目次
• 配電設備でケーブルシース損傷を見逃せない理由
• 試験前に確認するケーブル構造と接地方式
• 試験 方法1 絶縁抵抗測定でシースの健全性を確認する
• 試験方法2 直流シース耐電圧・漏れ電流試験で貫通損傷を確認する
• 試験方法3 区間分割試験で損傷区間を絞り込む
• 試験方法4 ブリッジ法で損傷位置までの距離を推定する
• 試験方法5 ステップ電圧法で地表から損傷点を探す
• 試験方法6 パルス反射法で不連続箇所を補助的に確認する
• 試験結果を正しく判定するための注意点
• ケーブルシースが損傷する主な原因
• 発見後の対応と再発防止
• 試験記 録を配電設備の保全に活用する方法
• まとめ
配電設備でケーブルシース損傷を見逃せない理由
配電設備に使用される電力ケーブルは、導体、導体遮へい層、絶縁体、絶縁体遮へい層、金属遮へい層、外部シースなど、複数の層で構成されます。構造はケーブルの種類によって異なりますが、外部シースは内部の金属層や絶縁構成を水分、土壌、薬品、衝撃、摩擦などの外部環境から保護する役割を担います。
シースは通常、主絶縁そのものではありませんが、配電設備の信頼性を維持するうえで重要です。シースに切れ、穴、亀裂、押しつぶし、擦れなどが生じると、損傷箇所から水分や腐食性物質が侵入する可能性があります。金属遮へい層や金属外被が腐食すると、接地機能や故障電流の通過経路に影響し、長期的にはケーブルシステム全体の健全性を低下させるおそれがあります。
片端接地やクロスボンドなど、金属遮へい層のボンディング状態を管理する方式では、外部シースの健全性が運用上の前提になります。シース損傷によって意図しない接地点が生じると、金属遮へい層を流れる電流や損失が設計時の想定から外れ、局部的な発熱や接地方式の機能低下につながる可能性があります。ただし、影響の大きさはケーブル構造、接地方式、負荷電流、損傷抵抗などによって異なるため、損傷の存在だけで発熱や故障を断定することはできません。
ケーブルシース損傷は、必ずしも直ちに停電や主絶縁の破壊を引き起こすわけではありません。そのため、運転中の電圧や電流に目立った異常がなく、損傷が長期間見過ごされることがあります。地中管路、直接埋設、共同溝、ケーブルラックなどでは、ケーブルの全長を目視できないため、外観確認だけで健全性を判断することも困難です。
配電設備のケーブルシース点検では、最初に電気的な異常の有無を確認し、その後に損傷区間と位置を段階的に絞り込む流れが基本です。一つの試験だけで結論を出すのではなく、絶縁抵抗、漏れ電流、接地状態、推定距 離、地表電位差などの情報を組み合わせて判断します。
押出し外被が特別な保護機能を持つケーブルについては、IEC 60229に、ルーチン試験、形式試験、布設後試験として用いられる外被試験の枠組みが示されています。ただし、実際に適用する試験条件は、対象ケーブルの規格、製造者の仕様、設備管理者の保安規程や試験要領に従って決定する必要があります。([IEC Webstore][1])
試験前に確認するケーブル構造と接地方式
ケーブルシース試験を始める前に、対象となるケーブルの構造を確認します。同じ配電設備で使用されるケーブルでも、金属遮へい層の有無、外装の種類、外部シースの材質、接地方式、接続部の構造は異なります。構造を理解しないまま試験電圧を加えると、正しい測定ができないだけでなく、接続された機器、避雷保護装置、監視回路などへ意図しない電圧を加える危険があります。
まず、単線結線図、ケーブル布設図、接続図、接地系統図、施工記録、試験成績書を確認します。ケーブルの始端と終端だけでなく、中間接続部、接地箱、クロスボンド箱、保護装置、監視装置などの接続状態も把握します。特に、金属遮へい層が複数箇所で接地されている場合、そのままでは外部シースと大地間の絶縁状態を正しく測定できないことがあります。
試験対象のケーブルは、設備管理者の作業規程と試験手順に従って停止し、系統から切り離し、検電による無電圧確認を行います。その後、残留電荷を十分に放電し、必要な接地を施してから試験回路を構成します。系統から切り離した後も、並行する活線ケーブルや他回線から誘導電圧が発生することがあるため、測定前、測定中、測定後の接地方法を手順書に定めます。
外部シース試験では、金属遮へい層または金属外被を試験電極として利用し、外部シースを介して大地側との間に電圧を加える方法が一般的です。ただし、端末部や接続部に設置された保護装置が接続されたままだと、試験電流が保護装置側へ流れ、シース損傷がなくても低い測定値になる場合があります。試験前には、切り離す回路と試験後に復旧する回路を明確にし、端子番号や接続状態を記 録します。
試験電圧、印加時間、判定方法は、すべてのケーブルに共通ではありません。外部シースの材質、厚さ、ケーブルの電圧階級、使用年数、接続機器、適用規格、設備管理者の基準によって条件が変わります。現場判断だけで試験電圧を引き上げたり、印加時間を延長したりしてはいけません。
試験前には外観確認も行います。端末部、接続部、ケーブル引込口、ラック支持部、管路口、曲がり部など、機械的な力が集中しやすい場所を確認します。泥、水分、導電性の粉じん、結露が付着していると、シース表面を通じて漏れ電流が流れ、測定結果に影響することがあります。必要に応じて清掃と乾燥を行い、清掃前後の状態を記録します。
試験作業は、高電圧試験や配電設備の保守に必要な知識と資格を持つ作業者が、立入管理、監視、非常時の停止方法を含む安全手順の下で実施します。試験器の出力を停止した後も、ケーブルに電荷が残ることがあるため、試験後の放電と接地を省略してはいけません。
試験方法1 絶縁抵抗測定でシースの健全性を確認する
絶縁抵抗測定は、ケーブルシースの電気的な異常を調べる際の基本的なスクリーニングです。金属遮へい層または金属外被と大地側との間の絶縁抵抗を測定し、外部シースを介した漏れの程度を確認します。測定準備が比較的容易で、定期点検や異常発生後の一次確認に利用しやすい方法です。
試験では、対象ケーブルの金属遮へい層を接地系統や接続機器から必要に応じて切り離します。そのうえで、測定器の一方を金属遮へい層に、もう一方を大地側または指定された試験電極に接続します。測定前には端末部や接続部の表面を清掃し、付着水や汚れによる表面漏れの影響を減らします。
測定値が過去の記録や設備管理基準と比べて十分に高く、一定時間の測定中に安定している場合は、試験条件の範囲で外部シースがおおむね健全である可能性が高いと評価できます。一方、絶縁抵抗が過去の記録より大きく低下している場合や、同じ構造と近い長さを持つ別回線と比べて著しく低い場合は、シース損傷、端末部の汚損、接地回路の切り離し不足などを疑います。
絶縁抵抗はケーブル長の影響を受けます。一般に、同じ構造と状態であれば、対象長が長いほど漏れ電流の経路が並列に増えるため、回線全体として測定される絶縁抵抗は低くなる傾向があります。異なる長さの回線を測定値だけで単純比較せず、ケーブル長、温度、湿度、測定電圧、測定時間を記録して条件をそろえます。
測定中に数値が徐々に上昇する場合は、充電電流や誘電吸収の影響が考えられます。反対に、数値が不安定に変動する場合は、接続不良、表面の水分、断続的な導通、周囲からの誘導などが影響している可能性があります。数値の高低だけでなく、時間に対する変化も確認します。
絶縁抵抗が低くても、直ちに埋設部のシース損傷と断定してはいけません。接地箱内部の結露、端末部の汚れ、保護装置の切り離し漏れ、測定リード線の 絶縁不良などでも同様の結果になることがあります。始端側と終端側の接続状態を再確認し、必要に応じて区間を分けて再測定します。
反対に、絶縁抵抗が高いからといって、損傷がまったくないとは限りません。傷が金属遮へい層まで達していない場合、損傷部の周囲が乾燥している場合、損傷抵抗が高い場合には、高い絶縁抵抗を示すことがあります。施工中に強い衝撃を受けた可能性がある場合や、過去に近接掘削が行われた場合は、絶縁抵抗測定だけで完了せず、必要に応じて直流シース耐電圧試験や位置探索を組み合わせます。
絶縁抵抗測定は、損傷の存在を大まかに把握するための方法です。定期的に同じ条件で測定し、経年変化を追跡することで、単発の測定値だけでは分からない変化を把握しやすくなります。
試験方法2 直流シース耐電圧・漏れ電流試験で貫通損傷を確認する
直流シ ース耐電圧・漏れ電流試験は、外部シースと大地側との間に規定された直流電圧を加え、外部シースが試験条件に耐えるか、漏れ電流に異常な変化がないかを確認する方法です。絶縁抵抗測定より高い電界を外部シースに与えるため、金属遮へい層から大地へ通じるピンホールや亀裂など、電気的な貫通損傷を検出できる場合があります。
ただし、浅い擦り傷、金属遮へい層まで達していない傷、乾燥して高抵抗になっている損傷を必ず検出できるわけではありません。この試験の合格は、規定された試験条件に耐えたことを示すものであり、あらゆる機械的損傷が存在しないことを保証するものではありません。
押出し外被に対する電気試験は、製造時だけでなく布設後の確認にも用いられます。IEC 60229は、特別な保護機能を持つ押出し外被について、布設後試験を含む試験区分を示しています。現場では、対象ケーブルに適用される製品規格、製造者の指示、設備管理者の試験要領を確認し、試験電圧と印加時間を選定します。([IEC Webstore][1])
試験前には、外部シース以外へ試験電圧が加わらないように回路を構成します。金属遮へい層に接続された接地線、保護装置、監視回路などを確認し、必要な切り離しを行います。端末部では、金属遮へい層と接地金具との離隔を確保し、表面放電が起きないように清掃、乾燥、養生を行います。
電圧は定められた手順に従って上昇させ、漏れ電流の変化を監視します。電圧を上げた直後には充電電流が流れるため、瞬間的な電流だけで異常と判断してはいけません。一定時間後に電流が低下して安定するか、上昇し続けるか、断続的に変動するかを確認します。
漏れ電流が設備管理基準の範囲で安定し、急激な増加や絶縁破壊が確認されない場合は、規定された試験条件に耐えたと評価します。一方、電流が急増する場合、試験電圧を維持できない場合、保護装置が動作する場合は、大地へ通じる損傷や試験回路上の異常が存在する可能性があります。放電音、発煙、異臭、測定値の急変が見られた場合は、手順に従って直ちに出力を停止し、安全に放電します。
異常箇所を探索しやすくする目的で、試験条件を独自に超えて電圧を加え続けてはいけません。過大な電圧や長時間の印加は、既存の傷を拡大させ、金属遮へい層、接続部、周辺部材へ影響を与えるおそれがあります。判定不能の場合は、回路構成と測定条件を見直し、区間分割試験や専用の故障位置探索へ移行します。
漏れ電流には、シース損傷部を通る電流だけでなく、端末表面の水分や汚れを通る電流も含まれます。湿度の高い日や降雨直後には測定結果が変わることがあるため、試験環境を記録します。端末部を清掃、乾燥させた後に数値が大きく改善した場合は、埋設部の損傷ではなく表面漏れが主な原因だった可能性があります。
直流シース耐電圧・漏れ電流試験は、シースの電気的健全性を確認するうえで有効ですが、単独では損傷位置まで特定できません。異常が確認された場合は、次の区間分割試験によって対象範囲を狭めます。
試験方法3 区間分割試験で損傷区間を絞り込む
長いケーブル回線でシース異常が確認された場合、回線全体を一度に調査すると位置特定に時間がかかります。中間接続部、接地箱、クロスボンド箱などを利用して回線を複数の区間に分け、各区間の絶縁抵抗や漏れ電流を比較する方法が区間分割試験です。
区間分割試験では、最初にケーブルの接続構成を図面で整理します。金属遮へい層がどこで接続され、どこで接地されているかを把握しなければ、意図した区間だけを測定できません。接地方式によっては、複数のケーブル区間が接地箱内部で接続されているため、試験対象以外の区間を切り離す必要があります。
例えば、回線全体の絶縁抵抗が低い場合に、中間接続部で前半と後半を切り離して測定します。前半区間の測定値が管理基準内で、後半区間だけに低下が見られる場合は、異常範囲を後半に絞れます。さらに後半区間に別の接続点があれば、同じ方法で細分化します。
区間ごとの比較では、ケーブル長の違いに注意します。長い区間は正常であっても、短い区間より低い絶縁抵抗を示すことがあります。単純に数値の大小だけを見るのではなく、長さ、構造、布設環境、測定条件を踏まえて判断します。同じ区間について接続状態を確認しながら再測定し、再現性を見ることも重要です。
接地箱や中間接続部を開放する際は、内部の水分、汚れ、腐食、接続端子の緩みも確認します。低い絶縁抵抗の原因がケーブル本体ではなく、接地箱内部の結露や導電性の堆積物である場合もあります。箱内を清掃して乾燥させ、再測定することで原因を切り分けます。
区間分割試験の利点は、大規模な掘削を行う前に損傷の可能性がある範囲を狭められる点です。数百メートルの回線全体を探索する場合と、数十メートルの区間まで絞り込んだ後に探索する場合では、作業時間と掘削範囲が大きく変わります。
一方で、接地線の復旧漏れには注意が必要です。試験のために切り離した接地線や保護装置を復旧し ないまま送電すると、金属遮へい層に危険な電位が発生する可能性があります。切り離した箇所を記録し、試験終了後は図面と現物を照合しながら、締付け状態を含めて復旧確認を行います。
区間分割試験は、独立した規格試験というより、既存の接続点を利用して異常範囲を切り分ける調査手順です。接地方式やボンディング設備の構成を理解したうえで、設備管理者の承認を得た試験回路を使用します。
試験方法4 ブリッジ法で損傷位置までの距離を推定する
ブリッジ法は、ケーブルの金属遮へい層、金属外被、健全な戻り回路などの抵抗を利用し、測定端から損傷位置までの距離を推定する方法です。損傷箇所が大地と電気的につながり、測定に必要な電流が流れる場合に利用されます。ケーブル故障位置の探索では、ブリッジ法、反射法、ステップ電圧法などが、故障状態とケーブル構成に応じて使い分けられます。CIGREのケーブル故障位置標定に関する技術資料でも、ブリッジ法、時間領域または周波数領域の反射法、ステップ電圧法などが代表的な方法として挙げられています。([CIGRE][2])
ブリッジ法では、健全な回路を戻り経路として使用し、測定した抵抗比または電圧降下から損傷位置を計算します。具体的な回路構成は、使用する測定器、ケーブルの接続状態、クロスボンドの有無によって異なります。誤った端子接続や不適切な戻り回路を使用すると、計算結果が成立しないため、測定器の取扱説明書と設備図面を照合します。
正確な位置を求めるには、ケーブルの全長と抵抗分布を把握する必要があります。図面上の地表ルート長ではなく、端末部の余長、中間接続部の処理長、立ち上がり部分、迂回部分を含む実際のケーブル長を用います。途中で金属遮へい層の断面積、材質、接続構成が変わる場合は、単純な比例計算ができません。
温度によって金属部分の抵抗が変わるため、通電停止直後の高温状態と十分に冷却された状態では測定結果が異なることがあります。測定時の温度条件を記録し、必要に応じて補正します。接続部の接触抵抗や長い接続リードの抵抗も誤差要因になります。
シース損傷の抵抗が高すぎる場合は、ブリッジ回路に十分な測定電流が流れず、数値が安定しないことがあります。複数の損傷箇所が存在する場合は、最も抵抗の低い箇所の影響を強く受け、別の損傷を見逃す可能性があります。一箇所を修理した後に再試験を行い、ほかの異常が残っていないか確認します。
測定結果は、ケーブルルート図上の距離に変換します。測定端からのケーブル長と地表上の水平距離は一致しません。マンホール内の余長や立ち上がり部分を考慮し、実際の布設経路に沿って位置を求めます。施工記録が不十分な場合は、埋設物探査や現地確認を併用し、推定範囲を広めに設定します。
ブリッジ法で得られる位置は、通常、掘削位置を直接一点に決定するための情報ではありません。詳細探索を行う範囲を絞るための事前標定として扱い、計算上の位置周辺でステップ電圧法などを実施して損傷点をさらに絞り込みます。
試験方法5 ステップ電圧法で地表から損傷点を探す
ステップ電圧法は、シース損傷部から大地へ流れる探索電流によって地表に生じる電位差を測定し、損傷位置を絞り込む方法です。特に、直接埋設されたケーブルなど、損傷部から周囲の土壌へ電流が流れる条件で利用されます。
試験では、ケーブルの金属遮へい層または金属外被と大地側との間に、専用装置から探索用の直流または低周波パルスを加えます。シースが貫通損傷し、金属層が土壌と電気的につながっている場合、損傷点から周囲の地中へ電流が広がります。地表に一定間隔で電極を設置して電位差を測定すると、損傷点への接近や通過に伴って指示の大きさや方向が変化します。
測定はケーブルルートに沿って進めます。最初は広い間隔で反応範囲を探し、指示が大きくなった場所では電極間隔を狭めて詳細に確認します。測定器の向きと電極間隔を一定にしないと、極性や指示値を比較できないため、測定方向を記録します。
ステップ電圧法は、シース損傷位置を地表から絞り込める点が利点です。ブリッジ法などでおおよその距離を求めた後に利用すると、不要な掘削を減らしやすくなります。外部シース故障の位置標定では、ブリッジ法による事前標定と、ステップ電圧法によるピンポイント標定を組み合わせる方法が広く用いられています。([Power and Cables][3])
ただし、地表条件によって測定感度が変わります。乾燥した砂質土、厚い舗装、鉄筋コンクリート、金属構造物、他の接地極、並行するケーブルなどがあると、電流の広がり方が変化します。舗装上では電極と地表の接触抵抗が高くなり、明確な指示が得られない場合があります。
降雨後は土壌の導電性が高まり、探索電流を検出しやすくなる場合がありますが、電流が広い範囲へ拡散し、損傷位置の境界が不明瞭になることもあります。測定値だけでなく、土壌状態、天候、舗装構造、周辺の接地設備を記録します。
管路内に布設されたケーブルでは、損傷部から土壌へ電流が直接流れない場合があります。管路が絶縁性材料で構成され、内部が乾燥していると、シース損傷があっても地表に明確な電位差が現れないことがあります。反対に、管路内に水がたまっている場合は、電流が水を通じて別の場所へ流れ、実際の損傷位置と地表反応がずれる可能性があります。
周囲に複数の接地点がある場合も注意が必要です。接地網、建築物の基礎、金属管路などへ電流が分流すると、損傷点以外で大きな電位差が測定されることがあります。推定位置が図面上のケーブルルートから大きく外れる場合は、接地回路や周辺構造物の影響を再確認します。
ステップ電圧法は、地表条件の影響を受けやすいものの、適切な条件では損傷点を細かく絞り込めます。単独で使用するより、区間分割試験やブリッジ法の結果と組み合わせることが重要です。
試験方法6 パルス反射法で不連続箇所を補助的に確認する
パルス反射法は、ケーブルへ短い電気パルスを送り、インピーダンスが変化する箇所から戻ってくる反射波を測定する方法です。反射波が戻るまでの時間とケーブル内の伝搬速度から、測定端から不連続箇所までの距離を推定します。
ケーブルが均一な状態であれば、送ったパルスは一定の特性インピーダンスを持つ経路を進みます。断線、短絡、接続部、分岐、著しい圧潰、金属層の腐食や断続などによってインピーダンスが変化すると、その位置で波の一部が反射します。波形の位置と形状を確認することで、既知の接続部や異常な不連続箇所の位置を把握できます。
ただし、外部シースに小さな穴があるだけで、金属遮へい層や測定回路のインピーダンスに十分な変化が生じていない場合、通常の低電圧パルス反射法では明確な反射波が得られないことがあります。高抵抗のシース故障は低電圧TDRでは見えにくいことがあるため、パルス反射法をシース損傷の有無を単独で判定する方法として扱うのは適切ではありません。([Megger][4])
パルス反射法が有効になりやすいのは、シース損傷に伴って金属遮へい層の変形、腐食、断線、低抵抗の地絡などが生じている場合です。また、専用の高電圧故障標定装置では、高抵抗故障を一時的な低抵抗状態として捉える別方式を組み合わせることがありますが、通常のTDR測定と同一ではありません。使用する方式と安全条件を区別する必要があります。
測定では、健全時の基準波形や同型回線の波形と比較します。中間接続部、端末部、分岐点などでも反射が発生するため、既知の構造による反射と異常反射を区別しなければなりません。ケーブルルート図と接続部の位置を波形上に対応させることで、誤判定を減らせます。
距離計算には伝搬速度の設定が必要です。伝搬速度はケーブルの構造や絶縁材料によって異なります。設定値が実際と異なると、表示される距離もずれます。全長が分かっているケーブルで終端反射の位置を確認し、伝搬速度を調整してから異常位置を測定すると精度を高められます。
長いケーブルではパルスが減衰し、遠方の反射波が小さくなることがあります。接続部が多い回線では反射波が複雑になり、複数の波形が重なります。測定範囲、パルス幅、感度を調整し、近距離と遠距離を分けて確認します。
パルス反射法で推定された距離も、実際のケーブルルートへ換算する必要があります。マンホール内の余長や端末への立ち上がりを考慮しないと、地表位置がずれます。施工時のケーブルドラム記録や接続位置の記録が残っていれば、距離換算の精度を高められます。
この方法は非破壊で繰り返し測定しやすく、過去波形との比較にも適しています。ただし、微小なシース損傷を直接検出する主試験ではなく、絶縁抵抗、直流シース耐電圧、ブリッジ法、ステップ電圧法などの結果を補完する方法として使用します。
試験結果を正 しく判定するための注意点
ケーブルシース試験では、測定値が基準内か基準外かだけで判定を終えないことが重要です。試験結果には、ケーブルの長さ、温度、湿度、土壌状態、端末部の汚れ、接地回路、測定器の状態など、さまざまな条件が影響します。
最初に確認したいのは、対象設備に適用される判定基準と過去の測定値です。同じ回線を同じ条件で定期的に測定していれば、絶縁抵抗や漏れ電流の変化を把握できます。絶対値が直ちに管理基準を外れていなくても、短期間に大きく変化している場合は原因を調査します。
同一設備内の類似回線との比較も有効です。ケーブル構造、長さ、布設環境、使用年数が近い回線を比較し、特定の回線だけに異常が見られるか確認します。ただし、長さ、接地方式、外被材料が異なる回線を単純比較してはいけません。
試験ごとの目的も区別します。絶縁抵抗測定と直流シース耐電圧・漏れ電流試験は、主に外部シースの電気的健全性を確認する方法です。区間分割試験、ブリッジ法、ステップ電圧法は、異常区間や位置を絞り込むために用います。パルス反射法は、インピーダンス不連続が生じている場合の補助的な事前標定に適します。
一つの測定方法で異常が確認されても、別の方法では明確な反応が得られないことがあります。例えば、絶縁抵抗が低くても、損傷部から土壌へ十分な探索電流が流れなければ、ステップ電圧法の反応は弱くなります。パルス反射法で異常が見えなくても、小さなシース穴が存在しないとは限りません。各方法の検出対象と限界を理解して結果を組み合わせます。
判定に迷う場合は、試験電圧を独自に高くするのではなく、回路構成、接地状態、表面汚損、測定器、測定手順を再確認します。必要であれば別の測定方法を追加し、複数の結果が整合するかを確認します。
測定器の校正期限、出力電圧の表示、電流測定範囲、リード線の絶縁状態も確認します。高抵抗測定では、測定器本体やリード線の汚損が 測定結果に影響することがあります。試験前の自己診断や既知抵抗による確認が手順に定められている場合は省略しません。
ケーブルシースが損傷する主な原因
ケーブルシース損傷の原因として多いのは、布設時の機械的な外力です。ケーブルを管路へ引き込む際に許容張力を超えたり、曲がり部で側圧が集中したりすると、外部シースに擦れや圧痕が生じることがあります。管路口の角、異物、損傷したローラーなども傷の原因になります。
ケーブルラック上では、支持金具との接触部や曲がり部に損傷が生じることがあります。固定が不十分な場合は、負荷変動、短絡時の電磁力、設備振動などによってケーブルが動き、長期間の摩擦でシースが薄くなる可能性があります。金属製の支持材へ直接接触している部分は重点的な確認が必要です。
地中埋設ケーブルでは、後施工の掘削作業による損傷が大きなリスクです。重機のバケットや手工具がケーブルに直接接触しなくても、近くの地盤を強く押したり、管路を変形させたりすることでケーブルへ外力が加わることがあります。
埋戻し材に鋭利な石やコンクリート片が混入している場合も、長期間の土圧や車両荷重によってシースが損傷する可能性があります。施工直後には問題がなくても、地盤沈下や繰り返し荷重によって異物が徐々に食い込むことがあります。
端末部や接続部では、シース処理時の工具傷に注意します。外部シースを剥ぐ際に刃を深く入れすぎると、残すべき部分や下層の金属遮へい層まで傷つける可能性があります。施工時に生じた浅い傷が、温度変化や曲げ応力によって拡大することもあります。
紫外線、熱、油、薬品などの環境条件もシース材料の劣化に影響します。屋外で日射を受ける部分、排熱源に近い部分、油や薬品が付着する場所では、硬化、軟化、膨潤、亀裂などが発生していないか確認します。材料によって耐性が異なるため、変色や硬化 だけで原因を断定せず、使用環境と材料仕様を照合します。
動物によるかじり、火災時の熱、溶接火花、落下物、ケーブル上への重量物の載置なども損傷原因になります。試験で異常を検出した際は、損傷箇所を修理するだけでなく、周辺環境と施工状態を調査し、原因を特定することが再発防止につながります。
発見後の対応と再発防止
試験でシース損傷が疑われた場合は、損傷の程度、場所、ケーブルの重要度、運転状態を踏まえて対応を決めます。絶縁抵抗が低いという理由だけで、直ちにケーブル全体の交換が必要になるとは限りません。一方で、主絶縁への水分侵入や金属遮へい層の腐食が疑われる場合は、外部シースだけの補修で十分かを慎重に判断します。
損傷位置を特定した後は、掘削やケーブル露出作業を安全に計画します。図面上の位置と現地の埋設位置にずれがある可能性を考慮し、周囲の埋設物を確認しながら作業します。試験結果には一定の誤差があるため、推定位置の一点だけを強く掘削するのではなく、試掘、非破壊探査、手掘りなどを組み合わせて段階的に確認します。
損傷部を露出したら、傷の大きさだけでなく、変色、膨れ、水分、腐食生成物、金属遮へい層の状態を確認します。損傷部分を清掃したときに水分が内部から出てくる場合は、シース内部へ水分が広がっている可能性があります。必要に応じて製造者や専門業者へ評価を依頼します。
補修方法はケーブル構造と損傷状態に適合するものを選定します。表面だけの浅い擦り傷と、金属遮へい層まで達した穴では必要な処置が異なります。補修部には、必要な絶縁性能だけでなく、防水性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性など、設置環境に応じた性能が求められます。
補修材や工法は、ケーブル製造者の指示、設備管理者の標準、適用規格に従います。一般的なテープ巻きや樹脂充填だけで恒久補修になるとは限りません。損傷範囲、外被 材料、接地方式、将来の熱伸縮を考慮し、承認された補修方法を使用します。
補修後は、施工部分の外観だけで完了とせず、絶縁抵抗測定や適用可能な直流シース耐電圧・漏れ電流試験を再度実施します。試験区間全体が管理基準を満たすことを確認し、別の損傷箇所が残っていないか調べます。複数箇所が損傷している場合、一箇所の補修後に測定値が改善しても、完全に正常化しないことがあります。
再発防止では、損傷原因に対応した対策を行います。管路口で擦れていた場合は保護部材や引込方法を見直し、ラック支持部で摩耗していた場合は支持間隔、固定方法、接触面を改善します。掘削作業が原因だった場合は、埋設位置の表示、工事前照会、現地マーキング、立会い手順を見直します。
新設ケーブルでは、布設前、布設後、接続施工後の各段階で試験結果を残しておくと、損傷が発生した工程を特定しやすくなります。布設前は正常で布設後に異常が現れた場合、引込工程を重点的に調査できます。布設後は正常で接続施工後 に異常が現れた場合は、端末や接続部の処理を確認できます。
試験記録を配電設備の保全に活用する方法
ケーブルシース試験の記録は、合否だけを残すのではなく、後から同じ条件で比較できる形にすることが重要です。記録には、設備名、回線名、ケーブル区間、始端と終端、ケーブル構造、長さ、接地方式、試験日時、天候、温度、湿度、測定電圧、印加時間、測定値を含めます。
接地線や保護装置を切り離した場合は、切り離し箇所と復旧確認も記録します。試験回路の写真を残しておけば、次回点検時に同じ構成を再現しやすくなります。接地箱内部の端子配置や接続状態は外観だけでは分かりにくいため、図面と写真を対応させて管理します。
位置探索を行った場合は、測定端からの推定距離だけでなく、ケーブルルート上の位置、現地座標、周辺構造物との関係、推定誤差の範囲を記録します。測定距離のみでは、マンホール内の余長や立ち上がりを考慮できず、後日同じ場所を特定できないことがあります。
損傷箇所を補修した場合は、露出時の状態、損傷寸法、損傷方向、周辺の水分、腐食の有無、推定原因、補修範囲、使用材料、補修後の試験結果を一連の記録として残します。同じ原因による損傷が別区間でも発生する可能性があるため、類似する施工条件の場所を抽出して追加点検へつなげます。
配電設備の保全では、試験記録を時系列で比較することが重要です。紙の帳票や個別の写真だけで管理すると、過去値と現在値の対応に時間がかかり、損傷位置と現場写真の関係も分かりにくくなります。
現場写真に位置情報と撮影方向を関連付け、地図上で試験箇所や補修箇所を確認できるようにすると、次回点検や掘削工事前の確認を効率化できます。ただし、位置情報だけでケーブルの正確な深さや安全な掘削範囲を決定してはいけません。竣工図、埋設物探査、試掘、現地確認を組み合わせて判断します。
測定結果、現場写真、位置情報、補修履歴を一つの設備台帳へ集約すれば、異常傾向の把握や点検優先順位の検討にも利用できます。単発の試験結果を保存するだけでなく、配電設備の保全計画へ反映できる記録にすることが大切です。
まとめ
配電設備のケーブルシース損傷を発見するには、絶縁抵抗測定、直流シース耐電圧・漏れ電流試験、区間分割試験、ブリッジ法、ステップ電圧法、パルス反射法を、調査の段階と損傷状態に合わせて使い分けることが重要です。
絶縁抵抗測定と直流シース耐電圧・漏れ電流試験では、主に外部シースの電気的健全性を確認します。異常が確認された後は、区間分割試験で対象区間を狭め、ブリッジ法で測定端からの距離を推定します。直接埋設区間など、損傷部から土壌へ探索電流が流れる条件では、ステップ電圧法によって地表から損傷点を詳細に探索でき ます。
パルス反射法は、金属層の断線、著しい変形、低抵抗故障など、インピーダンス不連続が生じている場合の補助的な位置推定に適します。小さな外部シース穴や高抵抗故障は通常の低電圧TDRで見えないことがあるため、反射波に異常がないことだけでシース損傷なしと判断してはいけません。
どの試験にも適用条件と限界があります。一つの数値だけで損傷の有無や位置を断定せず、ケーブル構造、接地方式、布設環境、過去の測定値、複数の試験結果を組み合わせて判断します。
試験前には対象回線を確実に停止し、系統からの切り離し、無電圧確認、放電、接地、作業区画の設定を行います。試験のために切り離した接地線や保護装置は、送電前に確実に復旧します。試験電圧や印加時間は対象ケーブルの仕様と設備管理者の手順に従い、現場判断で変更しないことが重要です。
シース損傷を発見した後は、補修だけでなく、布設時の擦れ、支持部の摩耗、掘削工事、異物、熱、薬品などの原因を調べます。原因に対応した再発防止策を実施し、補修後の再試験によって区間全体の健全性を確認します。
さらに、試験値、現場写真、接地状態、損傷位置、補修履歴を継続的に記録することで、配電設備の予防保全につなげられます。ケーブルルートや点検位置を現場で分かりやすく記録し、設備台帳へ反映する仕組みを整える際は、LRTK Phoneの活用も検討できます。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
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