top of page

配電設備の蓄電池劣化を早期発見する5つの測定項目

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均7分45秒で読めます
​
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

• 配電設備で蓄電池の劣化を早期発見する重要性

• 蓄電池を測定する前に確認しておくこと

• 測定項目1 総電圧とセル電圧

• 測定項目2 内部抵抗またはコンダクタンス

• 測定項目3 容量と放電特性

• 測定項目4 充電電流と交流リップル

• 測定項目5 電解液の比重と温度

• 測定値から劣化を判断する際の注意点

• 測定記録を設備保全に生かす方法

• 異常を発見したときの対応手順

• 配電設備の蓄電池点検を効率化するポイント

• まとめ


配電設備で蓄電池の劣化を早期発見する重要性

配電設備に設置されている蓄電池は、停電や電源系統の異常が発生したときに、遮断器の操作、保護装置の動作、監視回路、表示回路、警報回路などへ直流電源を供給する重要な設備です。通常時には目立った動作をしない場合でも、事故や停電が起きた瞬間には確実に機能しなければなりません。


蓄電池の劣化が進行すると、平常時の端子電圧が正常に見えていても、実際に負荷を接続したときに電圧が急激に低下することがあります。そのため、外観確認や電圧測定だけで健全性を判断すると、必要な放電能力を失った蓄電池を見逃すおそれがあります。


配電設備の蓄電池には、常時充電された状態で待機する運用が多く見られます。このような運用では、充電装置から電圧が加わっているため、劣化したセルや単電池であっても、測定時の電圧だけは一定範囲に保たれる場合があります。しかし、内部の活物質の劣化、極板の腐食、電解液の減少、内部短絡、端子部の接触不良などが進行すると、停電時に必要な電流を供給できなくなります。


蓄電池の寿命は、種類、設置環境、使用温度、放電回数、放電深度、充電条件、保守状態によって異なります。一般的な交換目安だけで一律に判断するのではなく、各設備の仕様と測定履歴を確認しながら状態を評価することが重要です。


特に注意したいのが温度です。蓄電池は高温環境に置かれると、化学反応や材料劣化が進みやすくなる傾向があります。一方、低温環境では一時的に放電能力が低下することがあります。したがって、測定値を確認するときは、測定時の周囲温度や蓄電池温度も合わせて記録しなければ、適切な比較ができません。


蓄電池の早期劣化を発見するためには、単発の測定結果だけでなく、複数の項目を組み合わせて判断する必要があります。本記事では、実務担当者が重点的に確認したい測定項目として、総電圧とセル電圧、内部抵抗またはコンダクタンス、容量と放電特性、充電電流と交流リップル、電解液の比重と温度を解説します。


蓄電池を測定する前に確認しておくこと

蓄電池の測定では、感電だけでなく短絡による大電流にも注意が必要です。直流電圧が比較的低い設備であっても、蓄電池は瞬間的に大きな短絡電流を流す可能性があります。工具や測定端子を誤って接触させると、火花、発熱、溶損、やけど、火災などにつながるおそれがあります。


作業は、対象設備に必要な教育や資格を持つ担当者が、施設の安全手順に従って実施します。絶縁処理された工具や適切な保護具を使用し、金属製の装身具などは外しておくことが基本です。また、端子の極性を確認せずに測定器を接続すると、測定器の損傷や短絡につながるため、接続前の確認を徹底します。


測定を始める前には、蓄電池の種類、定格電圧、定格容量、セル数、設置年月、交換履歴、充電方式、通常の負荷、非常時に必要な保持時間を確認します。鉛系、アルカリ系、そのほかの方式では、適切な測定方法や評価基準が異なります。設備の仕様書、蓄電池の取扱説明書、充電装置の設定資料、保守基準を確認したうえで作業することが欠かせません。


蓄電池が複数のセルまたは単電池で構成されている場合は、配置と番号を明確にします。測定記録上の番号と現物の位置が一致していないと、異常セルを特定しても交換対象を取り違える可能性があります。盤内や架台上の番号表示が不鮮明な場合は、測定前に表示を整備しておくと、保守作業の精度が高まります。


測定時の運転状態も重要です。通常充電中なのか、均等充電中なのか、放電直後なのか、負荷を接続しているのかによって測定値は変化します。過去の記録と比較するときは、できる限り同じ運転条件で測定します。条件が異なる場合は、記録欄にその内容を残し、数値だけを単純比較しないようにします。


測定器については、測定範囲、分解能、確度、校正状態を確認します。内部抵抗のように小さな値を測定する場合は、測定端子の接触状態やリード線の取り回しによって結果が変動することがあります。同じ位置、同じ接触方法、同じ測定器で継続的に測ることで、経時変化を比較しやすくなります。


容量試験や放電試験を実施する場合は、試験中に非常用直流電源としての機能が低下する可能性を考慮しなければなりません。代替電源の準備、設備停止の可否、監視体制、復旧手順を事前に検討し、運用部門と調整したうえで実施します。蓄電池の状態を調べるための試験が、配電設備の保安機能を損なうことがないように計画する必要があります。


測定項目1 総電圧とセル電圧

最初に確認したい測定項目は、蓄電池全体の総電圧と、構成する各セルまたは各単電池の電圧です。電圧測定は比較的実施しやすく、充電装置の異常、配線不良、セル間のばらつき、過充電、充電不足などを把握するための基本的な測定です。


総電圧を測定するときは、蓄電池端子だけでなく、必要に応じて直流母線や負荷側端子の電圧も確認します。蓄電池端子では正常な電圧が得られているのに、直流母線側で低下している場合は、ケーブル、接続部、開閉器、ヒューズ、端子台などに電圧降下が発生している可能性があります。


総電圧が基準値から外れている場合、蓄電池だけでなく充電装置の出力設定や動作状態も確認します。充電電圧が低すぎる状態が続くと、十分な充電状態を保てず、必要な容量を確保できない可能性があります。反対に、充電電圧が高すぎる状態では、発熱、ガス発生、電解液の減少、極板の劣化などを促進するおそれがあります。


ただし、総電圧が正常範囲に入っているからといって、すべてのセルが健全とは限りません。直列接続された複数のセルのうち、一部の電圧が低く、別のセルの電圧が高くなっている場合、全体の合計だけを見ると正常に見えることがあります。そのため、総電圧と各セル電圧はセットで測定することが重要です。


セル電圧を測定するときは、すべてのセルを同一条件で順番に測定します。測定値の絶対値だけでなく、セル間のばらつきに注目します。同じ形式、同じ使用期間、同じ充電条件のセルで大きな差が生じている場合は、劣化、内部短絡、接続不良、電解液状態の異常などが疑われます。


過去の測定記録との比較も有効です。あるセルだけ電圧が徐々に低下している場合や、充電時には高めで負荷をかけると急低下する場合は、内部状態が悪化している可能性があります。単発の異常値で直ちに交換を判断するのではなく、測定条件、温度、接触状態を確認し、必要に応じて再測定します。


電圧測定では、無負荷または通常の待機状態だけでなく、可能であれば負荷が加わったときの変化も確認します。劣化した蓄電池は、待機中の電圧が正常でも、遮断器操作などで一時的に大きな電流が流れたときに電圧が低下することがあります。実際の操作試験を行う場合は、設備への影響と安全性を確認し、定められた手順に従います。


端子電圧の測定時には、端子部の腐食、緩み、変色、発熱痕も合わせて観察します。端子接続が不良になると、蓄電池本体が健全でも負荷側へ十分な電流を供給できません。接続部をまたいだ電圧降下を測定すると、接触抵抗の増加を把握できる場合があります。


電圧は蓄電池点検の入口として重要ですが、電圧だけで容量や寿命を断定することはできません。電圧測定で異常が見つからなかった場合でも、内部抵抗や容量など、ほかの項目と組み合わせて判断する必要があります。


測定項目2 内部抵抗またはコンダクタンス

内部抵抗は、蓄電池内部で電流が流れる際の抵抗成分を表す指標です。蓄電池の劣化が進み、極板の腐食、活物質の脱落、電解液の変化、内部接続部の劣化などが生じると、内部抵抗が増加する傾向があります。


コンダクタンスは電気の流れやすさを表す指標で、内部抵抗とは反対の傾向を示します。一般には、内部抵抗が上昇するとコンダクタンスは低下します。使用する測定器によって表示される指標が異なるため、点検記録では測定方式と単位を統一することが重要です。


内部抵抗またはコンダクタンスの測定は、蓄電池を大きく放電させずに状態を確認できる点が利点です。定期点検で継続的に測定し、初期値や過去の測定値と比較することで、劣化傾向を把握しやすくなります。


ただし、内部抵抗の値は蓄電池の種類、容量、構造、温度、充電状態、測定周波数、測定器の方式によって異なります。異なる形式の蓄電池同士を単純に比較したり、測定方式が異なる機器の数値を同じ基準で評価したりすることは適切ではありません。


実務では、設置直後または状態が良好な時点の測定値を基準値として保存し、その後の変化率を確認する方法が有効です。メーカーや保守基準に判定値が示されている場合は、その基準を優先します。明確な基準がない場合でも、同じ蓄電池群の中で特定のセルだけ値が大きく異なる場合や、時間の経過とともに急激な変化が見られる場合は、詳しい調査が必要です。


測定端子の接触状態にも注意します。端子表面に腐食や汚れがあると、蓄電池内部の抵抗ではなく、測定接触部の抵抗が結果に含まれることがあります。測定位置を統一し、測定端子を確実に接触させ、異常値が出た場合は接触状態を確認して再測定します。


端子間を接続する連結部品の緩みや腐食も、内部抵抗測定に影響します。蓄電池本体の内部抵抗と、接続部の抵抗を分けて確認できる場合は、それぞれ測定すると異常箇所を絞り込みやすくなります。接続部の抵抗が増加すると、負荷電流が流れたときに発熱や電圧低下が生じる可能性があります。


内部抵抗の上昇は劣化を示す有力な兆候ですが、容量と完全に一致するとは限りません。内部抵抗が大きく変化していなくても、実際の放電容量が低下している場合があります。反対に、測定条件の違いによって一時的に高い値が出ることもあります。そのため、内部抵抗だけで交換時期を断定せず、電圧、温度、容量、外観などと合わせて評価します。


内部抵抗またはコンダクタンスの測定は、短時間で多くのセルを比較できるため、異常候補を抽出する一次点検として有効です。異常傾向が見られたセルについては、負荷試験や容量試験など、より詳しい確認へ進むことで、突発的な機能喪失を防ぎやすくなります。


測定項目3 容量と放電特性

容量は、蓄電池が規定の条件でどれだけの電気量を供給できるかを示す重要な指標です。配電設備では、停電後も遮断器の操作、保護回路、監視回路などを一定時間維持できる能力が求められます。端子電圧や内部抵抗が正常に見えていても、必要な容量が残っているとは限らないため、容量の確認は蓄電池の実力を把握するうえで欠かせません。


容量を確認する代表的な方法が放電試験です。規定された電流または実際の負荷条件に近い電流で放電し、終止電圧に達するまでの時間や供給した電気量を確認します。試験条件は蓄電池の種類や設備仕様によって異なるため、メーカー資料や施設の保守基準に従って設定します。


放電試験では、試験開始前の充電状態を整えることが重要です。十分に充電されていない状態で試験すると、蓄電池本来の容量より低い結果になる可能性があります。また、放電直後や温度が安定していない状態では、正確な比較が難しくなります。


試験中は、蓄電池全体の電圧だけでなく、各セルの電圧推移も記録します。全体の電圧が基準内であっても、特定のセルだけ早く電圧が低下することがあります。このようなセルは、直列接続された蓄電池群全体の使用可能時間を制限する要因になります。


放電開始直後に電圧が大きく低下する場合は、内部抵抗の増加や接続部の抵抗増加が疑われます。放電時間の経過とともに特定セルの電圧が急速に低下する場合は、容量低下や内部異常の可能性があります。電圧の変化を時間軸で記録することで、単一時点の測定だけでは分からない劣化状態を把握できます。


容量試験は蓄電池を実際に放電させるため、設備運用への影響を十分に検討しなければなりません。試験中に商用電源が停電すると、非常用直流電源の保持時間が不足するおそれがあります。必要に応じて代替蓄電池や仮設直流電源を準備し、試験の中止条件や復旧方法を明確にしておきます。


試験終了後は、適切な充電条件で蓄電池を回復させます。充電が完了するまでの時間、充電電流の変化、温度上昇、セル電圧のばらつきも確認します。試験後に十分な充電状態へ戻らないまま運用を再開すると、非常時に必要な容量を確保できない可能性があります。


容量の評価では、定格容量に対する割合だけでなく、設備が実際に必要とする保持時間を満たせるかという観点も重要です。設備増設によって直流負荷が増えている場合、蓄電池自体の劣化が小さくても、当初設計より保持時間が短くなっている可能性があります。


遮断器の操作回数、警報回路の消費電流、監視装置の追加などを反映し、現在の負荷条件で必要容量を再確認します。蓄電池容量の点検は、蓄電池単体の評価だけでなく、配電設備全体の直流電源設計を見直す機会にもなります。


容量試験を頻繁に行うことが適切とは限りません。試験そのものが蓄電池に負担を与える場合もあるため、実施周期は蓄電池の種類、重要度、経過年数、過去の測定傾向を踏まえて決めます。定期的な内部抵抗測定などで劣化傾向を監視し、必要な時期に容量試験を組み合わせる方法が現実的です。


測定項目4 充電電流と交流リップル

蓄電池の劣化は、蓄電池本体だけでなく、充電装置の状態によって進行することがあります。そのため、蓄電池点検では充電電圧だけでなく、充電電流と交流リップルも確認することが重要です。


通常の待機運転では、蓄電池は自己放電や待機負荷による減少分を補うために充電されています。充電電流が長期間にわたって通常より高い場合は、蓄電池内部の漏れ電流、セルの異常、充電電圧の過大、温度上昇などが考えられます。


一方、充電電流が極端に小さく、蓄電池電圧も低い場合は、充電装置の出力不足、接続不良、保護装置の動作、配線の断線などが疑われます。充電装置の表示値だけに頼らず、必要に応じて測定器で実測し、蓄電池端子に適切な電圧と電流が供給されているか確認します。


充電電流を評価するときは、測定時の状態を記録します。停電復旧後や放電試験後は、通常より大きな充電電流が流れることがあります。蓄電池が十分に回復すると、電流は徐々に低下するのが一般的です。復旧後も高い電流が長時間続く場合は、蓄電池や充電装置の異常を検討します。


交流リップルとは、直流出力に重なっている交流成分です。充電装置の整流回路や平滑回路に異常があると、交流成分が増加する場合があります。過大な交流リップルは蓄電池の発熱や劣化を促進し、接続されている制御機器や監視回路へ影響を与える可能性があります。


交流リップルの評価では、電圧成分と電流成分の両方が対象になる場合があります。許容値は蓄電池の種類、充電装置の仕様、設備構成によって異なるため、一律の数値で判断せず、機器の仕様書や保守基準と比較します。


測定時には、直流負荷の変動にも注意します。遮断器の操作、通信装置の動作、表示灯の点灯、試験回路の投入などによって、充電電流や母線電圧が一時的に変化することがあります。異常と誤認しないために、通常時、負荷動作時、動作終了後の値を区別して記録します。


充電装置の冷却状態も確認します。通風口の詰まり、周囲温度の上昇、冷却部品の不具合などによって装置内部の温度が上がると、出力の安定性や部品寿命に影響する可能性があります。蓄電池だけを交換しても、充電装置の異常が残っていれば、新しい蓄電池の劣化を早めるおそれがあります。


充電電流や交流リップルの異常が見つかった場合は、蓄電池と充電装置を切り分けて調査します。蓄電池側の異常によって充電電流が増えているのか、充電装置の異常によって蓄電池に過度な負担がかかっているのかを確認することで、適切な修理や交換につなげられます。


測定項目5 電解液の比重と温度

電解液の比重測定は、比重を測定できる構造の鉛系蓄電池などで、充電状態やセル間のばらつきを確認するために用いられます。ただし、密閉構造の蓄電池や、電解液へ直接アクセスできない種類では実施できません。対象となる蓄電池の構造と保守方法を確認したうえで実施します。


電解液の比重は、一般に充電状態や温度の影響を受けます。測定値を比較するときは、測定時の温度を記録し、必要に応じて指定された方法で温度補正を行います。温度条件を無視すると、充電状態や劣化状態を誤って判断する可能性があります。


同じ蓄電池群の中で、特定のセルだけ比重が低い場合は、充電不足、内部短絡、電解液の状態異常、セルの劣化などが考えられます。比重の絶対値だけでなく、セル間の差と過去からの変化を確認します。


電解液を取り扱う作業では、飛散や付着への対策が必要です。適切な保護具を使用し、施設の安全手順に従います。測定器具をセル間で使用する場合は、汚染や混入を防ぐため、定められた方法で取り扱います。


液面を確認できる構造では、比重測定と同時に液面も確認します。液面が低下すると、内部部品の露出や劣化につながる可能性があります。ただし、補水の可否、使用する水の条件、補水時期は蓄電池の仕様によって異なります。確認せずに液体を加えることは避け、指定された保守方法に従います。


温度測定は、蓄電池の種類を問わず重要です。蓄電池全体の温度だけでなく、セル間の温度差にも注目します。特定のセルや接続部だけ温度が高い場合は、内部異常、過充電、接続抵抗の増加などが疑われます。


温度は、周囲温度と蓄電池表面温度を分けて記録すると効果的です。室内全体が高温なのか、蓄電池群の一部だけが発熱しているのかによって、対応が異なります。空調や換気の状態、日射、近接する発熱機器の影響も確認します。


蓄電池盤や蓄電池室では、上下方向や場所によって温度差が生じることがあります。定点で継続測定する場合は、測定位置を統一します。測定位置が毎回変わると、実際の経年変化なのか、場所による温度差なのか判断しにくくなります。


温度上昇を確認した場合は、単に冷却するだけでなく、原因を調べます。充電電圧の過大、交流リップルの増加、端子接続不良、内部短絡、周囲環境の悪化など、複数の要因が考えられます。温度、電圧、電流、内部抵抗を同時に確認することで、異常原因を絞り込みやすくなります。


密閉構造の蓄電池では比重測定ができないため、電圧、内部抵抗、温度、外観、容量などの結果を組み合わせて評価します。膨れ、変形、液漏れ、端子部の腐食などが見られた場合は、通電状態や周辺への影響を考慮し、速やかに専門担当者へ連絡します。


測定値から劣化を判断する際の注意点

蓄電池の劣化判定では、一つの数値だけを見て結論を出さないことが重要です。端子電圧が正常でも容量が低下している場合があり、内部抵抗が高くても温度や測定接触の影響で一時的に異常値が出ている場合があります。


まず確認したいのは、測定条件が過去と同じかどうかです。充電状態、周囲温度、負荷状態、測定位置、使用した測定器が異なると、数値の変化が蓄電池の劣化によるものか判断しにくくなります。異常値が出た場合は、条件をそろえて再測定することが基本です。


次に、同一蓄電池群の中でのばらつきを確認します。直列接続されたセルは、原則として同じ電流で充放電されます。その中で一部だけ電圧、内部抵抗、温度、比重が大きく異なる場合は、局所的な異常を疑う必要があります。


過去からの変化速度も重要です。数年間かけて緩やかに変化している場合と、前回点検から急激に変化している場合では、緊急性が異なります。劣化傾向が急変した場合は、充電条件、周囲温度、負荷の増加、設備改修など、運用条件の変化も確認します。


蓄電池の経過年数だけで健全性を断定することも避けます。設計上の期待寿命に達していなくても、高温、過充電、深い放電、保守不足などによって早期劣化する場合があります。反対に、使用年数だけを理由に測定結果を軽視することも適切ではありません。


交換判定では、蓄電池単体の状態だけでなく、設備の重要度を考慮します。事故時に遮断器を確実に動作させる必要がある設備と、短時間の監視用途だけの設備では、求められる信頼性が異なります。重要設備では、劣化が限界に達する前に計画交換する考え方が必要です。


セル単位で交換できる構成であっても、一部交換が常に適切とは限りません。新旧セルを混在させると、充電特性や内部抵抗の差によって、ほかのセルへ影響する場合があります。部分交換の可否は、蓄電池の仕様、使用年数、劣化状況を確認し、専門的な判断に基づいて決定します。


測定記録を設備保全に生かす方法

蓄電池の劣化を早期発見するには、測定値を保存するだけでなく、経時変化を追える形で管理することが重要です。点検のたびに記録様式やセル番号が変わると、過去との比較が難しくなります。


記録には、測定日、測定者、設備名、蓄電池の種類、設置年月、セル番号、測定器、運転状態、周囲温度、蓄電池温度、総電圧、セル電圧、内部抵抗、充電電流などを残します。比重や容量試験を実施した場合は、その条件と結果も記録します。


数値だけでなく、外観状態も文章や写真で残すと有効です。端子部の腐食、変色、膨れ、液漏れ、汚れ、架台の腐食、換気状態などは、数値データだけでは把握できません。写真を撮影するときは、設備全体、蓄電池群、セル番号、異常箇所の位置関係が分かるように記録します。


定点撮影を行う場合は、撮影位置や方向をそろえます。前回と同じ構図で撮影すれば、膨れや腐食の進行を比較しやすくなります。セル番号が写真内で確認できるようにすると、測定データと外観記録を結び付けやすくなります。


測定結果は、正常、要注意、要調査などの判定だけで終わらせず、次回確認時期や対応内容まで記録します。再測定が必要なセル、容量試験を検討する蓄電池群、充電装置の点検が必要な設備を明確にすることで、対応漏れを防げます。


蓄電池の測定履歴と故障履歴を関連付けることも重要です。遮断器の操作不良、直流電圧低下警報、充電装置の異常、停電時の保持時間不足などが発生した場合は、その前後の測定値を確認します。蓄積したデータから故障前の兆候を把握できれば、点検周期や判定基準の改善につなげられます。


設備が複数ある場合は、同じ形式の蓄電池を横断的に比較すると、設置環境による違いを把握できます。特定の部屋や盤だけ劣化が早い場合は、温度、換気、充電設定、負荷条件などに共通の問題がある可能性があります。


測定記録を電子化する場合は、ファイル名やフォルダ名の規則を統一します。設備番号、点検日、蓄電池群、セル番号などを検索できるようにしておくと、異常発生時に過去情報を迅速に確認できます。


異常を発見したときの対応手順

測定で異常が見つかった場合は、直ちに蓄電池を取り外すのではなく、設備への影響と安全性を確認しながら対応します。異常の程度によっては、非常用直流電源を失うことになるため、代替電源や設備停止の計画が必要です。


最初に、測定ミスの可能性を確認します。測定端子の接触、極性、測定範囲、測定器の設定、温度条件を確認し、同じ条件で再測定します。再測定でも異常が続く場合は、隣接セルや接続部も測定し、異常範囲を絞り込みます。


次に、電圧、内部抵抗、温度、外観、充電電流など、関連する項目を確認します。複数の項目に異常が現れている場合は、劣化や内部異常の可能性が高まります。特に、異常発熱、膨れ、液漏れ、焦げたような臭い、端子部の著しい変色がある場合は、安全を優先して対応します。


異常セルが確認された場合でも、部分交換でよいか、蓄電池群全体を交換するかは慎重に判断します。使用期間が長い蓄電池群では、一つのセルを交換しても、ほかのセルが続けて劣化する可能性があります。交換範囲は、設備の重要度、残存容量、経過年数、予備品の有無、停止可能時間を踏まえて決めます。


充電装置に異常がある場合は、蓄電池交換だけで済ませないことが重要です。過充電や交流リップルの増加が原因であれば、充電装置を修理せずに新しい蓄電池を接続すると、同じ劣化を繰り返す可能性があります。


対応後は、交換日、交換対象、原因、修理内容、設定変更、確認試験の結果を記録します。交換後の初期値として、セル電圧、内部抵抗、温度などを測定しておくと、今後の劣化判定に利用できます。


配電設備の蓄電池点検を効率化するポイント

蓄電池点検を効率化するには、測定作業を急ぐのではなく、測定位置、記録方法、判定手順を標準化することが大切です。作業者ごとに方法が異なると、測定値の比較が難しくなり、異常の見逃しにつながります。


点検前にセル番号と測定順序を決め、現場の配置図と記録用紙を一致させます。測定者と記録者を分けられる場合は、読み上げと復唱を行うことで、セル番号の取り違えや入力ミスを減らせます。


異常値が出たときの再測定条件もあらかじめ決めておきます。例えば、接触部を確認して再測定する条件、隣接セルを追加測定する条件、責任者へ報告する条件を明確にします。現場で判断基準が曖昧だと、同じ異常でも対応がばらつきます。


測定データと現場写真を関連付ける仕組みも有効です。セル番号や異常箇所の位置情報を明確にしておけば、事務所で記録を確認する担当者や、後日修理を行う担当者が現場状況を把握しやすくなります。


設備が広い範囲に分散している場合や、配電設備周辺の状況を位置情報とともに記録したい場合は、LRTK Phoneを活用した現場記録も選択肢になります。設備の位置、点検写真、周辺状況を関連付けて管理することで、測定値だけでは分かりにくい現場条件を共有しやすくなります。


ただし、位置情報や写真記録は蓄電池の電気的測定を代替するものではありません。電圧、内部抵抗、容量、充電状態などの測定結果と組み合わせて使用することで、保全記録の精度と検索性を高めることができます。


まとめ

配電設備の蓄電池は、停電や事故が発生したときに遮断器、保護装置、監視回路などを動作させる重要な直流電源です。平常時に問題なく見えていても、内部劣化によって必要な放電能力を失っている場合があります。


劣化を早期発見するためには、総電圧とセル電圧、内部抵抗またはコンダクタンス、容量と放電特性、充電電流と交流リップル、電解液の比重と温度という5つの測定項目を組み合わせて確認することが重要です。


測定値は一回の結果だけで判断せず、同一蓄電池群のばらつき、過去からの変化、測定時の温度や運転状態を考慮して評価します。また、蓄電池本体だけでなく、充電装置、接続部、設置環境、負荷条件も含めて確認することで、劣化原因を適切に切り分けられます。


点検結果は、セル番号、測定条件、外観写真、対応履歴とともに継続して管理します。現場の位置や設備写真を整理する必要がある場合は、LRTK Phoneも活用しながら、測定データと現場情報を結び付けた保全管理を進めることが、配電設備の信頼性向上につながります。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

​

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

​

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page