目次
• はじめに
• 道路地図データベースにおける座標ズレとは
• 座標ズレが発生する主な原因
• 対策1:測地系・座標参照系を明確に管理する
• 対策2:入力データの品質を入口でそろえる
• 対策3:座標変換と編集作業を標準化する
• 対策4:自動検査と現地確認を組み合わせる
• 対策5:更新履歴と運用ルールを継続的に管理する
• 5つの対策を実務に落とし込むポイント
• まとめ
はじめに
道路地図データベースは、カーナビゲーション、物流管理、道路維持管理、都市計画、防災、モビリティサービスなど、さまざまな分野の基盤として使われています。道路中心線、車線、交差点、歩道、標識、信号、道路施設、規制情報といった要素が正確に記録されていることで、利用者は安全かつ効率的に移動でき、事業者や行政機関は適切な判断を行うことができます。
しかし、道路地図データベースで特に注意すべき問題の一つが「座標ズレ」です。道路の形状が実際の位置からずれて登録されていたり、異なるデータ同士を重ねたときに道路、建物、航空写真、行政界、地物情報が一致しなかったりする状態を指します。数十センチ程度の小さなズレであっても、用途によっては大きな問題になります。たとえば、高精度な車両位置推定、除雪車や清掃車の走行管理、自動運転向けの地図、道路占用物の管理、災害時の通行可否判定などでは、わずかな座標差が判断の誤りにつながることがあります。
座標ズレは、単に「地図をきれいに描けば解決する」という問題ではありません。測地系、座標参照系、データ取得方法、変換処理、編集手順、更新管理、検査体制など、多くの要素が関係します。したがって、座標ズレを防ぐためには、作業者の経験だけに頼るのではなく、データベース全体の設計と運用に予防策を組み込むことが重要で す。
本稿では、道路地図データベースの座標ズレを防ぐための実践的な対策を5つに整理して解説します。新規に地図データベースを構築する場合だけでなく、既存データの品質改善や更新運用の見直しにも役立つ内容です。
道路地図データベースにおける座標ズレとは
道路地図データベースにおける座標ズレとは、データベース上に登録された道路や関連地物の位置が、実際の地理的位置、または基準となる地図・測量成果・航空写真・点群データなどと一致していない状態を指します。
代表的な例として、次のようなものがあります。
• 道路中心線が実際の道路幅の外側にずれている
• 交差点ノードが航空写真上の交差点中心と一致していない
• 橋梁、トンネル、ランプ、側道の位置関係が不自然になっている
• 同じ道路を表す複数のデータセットを重ねると、平行に数メートルずれている
• 古い測地系で作成されたデータを変換せずに新しい地図上へ重ねている
• 編集作業を繰り返すうちに、隣接する道路リンクの接続位置が少しずつずれている
• 行政界、道路台帳、航空写真、現地計測データの間で位置が整合しない
座標ズレには、大きく分けて「全体的なズレ」と「局所的なズレ」があります。全体的なズレは、測地系や投影法の扱いを誤った場合に起こりやすく、データ全体が一定方向へ大きくずれることがあります。一方、局所的なズレは、特定の交差点、道路区間、橋梁部、山間部、都市部の高架道路など、一部の地物だけで発生することが多いです。こちらはデータ取得条件、編集ミス、更新漏れ、地形条件、現地改変などが原因になりやすいです。
重要なのは、座標ズレが必ずしも目視で簡単に分かるとは限らない点です。縮尺の小さい表示では問題がないように見えても、拡大すると道路中心線が車線単位でずれていることがあります。また、データベース上のトポロジー、つまり道路リンク同士の接続関係が正しくても、実空間上の位置が不正確であれば、実務上は大きな問題になります。
道路地図データベースでは、「つながっているか」と「正しい場所にあるか」の両方が求められます。座標ズレ対策は、見た目の修正ではなく、地理空間情報としての信頼性を保つための品質管理そのものです。
座標ズレが発生する主な原因
座標ズレを防ぐには、まず発生原因を理解する必要があります。道路地図データベースでは、多様なデータソースが使われます。航空写真、衛星画像、現地測量、GNSSログ、MMS、点群データ、道路台帳、都市計画図、工事完成図、既存GISデータ、民間地図データなどが組み合わされることも珍しくありません。こうしたデータは、それぞれ作成時期、測地系、精度、縮尺、更新頻度、作成目的が異なります。
座標ズレの主な原因は、次のように整理できます。
原因内容起こりやすい問題測地系の混在日本測地系、世界測地系、JGD系などの扱いが不統一データ全体が一定方向へずれる座標参照系の誤設定緯度経度、平面直角座標、Webメルカトルなどの指定ミス重ね合わせ時に位置が合わない変換パラメータの誤り座標変換時に不適切なパラメータを使用数メートルから数十メートルのズレ入力データの精度差縮尺や取得方法の異なるデータをそのまま統合局所的な不整合手作業編集のばらつき作業者ごとに判断基準が異なる交差点や接続部でズレが蓄積更新漏れ道路改良や新設道路を反映していない現況とデータが一致しない経年変化道路線形、車線構成、施設位置が変化古い地図と現地が乖離検査不足目視確認だけで品質を 担保しようとする小さなズレを見落とす 特に注意したいのは、座標ズレの原因が一つだけとは限らないことです。たとえば、古い道路台帳を基に作られたデータを、別の座標系へ変換し、さらに航空写真を背景に手作業で補正した場合、元データの誤差、変換誤差、画像の歪み、編集判断の差が重なります。その結果、どこでどの程度のズレが発生したのかを後から追跡することが難しくなります。
このため、座標ズレ対策では「発生したズレを修正する」だけでは不十分です。どの工程でズレが入り込むのかを把握し、データの入口から更新運用まで一貫した管理を行う必要があります。
対策1:測地系・座標参照系を明確に管理する
座標ズレを防ぐ最初の対策は、測地系と座標参照系を明確に管理することです。道路地図データベースでは、緯度経度、平面直角座標、UTM座標、Webメルカトルなど、さまざまな座標表現が使われる可能性があります。さらに、日本国内のデータでは、古い測地系と世界測地系の違いにも注意が必要です。これらを曖昧に扱うと、データ全体が大きくずれる原因になります。
測地系とは、地球上の位置を表すための基準です。座標参照系は、その測地系をどのような座標で表現するかを定めたものです。道路地図データベースでは、単に数値としての座標を保存するだけではなく、その座標が何の基準に基づいているのかを必ず記録する必要があります。
実務で重要なのは、データごとに次の情報を明示することです。
• 使用している測地系
• 座標参照系の名称
• EPSGコードなどの識別情報
• 座標の単位
• 座標変換の有無
• 変換に使用したパラメータ
• 作成日時または取得日時
• 元データの出所
たとえば、道路中心線データ、背景地図、航空写真、点群データ、道路台帳データを重ね合わせる場合、それぞれの座標参照系が一致しているとは限りません。GISソフトウェアには座標系を自動判定する機能がある場合もありますが、自動判定に頼り切るのは危険です。見た目上は重なっているように見えても、実際には座標系の指定だけが変わっていて、座標値自体は正しく変換されていないことがあります。
特に避けるべきなのは、「座標系の定義」と「座標変換」を混同することです。座標系の定義は、データがどの基準で作られているかを示す設定です。一方、座標変換は、座標値そのものを別の基準に合わせて計算し直す処理です。誤った座標系を定義してから変換を行うと、ズレがさらに大き くなることがあります。
対策としては、道路地図データベースの運用ルールに、標準となる座標参照系を定めておくことが有効です。すべてのデータを最終的にどの座標参照系で保存するのか、外部データを取り込む際にどのような変換を行うのか、変換前後の検査をどのように実施するのかを文書化します。
また、データベース内の各レイヤーやテーブルには、座標参照系に関するメタデータを持たせるべきです。メタデータがないデータは、後から品質を確認することが難しくなります。短期的には作業を早く進められても、長期的には保守性が低下し、座標ズレの原因を追えなくなります。
測地系と座標参照系の管理は、地味ですが非常に重要です。道路地図データベースの品質は、まず基準をそろえるところから始まります。
対策2:入力データの品質を入口でそろえる
2つ目の対策は、入力データの品質を入口でそろえることです。道路地図データベースでは、さまざまな情報源からデータを取り込みます。どれほど優れたデータベース設計をしていても、入力されるデータの品質がばらばらであれば、最終的な地図品質は安定しません。座標ズレを防ぐには、データを取り込む前の段階で品質を確認し、必要に応じて補正や除外を行うことが重要です。
入力データの品質確認では、まずデータの取得方法を把握します。GNSSで取得した走行軌跡なのか、MMSによる高精度計測なのか、航空写真をトレースしたものなのか、既存の台帳図をデジタル化したものなのかによって、期待できる精度は大きく異なります。縮尺の小さい紙地図を基に作られたデータと、近年の高精度な点群データを同じ精度のものとして扱うと、統合時にズレが発生します。
次に、入力データの作成時期を確認します。道路は常に変化しています。新設、拡幅、線形改良、交差点改良、バイパス整備、車線変更、歩道整備、橋梁架け替えなどにより、数年前のデータが現況と 合わなくなることがあります。古いデータを使う場合は、それが現在の道路形状を表しているのか、あるいは過去の状態を表しているのかを明確に区別する必要があります。
入力データを受け入れる際には、次のようなチェック項目を設けると効果的です。
チェック項目確認内容座標参照系測地系、投影法、単位が明記されているか位置精度用途に対して十分な精度があるか取得時期現況を反映しているかデータ形式変換時に形状や属性が失われないか属性情報道路種別、幅員、規制、名称などが整合しているかトポロジーリンクやノードの接続関係が破綻していないか重複・欠落同一路線の重複や未登録区間がないか出所信頼できる情報源か 入口での品質管理では、「すべてのデータをそのまま使う」という考え方を避けるべきです。目的に合わない精度のデータは、補助情報としては使えても、基準データとして使うべきではありません。たとえば、道路の概略位置を把握するためのデータを、車線単位の位置管理に流用すると、当然ながら座標ズレが目立ちます。
また、複数のデータを統合する場合は、基準データを決めることが重要です。航空写真、点群、現地測量、既存道路データのどれを最優先の位置基準とするのかを決めずに編集すると、作業者ごとに判断が変わります。ある区間では航空写真に合わせ、別の区間では既存道路中心線に合わせ、さらに別の区間では台帳図に合わせると、全体として不統一なデータになります。
入力データの品質を入口でそろえることは、後工程の負担を大きく減らします。座標ズレが発生してから修正するよりも、ズレを持ち込まない仕組みを作る方が効率的です。
対策3:座標変換と編集作業を標準化する
3つ目の対策は、座標変換と編集作業を標準化することです。道路地図データベースの構築や更新では、外部データの取り込み、座標変換、形状編集、属性付与、接続調整、検査、公開といった工程が繰り返されます。この工程が作業者ごとに異なると、同じ種類のデータであっても結果にばらつきが生じます。
座標変換では、どのツールを使うか、どの変換パラメータを使うか、変換前後に何を確認するかを明確に決めておく必要があります。座標変換は一見単純な処理に見えますが、基準点、地域、変換方式、データの作成時期によって結果が変わることがあります。特に過去に作成されたデータを現在の基準へ合わせる場合、安易な一括変換では局所的なズレが残る場合があります。
標準化すべき項目には、次のようなものがあります。
• 座標変換に使用するツール
• 使用する変換パラメータ
• 変換対象データの事前確認方法
• 変換後の検査方法
• 変換ログの保存方法
• 編集時のスナップ設定
• ノード結合の許容距離
• 交差点形状の作成ルール
• 道路中心線の取得基準
• 高架道路、地下道路、側道、ランプの扱い
• 更新後の承認手順
道路データの編集では、形状をどの位置に置くかという判断基準が重要です。道路中心線を作成する場合、道路区域の中心、車道中心、上下線分離道路の各方向中心、代表線など、複数の考え方があります。これを明確にしないまま編集すると、道路種別や地域によって線の位置が不統一になります。
たとえば、片側一車線の道路では車道中央を道路中心線とする一方、中央分離帯のある幹線道路では上下線を別々のリンクとして管理する場合があります。また、インターチェンジやジャンクションでは、ランプ、分岐、合流、橋梁、高架、側道が複雑に重なります。このような場所では、単純に航空写真をなぞるだけではネットワークとして正しいデータになりません。位置精度と接続関係の両方を満たす編集ルールが必要です。
編集作業の標準化では、スナップ機能の設定も重要です。スナップ距離が大きすぎると、本来別々に管理すべき道路や施設が誤って結合されることがあります。逆にスナップ距離が小さすぎると、接続すべきリンクが未接続のまま残ることがあります。特に交差点ノードや道路端点の処理では、見た目ではつながっているように見えても、データ上は微小な隙間が残っている場合があります。
また、手作業による編集には必ず判断のばらつきが生じます。そのため、編集マニュアルを整備し、典型的なケースを図解しておくと効果的です。直線道路、曲線道路、交差点、ラウンドアバウト、高架下道路、トンネル入 口、橋梁、踏切、歩道橋、側道、サービス道路など、現場で迷いやすいパターンについて、どのように線形を作成するかを具体的に示します。
標準化の目的は、作業者の自由度をなくすことではありません。判断基準をそろえ、品質を再現可能にすることです。誰が作業しても同じ基準で編集できる状態を作れば、座標ズレの発生を大幅に減らすことができます。
対策4:自動検査と現地確認を組み合わせる
4つ目の対策は、自動検査と現地確認を組み合わせることです。座標ズレを防ぐには、人の目による確認だけでは限界があります。道路地図データベースは広範囲にわたり、地物数も多いため、すべてを手作業で精密に確認するのは現実的ではありません。一方で、自動検査だけでは、現地の複雑な状況や例外的な道路構造を正しく判断できない場合があります。したがって、機械的な検査と人による判断を適切に組み合わせることが重要です。
自動検査では、まず幾何的な異常を検出します。代表的な検査項目としては、次のようなものがあります。
• 道路リンクの端点が未接続になっていないか
• 交差すべき道路が交差していない状態になっていないか
• 接続してはいけない高架道路と地上道路が結合されていないか
• 短すぎるリンクや不要なノードが大量に発生していないか
• 道路中心線が背景画像や基準データから一定距離以上離れていないか
• 同一路線の線形が不自然に折れ曲がっていないか
• 並行する上下線の間隔が不自然でないか
• トンネル、橋梁、ランプなどの属性と形状が矛盾していないか
特に有効なのが、基準データとの距離比較です。航空写真、MMS点群、現地測量成果、既存の高精度道路データなどを基準として、道路中心線やノードが一定距離以上離れている箇所を抽出します。抽出された箇所を重点的に確認することで、広域データの中から問題の可能性が高い場所を効率よく見つけることができます。
ただし、距離比較の結果をそのまま誤りと判断するのは危険です。航空写真には撮影角度やオルソ補正の影響があります。高架道路や山間部では、画像上の見え方と実際の位置が異なることもあります。また、道路中心線の定義が異なれば、基準データとの距離が大きく見える場合があります。したがって、自動検査は「異常候補を抽出する仕組み」として使い、最終判断には現地情報や編集ルールを組み合わせる必要があります。
現地確認には、現地測量、走行調査、車載カメラ映像、MMS、ドライブレコーダー画像、道路管理者からの資料、工事完成図などを活用できます。すべての箇所を現地確認するのは難しいため、自動検査で抽出された高リスク箇所に優先順位を付けることが重要です。
優先的に確認すべき箇所は、次のような場所です。
• 新設道路や改良工事が行われた地域
• 高架道路、地下道路、トンネル、橋梁が集中する場所
• インターチェンジ、ジャンクション、複雑な交差点
• 山間部や海岸部など地形変化が大きい場所
• 過去に座標ズレが多く発生した地域
• 複数のデータソース間で位置差が大 きい場所
• ナビゲーションや交通規制情報に影響が大きい場所
検査結果は、単に修正して終わりにするのではなく、原因を記録することが重要です。座標系の誤りなのか、入力データの精度不足なのか、編集ミスなのか、道路改良による現況変化なのかを分類しておくと、再発防止に役立ちます。同じ原因のズレが繰り返し発生している場合は、個別修正ではなく工程そのものを見直すべきです。
自動検査と現地確認を組み合わせることで、広域の効率性と局所の確実性を両立できます。座標ズレ対策は、検査を一度実施すれば完了するものではありません。更新のたびに継続的に実施し、品質を維持する仕組みとして定着させることが大切です。
対策5:更新履歴と運用ルールを継続的に管理する
5つ目の対策は、更新履歴と運用ルールを継続的に管理することです。道路地図データベースは、一度作成すれば終わりではありません。道路は日々変化します。新しい道路が開通し、交差点が改良され、車線が増減し、橋梁が架け替えられ、通行規制が変更されます。こうした変化を反映し続ける中で、座標ズレが少しずつ入り込むことがあります。
更新履歴を管理しないと、いつ、誰が、どのデータを、どの基準で修正したのかが分からなくなります。問題が発生したときに原因を追えず、過去の正しい状態へ戻すことも困難になります。道路地図データベースでは、形状データだけでなく、更新理由、参照資料、確認方法、承認者、作業日時などの情報を残すことが重要です。
更新履歴には、少なくとも次の情報を含めるべきです。
項目内容更新日時作業を実施した日付更新者作業担当者またはチーム対象範囲路線、区間、行政区域、レイヤーなど更新内容新規追加、修正、削除、属性変更など更新理由道路新設、工事完了、誤り修 正、現地確認など参照資料航空写真、測量成果、台帳、現地写真など座標変換変換の有無と使用した設定検査結果自動検査や目視確認の結果承認状況レビュー済みか、公開可能か このような履歴を残すことで、座標ズレが発見された際に、どの更新作業で問題が発生したのかを追跡できます。また、過去の作業内容を分析することで、ズレが起こりやすい工程や地域を特定できます。
運用ルールの管理も重要です。道路地図データベースに関わる人が増えるほど、作業基準の共有が難しくなります。担当者の交代、外部委託、複数部署での共同利用などがある場合、口頭説明や個人の経験だけでは品質を維持できません。編集ルール、検査ルール、承認ルール、公開ルールを文書化し、定期的に見直す必要があります。
特に注意すべきなのは、緊急更新です。災害、通行止め、道路崩落、応急復旧、暫定開通などの場面では、通常よりも早くデータを更新する必要があります。このとき、速度を優先しすぎると、座標確認が不十分なデータが登録されることがあります。緊急更新では、暫定データと確定データを区別し、後日必ず精査する運用が必要です。
また、更新頻度が高いデータと低いデータを分けて管理することも有効です。道路中心線、規制情報、施設情報、道路名称、車線情報などは、それぞれ変化の頻度や影響範囲が異なります。すべてを同じ更新サイクルで扱うのではなく、重要度と変化頻度に応じた管理を行うことで、品質と効率を両立できます。
継続的な管理では、利用者からのフィードバックも重要です。カーナビ利用者、物流事業者、道路管理者、現地作業員、自治体担当者などから寄せられる情報には、座標ズレや現況不一致の発見につながるものがあります。ただし、フィードバックをそのまま反映するのではなく、確認、分類、優先順位付け、検査、承認の流れを設ける必要があります。
道路地図データベースの品質は、作成時点の精度だけで決まりません。更新を重ねても品質を維持できる運用体制があって初めて、長期的に信頼できるデータベースになります。
5つの対策を実務に落とし込むポイント
ここまで、道路地図データベースの座標ズレを防ぐための5つの対策を説明しました。実務では、これらを個別に実施するだけでなく、一つの品質管理プロセスとしてつなげることが重要です。
まず、標準となる座標参照系を定めます。次に、外部から取り込むデータの品質を確認し、必要な変換や補正を行います。そのうえで、編集作業を標準化し、作業者ごとのばらつきを抑えます。更新後には自動検査と現地確認を行い、問題があれば修正します。最後に、更新履歴を記録し、再発防止に活用します。
この流れを整理すると、次のようになります。
工程主な目的座標ズレ対策の要点基準設定データベース全体の座標基準を統一測地系、座標参照系、メタデータを明確化データ受入外部データの品質確認精度、取得時期、出所、形式を確認座標変換基準座標系への統合正しい変換方法とログ管理を徹底編集道路形状と属性の整備作業ルール、スナップ、接続基準を統一検査ズレや不整合の検出自動検査と目視・現地確認を併用承認公開前の品質確認レビュー体制と合否基準を設定更新管理継続的な品質維持履歴、原因分析、運用改善を実施 実務で失敗しやすいのは、品質管理を最後の検査工程だけに任せてしまうことです。完成後にまとめて検査すればよいという考え方では、問題が見つかったときの修正範囲が大きくなります。座標ズレは、データの入口、変換、編集、更新の各段階で少しずつ発生するため、工程ごとに小さく検査する方が効果的です。
また、許容誤差を用途ごとに定めることも大切です。道路地図データベースといっても、用途によって求められる精度は異なります。広域の道路網を把握するための地図、一般的なカーナビ用の地図、道路管理用の台帳、高精度な走行支援用の地図では、必要な座標精度が違います。すべてのデータに最高精度を求めるとコストが過大になりますが、必要な場面で精度が不足すると安全性や信頼性に問題が出ます。
そのため、次のように用途別に品質基準を整理しておくと運用しやすくなります。
用途重視すべき品質一般道路案内道路ネットワークの接続性、交差点位置、道路名称物流・配送進入可否、道路幅員、規制情報、施設入口の位置道路管理道路区域、構造物、管理境界、台帳との整合防災通行可否、避難路、橋梁・トンネル位置、更新速度高精度モビリティ車線単位の位置、道路形状、標識、信号、路面情報 さらに、座標ズレ対策を組織に定着させるには、作業マニュアルだけでなく、教育とレビューの仕組みが必要です。新人担当者や外部委託先が同じ基準で作業できるように、典型的なミス、判断に迷いやすい地形、座標系の注意点、検査ツールの使い方を共有します。レビューでは、単に修正指示を出すだけでなく、なぜその修正が必要なのかを説明し、次回以降の作業品質向上につなげます。
技術面では、GISツール、データベース、スクリプト、自動検査ツールを組み合わせることが有効です。たとえば、更新データを登録する前に、座標参照系の有無、範囲外座標、異常な距離差、未接続ノード、重複リンク、属性欠落などを自動的にチェックする仕組みを作ることができます。こうした検査を人手で毎回行うと負担が大きく、見落としも発生しやすくなります。自動化できる部分は自動化し、人は判断が必要な箇所に集中するのが理想です。
一方で、技術だけでは解決できない部分もあります。道路地図データベースの品質は、関係者間の合意にも左右されます。どのデータを正とするのか、どの程度のズレを許容するのか、暫定データをいつ確定扱いにするのか、古いデータをどのタイミングで廃止するのかといった判断は、運用ルールとして明確にする必要があります。
座標ズレを防ぐ実務の本質は、正しい基準、正しい入力、正しい変換、正しい編集、正しい検査、正しい更新管理を積み重ねることです。どれか一つだけを強化しても、全体の品質は安定しません。
まとめ
道路地図データベースの座標ズレは、測地系の誤り、座標参照系の混在、入力データの精度差、座標変換のミス、編集作業のばらつき、更新漏れ、検査不足など、さまざまな原因で発生します。見た目には小さなズレであっても、道路案内、物流、道路管理、防災、高 精度モビリティなどの用途では、大きな影響を及ぼす可能性があります。
座標ズレを防ぐためには、次の5つの対策が重要です。
• 測地系・座標参照系を明確に管理する
データ全体の基準をそろえ、座標系の定義と座標変換を正しく扱います。メタデータを記録し、後から確認できる状態にすることが大切です。
• 入力データの品質を入口でそろえる
外部データの精度、取得時期、出所、座標参照系、形式を確認し、目的に合わないデータを無条件に取り込まないようにします。
• 座標変換と編集作業を標準化する
変換方法、編集基準、スナップ設定、道路中心線の定義、交差点や高架道路の扱いを統一し、作業者ごとのばらつきを抑えます。
• 自動検査と現地確認を組み合わせる
広域の異常候補は自動検査で効率的に抽出し、重要箇所や複雑な箇所は現地情報を使って確認します。
• 更新履歴と運用ルールを継続的に管理する 誰が、いつ、何を、どの基準で更新したのかを記録し、問題発生時に原因を追跡できるようにします。緊急更新や暫定データの扱いも明確にします。
道路地図データベースの品質は、単発の修正作業では守れません。道路は変化し続け、データも更新され続けます。そのため、座標ズレ対策は一度きりの作業ではなく、日々の運用に組み込むべき継続的な品質管理です。
正確な道路地図データベースを維持するには、基準を明確にし、入力を選別し、変換を管理し、編集を統一し、検査を継続し、履歴を残すことが欠かせません。これらを地道に積み重ねることで、道路地図データベースは単なる図面ではなく、信頼できる社会インフラとして機能します。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

