目次
• 配電設備の盤内でカビが発生する仕組み
• カビを放置したときに生じる配電設備への影響
• 環境改善 前に確認したい盤内の状態
• 改善策1 温度と湿度を継続的に把握する
• 改善策2 盤内外の温度差を抑えて結露を防ぐ
• 改善策3 換気方式と空気の流れを見直す
• 改善策4 除湿と排水によって水分を滞留させない
• 改善策5 雨水と湿った外気の侵入経路を塞ぐ
• 改善策6 清掃と点検によってカビの栄養源を減らす
• 環境改善策を実施するときの安全上の注意
• 再発を防ぐための点検周期と記録方法
• 配電設備の盤内カビ対策は原因別に進める
配電設備の盤内でカビが発生する仕組み
配電設備の盤内にカビが見つかった場合、単に盤が汚れているだけだと判断するのは適切ではありません。カビの発生は、盤内または盤周辺で高湿度、結露、水分の侵入、ほこりの堆積などが継続している可能性を示す環境上のサインです。カビだけを拭き取っても、発生条件が残っていれば再び増殖するおそれがあります。
カビの胞子は屋内外の空気中に広く存在しており、盤内への侵入を完全になくすことは困難です。ただし、胞子が盤内に入っただけで直ちに目立つカビが発生するわけではありません。増殖には一定量の水分が必要であり、さらにほこり、繊維くず、油分、虫の死骸、木質材料、紙製の表示物などが栄養源として関係します。
特に注意したいのが結露です。空気が保持できる水蒸気量は温度によって変化します。湿った空気が冷たい盤面、金属部 品、端子台、電線表面などに触れ、その表面温度が露点温度を下回ると、水蒸気が水滴になります。盤の外側に結露が見えなくても、内部の底部、扉の裏側、ケーブル引込部、冷えやすい側板などで局所的に結露していることがあります。
昼夜の温度差が大きい場所では、日中に暖かく湿った空気が盤内へ入り、夜間や早朝の温度低下によって結露する場合があります。空調された室内でも、空調の運転停止後に室温が変化したり、冷気が盤の一部に直接当たったりすると、盤内に温度差が生じます。屋外盤では、日射で盤内温度が上昇した後、降雨や夜間の冷え込みによって急激に温度が下がることもあります。
地下室、機械室、ポンプ室、水処理施設、海岸に近い場所、山間部、トンネル内、半地下の設備室などでは、周囲の湿度が高くなりやすいため、盤の密閉性だけでは十分な対策にならない場合があります。反対に、換気を増やせば必ず改善するとも限りません。湿った外気を大量に取り込むと、盤内の絶対的な水分量が増え、かえって結露しやすくなることがあるためです。
したがって、配電設備の盤内カビ対策では、発生部分の除去だけでなく、温度、湿度、露点、換気、雨水侵入、排水、清掃状態を一体として確認する必要があります。原因を特定せずに除湿材や換気扇を追加しても、十分な効果が得られない可能性があります。
カビを放置したときに生じる配電設備への影響
盤内にカビが発生したからといって、直ちに配電設備が故障するとは限りません。しかし、カビが生育できるほど湿った環境が続いていること自体が、電気機器にとって好ましくない状態です。カビだけを危険要因として見るのではなく、湿気、結露、汚損、腐食が同時に進行していないかを確認することが重要です。
湿気とほこりが端子台、碍子、絶縁支持物、基板、リレー、配線表面などに付着すると、表面の絶縁性能が低下する可能性があります。さらに、塩分、金属粉、油煙、薬品成分などを含む汚れが重なると、漏れ電流や表面放電が生じやすい条件になることがあります。変色やカビが見える部分だけでなく、その周囲に筋状の汚れ、炭化痕、白い析出物、緑青、赤さびなどがないかも確認が必要です。
端子や金属部品では、湿気の継続によって腐食が進む場合があります。腐食した接続部は接触抵抗が増加し、通電時の温度上昇につながる可能性があります。ただし、外観だけで接触不良と断定することはできません。変色、発熱痕、締結状態、負荷電流、温度履歴などを組み合わせて判断しなければなりません。
電子機器を内蔵する盤では、基板上のほこりや湿気が動作不安定の一因になることがあります。表示部の曇り、操作スイッチの動作不良、通信異常、警報の断続的な発生などが見られる場合は、電源や配線だけでなく、盤内環境も調査対象に含めます。湿気が原因に見えても、実際には経年劣化、振動、端子の緩み、電源品質など別の要因が重なっている可能性があります。
紙製の回路図、管理票、ラベルなどにカビが広がると、文字が読みにくくなったり、剥離した紙片が盤内へ落下したりすることがあります。吸湿した紙や粘着材が金属面に長期間接触すると、 汚れや腐食を助長する場合もあります。盤内に必要な資料を保管するときは、配置場所と保管方法を見直す必要があります。
カビの臭いが設備室全体で感じられる場合は、盤内だけでなく、壁面、床下、配管貫通部、空調設備、排水溝などに水分が滞留している可能性があります。盤だけを清掃しても、周辺環境から湿った空気が供給され続ければ再発します。配電設備の保全担当者だけで解決しにくい場合は、建築、空調、衛生、設備管理の担当者と原因を共有することが重要です。
環境改善前に確認したい盤内の状態
環境改善を始める前に、カビがどこに、どの程度、どのような形で発生しているかを記録します。扉の裏側だけに発生しているのか、盤底部に集中しているのか、盤全体に広がっているのかによって、疑うべき原因が異なります。
盤底部やケーブル引込部の周辺に集中している場合は、床面からの湿気、排水不良、ケーブル管路からの湿った空気、水の浸入などが考えられます。扉周辺や側板の合わせ目に発生している場合は、パッキンの劣化、扉の変形、固定部の緩みなどを確認します。冷たい壁側の側板だけに発生している場合は、壁面との温度差や空気の滞留が関係している可能性があります。
盤内の上部と下部でも状態が異なることがあります。湿った空気が盤内に侵入し、冷たい底部で結露している場合は、底部に水滴やさびが見られます。一方、屋根部や上部の貫通部から雨水が入っている場合は、上から下へ流れた跡や、機器上面の水染みが残ることがあります。単にカビの位置だけでなく、水が移動した痕跡を追うことが大切です。
確認時には、カビの色や面積だけで危険度を決めないようにします。白色、黒色、緑色などの外観から種類や健康影響を正確に判断することは困難です。広範囲に発生している場合、刺激臭が強い場合、清掃作業者の健康への影響が懸念される場合は、施設の衛生管理手順に従って対応します。
また、カビの周囲に水滴、さび、腐食生成物、端子の変色、絶縁物の変形、ひび割れ、膨れ、剥離などがないかを確認します。電気的な異常が疑われる場合は、外観清掃だけで復旧させず、必要な試験や測定を実施します。絶縁抵抗測定などを行う際は、接続されている電子機器や回路構成を確認し、製造者の取扱条件と設備管理手順に従う必要があります。
環境改善策を選ぶためには、盤内だけでなく盤外の確認も欠かせません。設備室の温湿度、空調の運転時間、外気導入の状態、床や壁の湿り、排水溝、給排水配管、蒸気配管、扉の開放時間、周囲で行われている洗浄作業などを調べます。カビが発生した時期と、季節、降雨、空調停止、設備改修などの出来事を照合すると、原因を絞り込みやすくなります。
改善策1 温度と湿度を継続的に把握する
盤内カビ対策の第一歩は、温度と湿度を感覚ではなく記録で把握することです。点検時に一度だけ湿度を測って正常だったとしても、夜間、早朝、雨天時、空調停止時に高湿度になっている可能性があります。カビや結露は、 担当者が現場にいない時間帯に発生していることも少なくありません。
測定では、盤内温度、盤内湿度、設備室の温度、設備室の湿度を比較します。可能であれば、盤の上部、中央部、底部など複数位置の差も確認します。盤内の平均的な湿度が低く見えても、底部や冷たい側板付近だけが高湿度になっている場合があるためです。
温度と相対湿度から露点の傾向を把握し、盤内の金属面が露点に近づく時間帯を探します。表面温度が測定できる場合は、側板、扉、盤底、端子周辺などを比較します。ただし、通電中の盤内測定には感電やアーク発生の危険があります。測定器の設置や回収は、設備の状態と作業資格を確認し、安全な手順で実施しなければなりません。
記録期間は、通常時だけでなく、カビが発生しやすい条件を含めることが重要です。梅雨時期、長雨、冬季の冷え込み、空調停止日、設備停止期間など、環境変動が大きい時期のデータが原因究明に役立ちます。屋外盤では、日射の有無や扉の方角によっても温度変化が異な ります。
測定結果は、単純な最高湿度だけで評価しないようにします。高湿度の継続時間、温度低下の速さ、盤内外の温度差、降雨や空調運転との関係を確認します。短時間の変化と長時間の湿潤状態では、必要な対策が異なるためです。
温湿度の記録があれば、対策前後の効果も比較できます。換気を追加した後に湿度が下がったのか、逆に雨天時だけ上昇したのかを確認できるため、対策の有効性を判断しやすくなります。感覚的に「乾いたように見える」と判断するのではなく、同じ位置、同じ条件、同じ評価方法で比較することが重要です。
改善策2 盤内外の温度差を抑えて結露を防ぐ
カビの原因となる水分を減らすには、盤内の表面温度が露点を下回らない環境をつくる必要があります。そのための基本は、急激な温度変化と局所的な冷却を避けることです。
盤の側面に空調の冷気が直接当たっている場合、盤内空気が比較的暖かくても、冷やされた側板の内面で結露することがあります。吹出口の向き、風量、盤との距離を確認し、冷気が一部分に集中しないように調整します。ただし、空調の変更は室内全体の温度管理や他設備にも影響するため、設備管理担当者と調整して進めます。
屋外盤や非空調室では、盤内用の加温機器によって結露を抑える方法があります。加温の目的は盤内を高温にすることではなく、盤内表面を露点よりわずかに高い状態に保ち、湿った空気が水滴になるのを防ぐことです。容量が過大であると、電子機器や電線の周囲温度が上昇し、機器寿命に影響する可能性があります。盤の容積、放熱条件、外気温、内蔵機器の発熱量などを踏まえて選定します。
加温機器を設ける場合は、盤内の空気が適切に循環する配置にします。熱源の近くだけが高温になり、盤底や扉裏が冷たいままでは、局所結露を十分に防げません。盤内の配線、端子、樹脂部品との離隔を確保し、熱が一部に集中しないようにし ます。
温度差対策として断熱を検討する場合もありますが、断熱材の追加には注意が必要です。材料によっては吸湿しやすく、内部に水分を保持する可能性があります。また、難燃性、耐熱性、経年劣化、接着剤の影響なども確認しなければなりません。既存盤に独自の材料を貼り付けるのではなく、設備条件に適合した方法を選びます。
扉を頻繁に開放する運用も盤内温度を乱す原因になります。点検や操作のために長時間開放すると、湿った空気が入り込み、扉を閉めた後の温度低下で結露することがあります。作業前に必要な資料や工具を準備し、不要な開放時間を減らします。ただし、安全確認や作業品質を犠牲にして作業を急ぐことは避けなければなりません。
設備停止中にカビが増える場合は、停止によって機器の自己発熱がなくなり、盤内温度が周囲温度まで低下している可能性があります。運転中は問題がなくても、長期停止時だけ結露する設備もあります。通常運転時と停止時を分けて環境条件を評価し、必要に応じて停止 期間用の対策を検討します。
改善策3 換気方式と空気の流れを見直す
盤内換気は、熱と湿気を排出するために有効な場合があります。ただし、周囲の空気が乾燥していることが前提です。外気や設備室内の空気が盤内より湿っている場合、換気量を増やすほど盤内へ水分を取り込む可能性があります。
換気を検討するときは、盤内温湿度と盤外温湿度を同時に確認します。盤内の発熱によって湿度が一時的に低く見えていても、運転停止後に取り込んだ湿気が結露する場合があります。通電時だけでなく停止時の状態も確認することが重要です。
自然換気を利用する盤では、吸気口と排気口の位置、開口面積、内部機器による通風の遮りを確認します。吸気口と排気口が近すぎると、空気が盤全体を流れず、特定の経路だけを通過することがあります。盤底や扉裏などに空気が滞留している場合は、 内部配置も含めて見直します。
強制換気を行う場合は、給気と排気のバランスが重要です。盤内を負圧にすると、扉の隙間、ケーブル引込部、継ぎ目などから未処理の湿った空気や粉じんを吸い込むことがあります。反対に、適切にろ過した空気を供給してわずかに正圧を保つ方法が有効な環境もありますが、盤の構造や要求される保護性能との整合を確認する必要があります。
吸気フィルターが目詰まりすると、設計した風量が得られず、盤内の一部に熱や湿気がこもります。目詰まりしたフィルターを放置したまま換気装置だけを運転しても、十分な改善にはつながりません。交換や清掃の周期は、周囲の粉じん量、油煙、繊維くず、虫の侵入状況などを踏まえて設定します。
屋外盤では、換気口から雨水が吹き込まない構造が必要です。雨よけがあっても、強風を伴う雨、跳ね返り、周囲の洗浄水などが侵入することがあります。換気口の向き、設置高さ、周囲の障害物を確認し、雨天後に内部へ水滴が入っていないかを点検します。
換気装置の追加によって盤内温度が下がると、状況によっては露点に近づくことがあります。温度だけが下がり、水分量が十分に減らなければ結露リスクが残ります。換気後は温度、湿度、露点の関係を再評価し、実際に結露が減ったかを確認することが必要です。
改善策4 除湿と排水によって水分を滞留させない
盤内に湿気が入りやすい環境では、除湿によって空気中の水分を減らす方法が考えられます。ただし、除湿材を置くだけで問題が解決するとは限りません。水の侵入量が多い場合や、盤の隙間から湿った空気が継続的に入る場合は、除湿能力を超えてしまいます。
吸湿材を使用するときは、吸湿量、交換時期、使用温度、設置スペースを確認します。吸湿したまま長期間放置すると、十分な効果が得られなくなります。液化した水分を容器にためる方式では、転倒、漏れ、あふれによって盤 内へ水が流出しないように注意が必要です。
再生可能な除湿材を使う場合も、再生条件と交換履歴を管理します。見た目だけでは吸湿能力の低下を判断しにくい場合があります。点検時に設置日、交換日、状態を記録し、忘れずに更新できる仕組みをつくります。
盤内用の除湿機器を設ける場合は、発生した水分をどのように処理するかが重要です。水分を盤外へ排出する方式では、排水経路の詰まり、逆流、凍結、虫の侵入などを確認します。排水管の先端が水たまりや排水溝の中に入り、湿気が逆流することもあるため、出口の位置まで点検します。
盤底に水がたまっている場合は、除湿よりも先に浸入経路と排水不良を解消する必要があります。水抜き穴が設けられていても、塗装、シール材、泥、虫の巣などで塞がれていることがあります。ただし、盤へ独自に穴を開けると、保護性能や構造強度を損なう可能性があります。改造の可否は盤の仕様と管理基準を確認したうえで判断します。
ケーブル管路から湿った空気や水が上がってくる場合は、管路側の排水状態も確認します。盤底だけを乾燥させても、管路内に水が残っていれば再発する可能性があります。地下ピット、ハンドホール、配管勾配、止水処理など、盤より上流側の設備も調査対象に含めます。
除湿対策の効果は、盤内の見た目だけでなく温湿度の記録で確認します。除湿材の交換直後だけ湿度が下がり、数日で元に戻る場合は、侵入水分が多すぎる可能性があります。その場合は、除湿能力を増やす前に、外気侵入や漏水の原因を見直すことが重要です。
改善策5 雨水と湿った外気の侵入経路を塞ぐ
屋外盤や湿気の多い設備室では、扉、天井、側板、ケーブル引込部などのわずかな隙間から水分が入ることがあります。目立つ漏水がなくても、湿った空気が継続的に侵入すれば、盤内で結露やカビが発生する可能性があります。
まず確認したいのが扉のパッキンです。パッキンが硬化、ひび割れ、変形、剥離していると、扉を閉めても十分に密着しません。盤の角部や蝶番側は見落とされやすいため、全周を確認します。扉の固定金具が緩んでいる場合や、扉自体が変形している場合も、均一な圧着が得られません。
盤上部には、屋根、接合部、表示灯、配線貫通部など複数の浸入候補があります。水は小さな隙間から入り、配線や部品を伝って離れた場所まで移動することがあります。水滴が見つかった位置の真上だけでなく、水が伝わった経路を広い範囲で調べます。
ケーブルグランドや引込口では、使用していない開口部の閉塞状態、部品の緩み、シール材の割れなどを確認します。複数のケーブルを一つの開口部へ無理に通した場合、隙間が生じやすくなります。ケーブル外径と部品の適合、締付状態、経年劣化を確認します。
盤底部から湿った空気が入っている場合は、ケーブル貫通部の止水だけでなく、床下やピットの状態も確認します。床下に水が滞留していれば、盤内への水分供給が続きます。ピット内の排水ポンプ、排水口、ふた、換気状態などを点検し、建築設備側の改善も検討します。
設備室内で高圧洗浄や水洗いを行っている場合は、盤へ直接水が当たっていなくても、霧状の水分が侵入することがあります。清掃手順、洗浄時間、盤周辺の養生、洗浄後の換気方法を見直します。蒸気や温水を使用する作業では、室内の湿度が急激に上昇することもあります。
密閉性を高める際は、盤内の発熱を考慮しなければなりません。すべての隙間を塞ぐことで放熱が不足すると、機器温度が上昇する可能性があります。侵入防止と温度管理を別々に考えず、盤内の発熱量、換気、冷却、保護性能をまとめて評価します。
シール材やパッキンを補修する場合は、使用環境に適合した材料を選びます。耐候性、耐熱性、難燃性、耐油性、耐薬品 性などの条件が合わない材料は、早期に劣化する可能性があります。仮補修を恒久対策として放置せず、補修日と次回確認日を記録しておくことが重要です。
改善策6 清掃と点検によってカビの栄養源を減らす
温度と湿度を改善しても、盤内にほこりや有機物が大量に残っていると、カビが再発しやすい状態が続きます。定期的な清掃によって、カビの胞子と栄養源になり得る汚れを減らすことが重要です。
清掃前には、カビが発生した範囲と電気機器の状態を確認します。通電したまま水分を含む清掃材を使用したり、盤内へ薬剤を噴霧したりすることは避けなければなりません。清掃方法は、停電の可否、内蔵機器、絶縁材料、表面処理、施設の衛生管理手順を踏まえて決定します。
カビが見える部分だけを強くこすると、胞子やほこりが周囲へ飛散する場合があります。吸引や拭き取りを行う 場合は、周辺の機器へ汚れを広げない順序で作業します。盤底に落ちた異物も回収し、配線の裏側や端子台の下部など、見えにくい部分に残っていないかを確認します。
清掃剤を使用する場合は、電気機器や樹脂材料への影響を確認します。水分、塩分、油分、導電性の残留物が表面に残ると、別の不具合を招く可能性があります。強い薬剤を安易に使用せず、設備管理手順と対象部品の取扱条件に適合した方法を選びます。
盤内に不要な紙、段ボール片、布、木片、粘着テープの切れ端などを残さないことも大切です。これらは吸湿しやすく、カビの発生箇所になる場合があります。回路図や点検資料を盤内に保管する必要がある場合は、湿気の影響を受けにくい方法と配置を検討します。
虫や小動物の侵入も盤内汚損の原因になります。虫の死骸、巣、排せつ物などは、湿気と組み合わさることでカビや腐食の発生を助長する可能性があります。換気口の防虫構造、開口部の隙間、扉の閉鎖状態を確認します。ただし、防虫網を細かくしす ぎると換気抵抗が増えるため、通風との両立が必要です。
清掃後は、端子や配線を不用意に動かしていないか、表示が剥がれていないか、工具や清掃材が残っていないかを確認します。停電して作業した場合は、復旧手順に従って状態を確認し、必要な試験を行います。
カビが繰り返し同じ場所に発生する場合は、清掃不足ではなく、その位置だけ温度が低い、空気が滞留する、水が伝わってくるなどの原因が残っている可能性があります。再発位置を図面や写真に残し、環境測定結果と照合することで、対策の優先順位を判断しやすくなります。
環境改善策を実施するときの安全上の注意
配電設備の盤内には、感電、短絡、アーク、誤操作などの危険があります。カビの確認や清掃を理由に、必要な資格や手順を省略してはいけません。扉を開けるだけでも充電部へ接近する可能性があるため、設備の電圧、構造、作業範囲を事前に確認します。
盤内へ測定器を設置する場合は、測定器や配線が充電部、可動部、放熱部に接触しないようにします。扉に配線を挟み込む方法は、密閉性を損なうだけでなく、配線損傷の原因にもなります。長期測定を行う場合は、盤の開閉や保護性能に影響しない方法を選びます。
停電して清掃や補修を行う場合は、電源を遮断しただけで作業を開始せず、設備管理手順に従って無電圧を確認します。複数電源、制御電源、逆送電、蓄電要素などが存在する場合もあります。関連回路を確認し、誤投入を防止したうえで作業します。
水分を含む清掃材、液体の除湿剤、薬剤などを盤内で扱う場合は、こぼれや残留に注意します。通電部の近くへ液体を持ち込むこと自体が危険となる設備では、別の方法を選ぶ必要があります。作業後に目視で乾いていても、部品の隙間や配線の下に水分が残っている可能性があります。
カビが広範囲に発生している場合は、作業者の健康管理にも配慮します。飛散を抑える作業方法、適切な保護具、廃棄物の処理、作業場所の換気などを施設の衛生管理基準に従って決めます。健康影響が疑われる場合は、電気保全だけで判断せず、施設管理や安全衛生の担当者と連携します。
盤の加工、換気装置の追加、加温機器の設置、パッキンの変更などは、盤の保護性能、放熱性能、絶縁距離、難燃性に影響する可能性があります。現場判断だけで穴あけや部品追加を行わず、設計条件と設備管理基準を確認したうえで実施します。
再発を防ぐための点検周期と記録方法
盤内カビ対策は、一度清掃して終了する作業ではありません。環境条件は季節、天候、空調運用、設備負荷、周辺工事などによって変化します。改善後も一定期間は状態を確認し、カビや結露が再発していないかを追跡する必要があります。
点検周期は、設備の重要度、設置環境、過去の発生状況に応じて設定します。雨天後、梅雨時期、長期停止後、空調停止後など、カビが発生しやすい条件の直後に確認すると、通常点検では見つけにくい異常を把握できます。
記録には、点検日時、天候、設備の運転状態、空調の状態、盤内外の温度と湿度、カビの発生位置、結露の有無、水の侵入痕、腐食の状態などを残します。清掃や部品交換を行った場合は、作業内容、使用した材料、交換箇所、担当者、次回確認時期も記録します。
写真を残す場合は、毎回できるだけ同じ方向と距離から撮影します。盤全体、カビの発生位置、周囲の部品が分かる写真を組み合わせると、拡大や縮小の傾向を比較しやすくなります。部分写真だけでは位置関係が分かりにくいため、盤番号や区画が確認できる写真も残します。
複数の盤で同様のカビが発生している場合は、個別管 理だけでなく設置場所ごとの傾向を整理します。同じ設備室の盤に集中している場合は、空調や建物側の湿気が原因である可能性があります。同型盤の一部だけに発生している場合は、設置方向、負荷、ケーブル引込方法、扉の状態などを比較します。
対策の有効性は、カビが消えたかどうかだけで評価しません。高湿度の継続時間が短くなったか、結露が発生しなくなったか、腐食の進行が止まっているか、フィルターや除湿材の交換周期が適切かなどを確認します。
一つの対策で改善しない場合は、複数の原因が重なっている可能性があります。例えば、パッキンを交換して雨水侵入を減らしても、床下から湿気が上がっていれば盤底のカビは再発します。対策前後の記録を比較し、残っている原因を段階的に絞り込みます。
配電設備の盤内カビ対策は原因別に進める
配電設備の盤内カビは、温湿度、結露、換気、雨水侵入、排水不良、汚れの堆積などが単独または複合して発生します。目に見えるカビだけを除去しても、盤内に水分が供給される条件が残っていれば、再発を抑えることは困難です。
環境改善では、最初に盤内外の温度と湿度を記録し、結露が生じる時間帯や位置を把握します。そのうえで、温度差の緩和、換気方式の適正化、除湿と排水、侵入経路の補修、清掃と点検を組み合わせます。すべての盤に同じ対策を適用するのではなく、発生原因と設置条件に合わせて選ぶことが重要です。
また、カビがある環境では、絶縁物の汚損、金属部品の腐食、端子部の変色などが同時に進んでいる可能性があります。カビが見つかった場所だけでなく、周辺の電気的、機械的な状態も確認し、異常が疑われる場合は必要な試験や補修を行います。
屋外や広い事業所に配電設備が分散している場合は、盤番号だけでなく設置位置、周辺環境、写真、温湿度記録、補修履歴を結び付けて管理すると、再発傾向を把握しやすくなり ます。どの場所で、どの季節に、どのようなカビや結露が発生したかを位置情報とともに残すことで、類似環境にある未発生盤の予防点検にも活用できます。
現場の位置情報と写真を関連付けて記録する運用を整えたい場合は、高精度な位置情報を取得できるLRTK Phoneを活用する方法があります。配電設備の設置位置や点検箇所を現場記録と結び付け、カビ、結露、漏水、腐食などの状態を継続して比較することで、環境改善策の実施状況と再発傾向を管理しやすくなります。
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