、判断の根拠を記載します。


配電設備の温度管理を保全計画に組み込む方法

母線締結部の温度測定は、一度実施するだけでは十分な効果を得にくいため、設備ごとの重要度、負荷変動、過去の異常履歴を踏まえ、保全計画へ組み込みます。


まず、対象設備を整理します。受電点に近い主母線、変圧器二次側、主幹遮断器の接続部、大容量負荷へ給電する回路、停止時の影響が大きい回路を優先します。点検周期は一律ではなく、設備重要度、故障時の影響、負荷率、環境条件、経年、過去の異常に応じて調整します。


次に、測定時期を決めます。年間を通じて負荷が変わる設備では、負荷が高くなる季節や操業時期に測定します。夏季に空調負荷が増える施設、特定工程で大容量設備が稼働する工場などでは、年次点検日だけに合わせると本来の発熱を確認できない場合があります。


新設や更新後の設備では、初期運転後の確認を計画します。施工直後に問題がなくても、通電による熱サイクルや振動を受けた後に締結状態が変化する可能性があります。初回測定結果を正常時の基準画像として保存すれば、その後の比較に利用できます。


過去に温度差が見つかった設備は、補修後の確認頻度を一時的に高めます。補修直後、一定期間後、負荷が高い時期に再測定し、異常が再発していないかを確認します。


常時運転する重要設備では、赤外線点検窓や常設温度センサーの採用も検討できます。常設センサーを利用すれば、人が盤を開放する回数を減らし、負荷変動に伴う温度履歴を取得できます。ただし、センサーの測定位置、故障検知、校正、通信停止時の対応、警報設定も保全計画に含める必要があります。


点検結果は、正常、要監視、要調査、早期対応などの区分に整理します。ただし、温度差だけで機械的に区分せず、負荷条件、増加傾向、設備重要度、外観異常、製造者の許容値を含めて判定します。担当者が変わっても同じ考え方で判断できるよう、判定事例を社内要領へ蓄積します。


まとめ

配電設備の母線締結部に生じる温度差は、締結力の低下や接触面の異常を早期に把握するための有力な手掛かりです。接触抵抗が増えると、負荷電流によって締結部周辺が局所的に発熱し、相間や類似接続部との温度差として現れることがあります。


判定では、同一回路の相間温度差、同形かつ同負荷の接続部との差、締結部と母線中央部の局所差、周囲温度に対する温度上昇、負荷電流を踏まえた再現性、時系列での拡大傾向という6つの基準を組み合わせます。


一律に何度以上ならゆるみと断定するのではなく、母線材質、表面状態、盤内位置、負荷電流、周囲温度、過去履歴、製造者の保守要領を確認することが重要です。赤外線による表示値は放射率や反射の影響も受けるため、同じ位置、角度、距離、設定、比較対象で評価します。


温度差が確認された後は、活線状態で安易に増し締めを行わず、安全に停電し、ロックアウト・タグアウト、無電圧確認など必要な措置を講じたうえで、外観、接触面、締結部材、必要に応じて低抵抗を確認します。製造者が指定する締付け条件に従って是正し、復電後の再測定で改善を確認します。


さらに、点検画像、測定位置、負荷電流、周囲温度を継続して保存すれば、単発の異常判定だけでなく、配電設備の劣化傾向や点検周期の見直しにも活用できます。屋外に設置された配電設備の点検位置や現場写真を位置情報と結び付けて管理したい場合は、温度測定用の機器と役割を分けたうえで、LRTK Phoneの活用方法も確認するとよいでしょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

​

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

​

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page