掘削工事で「88条申請の対象かどうか」を確認するときは、単に掘削深さだけを見て判断すると危険です。実務で88条申請と呼ばれるものは、一般に労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出を指して使われます。厳密には許可を求める申請ではなく、対象となる仕事について着手前に計画を届け出る手続きとして整理する必要があります。
掘削工事で特に確認すべきなのは、掘削の高さ又は深さが10メートル以上である地山の掘削に当たるかどうかです。ただし、ここでいう対象判断は「10メートル以上ならすべて対象」「10メートル未満なら常に対象外」と単純に決めるものではありません。ずい道等の掘削や岩石採取のための掘削は別の整理が必要であり、掘削機械を用いる作業で掘削面の下方に労働者が立ち入らない場合は除外の確認も関係します。つまり、深さ、地山性、人の立入り、施工方法を一体で見なければ、正しい対象判断に近づけません。
特に掘削工事は、設計変更、施工手順の変更、地盤条件の判明、埋設物対応、湧水対策などによって、当初は対象外と考えていた計画が途中で対象に近づくことがあります。この記事では、「88条申請 対象」で調べている実務担当者に向けて、掘削工事で見落としやすい確認点を6つに分けて整理します。なお、最終判断は現場条件、工事範囲、所轄の運用、提出先の確認事項によって変わるため、迷う場合は所轄労働基準監督署や安全衛生担当者に早めに確認する前提で進めることが大切です。
目次
• 88条申請と掘削工事の関係を最初に整理する
• 確認1 掘削の高さ又は深さが10m以上になるかを見る
• 確認2 地山の掘削に当たる範囲を図面で切り分ける
• 確認3 作業員が掘削面の下方に立ち入るかを確認する
• 確認4 土止め支保工や関連する仮設計画を合わせて確認する
• 確認5 地質・湧水・埋設物・周辺影響を施工前に整理する
• 確認6 工事開始日と計画変更時の再判定ルールを決める
• 掘削工事の対象漏れを防ぐ社内確認の進め方
• 現場の記録と位置情報を活用して確認精度を高める
88条申請と掘削工事の関係を最初に整理する
88条申請という言い方は実務で広く使われますが、内容としては労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出を指すことが多いです。掘削工事で問題になるのは、一定の規模や危険性を持つ仕事について、着手前に計画内容を届け出る必要があるかどうかです。現場担当者の感覚では「申請」と呼ばれることがありますが、実務上は、許可を待つ申請というより、対象となる工事について計画届を提出する手続きとして理解しておくと整理しやすくなります。
掘削工事では、深さがある、法面が高い、地山を大きく切り下げる、地下構造物をつくる、既設構造物の近くで掘る、周辺道路や隣地に影響を与えるといった条件が重なります。そのため、88条申請の対象判断は「掘るか掘らないか」ではなく、「どのような地盤を、どの高さ又は深さまで、どの手順で、労働者がどこに立ち入って作業するか」を確認する作業になります。
特に見落としやすいのは、掘削工事を単体で見ず、全体工事の一部として流してしまうケースです。たとえば建築工事の基礎掘削、地下ピット、擁壁工、造成工事、道路工事の切土、河川工事の掘削などは、工事名だけでは対象判断ができません。名称上は一般的な土工事に見えても、実際には深い地山の掘削を伴い、作業員が掘削面の下方に入る計画になっている場合があります。
また、掘削に関する88条申請の対象確認は、安全書類の作成段階だけで済ませるものではありません。見積段階、施工計画段階、仮設計画段階、協力会社との施工手順確認、着手前打合せ、変更協議のたびに確認する必要があります。掘削工事は、実際の地盤や地下埋設物の状況によって計画が変わりやすい工種です。最初の図面だけで「対象外」と判断してしまうと、変更後の計画に対する届出漏れが発生しやすくなります。
実務担当者がまず行うべきことは、掘削工事の全体像を一枚の確認資料にまとめることです。掘削範囲、最大深さ、掘削面の高さ、地山の状態、施工ステップ、作業員の立入位置、土止めの有無、重機の配置、搬出入経路、周辺構造物との関係を整理します。そのうえで、88条申請の対象となる可能性がある部分を早い段階で拾い上げます。判断に迷う場合は、現場内だけで完結させず、元請、専門業者、設計者、安全衛生担当者、必要に応じて所轄の窓口に確認できる状態をつくることが大切です。
確認1 掘削の高さ又は深さが10m以上になるかを見る
掘削工事で88条申請の対象を確認するとき、最初に見るべき目安は、掘削の高さ又は深さが10メートル以上になるかどうかです。ただし、この目安は、地山の掘削であることや、労働者の立入りの有無などと組み合わせて確認する必要があります。単に図面上の掘削深さだけを見て、対象か対象外かを即断しないことが重要です。
掘削深さの確認でよくある見落としは、平均深さだけを見てしまうことです。造成工事や基礎工事では、敷地全体の平均掘削深さは浅くても、一部の範囲だけ深くなることがあります。たとえば、地下階の一部、機械基礎、ピット、杭頭処理部分、排水設備まわりなどは、全体図では目立たないものの、実際には深い掘削になることがあります。88条申請の対象判断では、工事全体の平均ではなく、最大となる高さ又は深さを確認する意識が必要です。
また、掘削の高さという表現にも注意が必要です。掘削は深さで考えがちですが、切土法面や地山の垂直面が高くなる場合は、作業員から見た危険性は深い掘削と同様に高くなります。上部からの崩落、肌落ち、転石、浮石、湧水による緩みなどは、深さだけでは評価できません。掘削面の下方で作業する計画がある場合は、掘削面の高さがどの程度になるかを断面図で確認する必要があります。
段階施工の場合も注意が必要です。最終掘削深さだけでなく、各段階での掘削面の高さ、作業床の位置、重機の位置、作業員の通行位置を確認します。途中段階では安全に見えても、次の段階で土止めや法面整形が追いつかず、一時的に高い掘削面が発生することがあります。対象確認では、完成時の状態だけではなく、施工中に発生する最も危険な状態を確認することが重要です。
図面確認では、平面図だけでは不十分です。平面図では掘削範囲は分かっても、深さや地山の高さは読み取りにくいからです。断面図、縦断図、横断図、掘削ステップ図、仮設計画図、土量計算資料を突き合わせ、最大深さがどこにあるかを明確にします。図面間で数値が異なる場合は、どの図面を正とするかを決め、変更履歴を残します。現場での掘削深さは設計図だけでなく、現況地盤高と計画床付け高の差で決まるため、現況測量の精度も重要になります。
対象判断を安全側に進めるには、10メートルに近い掘削を早めに抽出しておくことが有効です。計画上は9メートル台でも、現況地盤の誤差、追加掘削、床付けの修正、排水設備の追加、作業床の切下げによって10メートル以上になる可能性があります。ぎりぎり対象外と考えるより、対象に近い工区として管理し、変更時に再判定するほうが安全です。
確認2 地山の掘削に当たる範囲を図面で切り分ける
掘削工事の88条申請対象を考えるうえでは、その掘削が地山の掘削に当たるかどうかを確認する必要があります。届出対象として整理される代表的な掘削は、掘削の高さ又は深さが10メートル以上である地山の掘削の作業です。したがって、単に「土を掘る工事」として見るのではなく、どの範囲が地山で、どの範囲が埋 戻し土、盛土、改良地盤、既設構造物まわりの掘削なのかを整理しておくことが大切です。
地山の範囲を曖昧にしたまま施工計画を作ると、対象判断がぶれやすくなります。たとえば、造成後の敷地で掘削する場合、表層には盛土や埋戻し土があり、その下に自然地盤があることがあります。地層構成を確認せずに「造成地だから地山ではない」と判断してしまうと、実際の掘削面の安定性を見誤るおそれがあります。反対に、すべてを同じ条件として扱うと、必要な安全措置や書類整理が過不足になることもあります。
確認の基本は、地盤調査資料、柱状図、土質試験結果、現況測量、造成履歴、既存資料を集めることです。これらを施工図や仮設計画図と重ね、掘削範囲ごとに地盤条件を確認します。地層が均一でない現場では、同じ掘削深さでも危険性が異なります。砂質土、粘性土、礫混じり土、風化岩、盛土、埋戻し土では、法面の安定性や湧水の出方が変わります。88条申請の対象確認と同時に、施工上の安全対策も具体化していく必要があります。
地山の掘削に該当するか迷いやすいのは、既設構造物の撤去や地下躯体まわりの掘削を伴う工事です。既設基礎の周辺を掘る、地下外壁の外側を掘る、埋設管を撤去する、既存ピットを拡張するなどの場合、構造物内の作業と地山の掘削が混在することがあります。このような場合は、工種名ではなく、作業員が接する掘削面が何であるかを見ます。コンクリート面の内側で作業するのか、地盤を切り開いた面の近くで作業するのかによって、確認すべきリスクが変わります。
なお、ずい道等の掘削や岩石採取のための掘削は、地山の掘削として単純に同じ項目へ流し込むのではなく、それぞれの仕事の範囲として別に確認する必要があります。名称が似ていても、届出対象の区分や添付資料が異なる場合があります。掘削工事という大きなくくりだけで判断せず、法令上どの仕事に当たるのかを切り分けることが、公開前の説明としても実務上の確認としても安全です。
図面上での切り分けも重要です。掘削範囲を一色で示すだけでは、地山の掘削範囲、既設構造物の撤去範囲、埋戻し範囲、土止め範囲、法面整形範囲が分かりにくくなります。対象判断に使う資料では、掘削深さとあわせて、地山に該当する範囲 を明確に示すと社内確認がしやすくなります。担当者が変わっても同じ判断ができるように、断面図や平面図に判断根拠を残しておくことが大切です。
確認3 作業員が掘削面の下方に立ち入るかを確認する
掘削工事の対象判断で見落としやすいのが、作業員が掘削面の下方に立ち入るかどうかです。届出対象として整理される地山の掘削であっても、掘削機械を用いる作業で、掘削面の下方に労働者が立ち入らないものは除外される扱いが関係します。そのため、深さだけでなく、人の立入位置を施工手順ごとに確認することが欠かせません。
ここでいう立入りは、単に常時作業するかどうかだけではありません。墨出し、床付け確認、出来形確認、配管確認、集水ますの設置、土止め材の点検、法面整形の補助、重機誘導、写真撮影、材料搬入、清掃、排水ポンプの確認など、一時的な作業も含めて実態を確認する必要があります。計画書では「機械施工」とされていても、現場では人が下りて確認する場面が多くあります。この一時的な立入りを見落とすと、対象判断と実作業がずれてしまいます。
施工計画を確認するときは、作業ステップごとに人の位置を追います。掘削開始前、一次掘削、土止め設置、二次掘削、床付け、砕石敷き、配筋、型枠、躯体施工、埋戻しまでの流れを見て、各段階で誰がどこに入るのかを確認します。特に床付け後は、測量、出来形確認、材料配置、仮設排水の調整などで作業員が底部に入ることが多くなります。掘削機械が主役の工程だけを見ていると、人が入る工程を見落としやすくなります。
また、立入禁止範囲の設定だけで対象判断を済ませてはいけません。計画上は立入禁止でも、実際に作業を進めるために立ち入る必要があるなら、計画と実態が合っていません。立入禁止範囲を設ける場合は、その範囲外からすべての作業が本当にできるのか、確認や検査をどう行うのか、緊急時の対応はどうするのかまで考える必要があります。形式的な立入禁止ではなく、作業方法そのものを確認することが重要です。
掘削面の下方に立ち入る作業がある場合は、崩壊、落石、飛来落下、重機接触、酸素欠乏、 湧水、転落、埋設物損傷などのリスクも合わせて整理します。88条申請の対象確認は、届出の有無を判定するだけでなく、作業員が危険な位置に入る計画をどう安全に管理するかを考える入口でもあります。掘削面の下方で作業する時間が短い場合でも、危険性が低いとは限りません。むしろ短時間作業ほど準備不足のまま入りやすいため、作業手順と立入管理を明確にしておく必要があります。
協力会社との認識合わせも欠かせません。元請の施工計画では人が入らない想定でも、専門業者は品質確認や段取り上、人が下りる前提で考えていることがあります。打合せでは「下に入らない予定ですか」ではなく、「どの作業で、誰が、どの位置に、どのくらいの時間入りますか」と具体的に確認します。この問い方に変えるだけで、対象判断に必要な情報が集まりやすくなります。
確認4 土止め支保工や関連する仮設計画を合わせて確認する
掘削工事では、地山の掘削そのものだけでなく、土止め支保工、腹起し、切梁、アンカー、法面保護、仮設道路、作業構台、昇降設備、排水設備などの関連仮設が安全性に大きく関わります。88条申請の対象を確認するときは、掘削深さだけを切り離して見るのではなく、掘削を成立させるための仮設計画全体を確認する必要があります。
土止め支保工を伴う場合、掘削手順と支保工の設置手順が一致しているかが重要です。計算上は安全でも、実際の施工で支保工の設置が遅れる、切梁を外すタイミングが早い、次段階の掘削が先行する、重機荷重が想定より近くにかかるといったことが起こると、危険性が高まります。届出資料や施工計画では、最終形だけでなく、各段階の仮設状態を示すことが大切です。
土止め支保工があるから安全、という判断も危険です。土止めの種類、根入れ、支点条件、施工精度、背面地盤、地下水、周辺荷重、近接構造物の有無によって、安全性は変わります。仮設計画と地盤条件が合っているか、施工中に想定外の変位や湧水が出た場合の対応が決まっているかを確認します。計測管理を行う場合は、管理値、測定頻度、異常時の連絡体制も明確にしておく必要があります。
法面掘削の場合も、勾配を決めるだけでは不十分です。地質に応じた法面勾配、段切り、雨水処理、表面保護、浮石除去、作業員の通行経路、上下作業の制限を確認します。掘削面が高くなる現場では、上部からの土砂や石の落下、法肩部の崩れ、重機走行による緩みが問題になります。法面の下方で作業する計画がある場合は、立入範囲と作業時間を最小化し、必要な防護措置を検討します。
仮設道路や作業構台も見落としやすい要素です。掘削部の近くを重機や車両が通る場合、その荷重が掘削面や土止めに影響することがあります。計画上の安全距離が確保されているか、路肩の崩れを防ぐ措置があるか、誘導員の配置や車両動線が整理されているかを確認します。掘削深さの確認だけでは、こうした周辺荷重のリスクは拾いきれません。
昇降設備や避難経路の確認も重要です。深い掘削部では、作業員が安全に出入りできる経路が必要です。はしご、階段、仮設通路、踊り場、照明、手すり、転落防止、緊急時の退避方法を確認します。湧水や降雨で足元が悪くなる現場では、通常時に問題がなくても、急な退避が難しくなることがあります。掘削工事の安全性は、作業そのものだけでなく、出入りと避難のしやすさに も左右されます。
関連仮設をまとめて確認することで、88条申請の対象漏れだけでなく、提出後の修正や現場での手戻りも減らせます。掘削範囲、土止め、作業員の立入位置、重機配置、排水、昇降、仮設道路を一体で見ることが、実務上の大きなポイントです。
確認5 地質・湧水・埋設物・周辺影響を施工前に整理する
掘削工事は、図面どおりに進むとは限りません。地質、地下水、既設埋設物、近接構造物、隣地、道路、河川、地下施設などの影響を受けやすい工事です。88条申請の対象を確認する際にも、これらの条件を施工前に整理しておくことで、対象判断の根拠が明確になり、計画変更時の対応もしやすくなります。
地質の確認では、柱状図や地盤調査結果をそのまま添付するだけでなく、施工上どのようなリスクがあるかに落とし込むことが大切です。砂質土で崩れやすいのか、粘性土で一見安定して 見えるが亀裂が入りやすいのか、礫や転石が多いのか、風化層があるのかによって、掘削面の管理方法は変わります。地盤調査点が少ない場合は、調査点と掘削範囲の位置関係も確認します。調査点から離れた場所で深い掘削を行う場合、想定と異なる地盤が出る可能性を考えておく必要があります。
湧水や地下水の確認も重要です。深い掘削では、湧水によって掘削面が緩み、床付け面が乱れ、作業環境が悪化することがあります。排水ポンプの能力、釜場の位置、濁水処理、雨天時の対応、停電時の予備対策、湧水増加時の作業中止基準を確認します。湧水がある現場では、作業員が掘削底に入る時間が長くなりやすく、滑りや転倒、機械との接触、退避遅れのリスクも増えます。
埋設物の確認では、図面調査、試掘、関係者立会い、現地マーキング、掘削手順を整理します。電気、通信、上下水、ガス、排水、既設杭、基礎、仮設材など、地下には図面にないものがある場合もあります。埋設物対応で手掘りや小型機械作業が増えると、作業員が掘削面の下方に入る機会も増えます。当初は機械施工だけの予定でも、埋設物確認のために人が入る計画に変わることがあるため、対象判断の再確認が必要になります。
周辺影響も無視できません。隣地建物、道路、歩道、擁壁、電柱、架空線、地下構造物、既設管、仮囲いなどが近い場合、掘削による沈下、変位、ひび割れ、振動、騒音、交通影響を確認します。周辺影響が大きい現場では、計測管理や近隣対応が必要になり、施工手順も複雑になります。施工手順が変われば、掘削面の高さ、作業員の立入位置、土止めの段階も変わる可能性があります。
施工前にこれらの条件を整理する目的は、書類を増やすことではありません。現場で起こり得る変更をあらかじめ想定し、88条申請の対象判断が途中で抜け落ちないようにするためです。掘削工事では、地盤条件の変化がそのまま安全計画の変更につながります。現場で新しい事実が分かったときに、誰が判断し、どの資料を更新し、届出の要否を再確認するのかを決めておくことが重要です。
確認6 工事開始日と計画変更時の再判定ルールを決める
88条申請の対象になる可能性がある掘削工事では、工事開始日の管理が非常に重要です。建設工事計画届として扱う仕事では、工事開始の日の14日前までに届け出る期限が関係します。対象判断が遅れると、書類作成だけでなく工程そのものに影響します。掘削工事は準備工、仮設工、試掘、先行掘削、本掘削など段階が分かれるため、どの時点を届出上の仕事の開始と見るかを早めに整理しておく必要があります。
実務で混乱しやすいのは、本格的に掘り始める日と、現場で関連作業を始める日が異なる場合です。準備工はすでに始まっているが、対象となる深い地山の掘削は後日という工程では、届出が必要な仕事の開始日をどう扱うかを確認する必要があります。安全側に考えるなら、対象となる掘削作業に入る日を明確にし、そこから逆算して社内確認、資料作成、所轄確認、届出提出の工程を組みます。
計画変更時の再判定ルールも欠かせません。掘削深さが増える、掘削範囲が広がる、法面から土止めに変更する、土止め形式を変える、作業員の立入方法が変わる、掘削機械の配置が変わる、周辺荷重が増える、排水方法が変わるといった変更は、対象判断や安全計画に影響します。変更のたびに「届出済みだ から問題ない」と考えるのではなく、当初計画と変更内容の差を確認することが大切です。
再判定の運用では、変更の入口を明確にします。現場からの口頭相談、施工図の改訂、協力会社からの施工要領変更、設計変更、地盤条件の報告、近隣対応による作業時間変更など、変更情報はさまざまな経路で入ってきます。これらを安全衛生担当者や工事担当者が把握できる仕組みにしておかないと、図面は変わっているのに届出判断は古いままという状態になりかねません。
書類管理では、最新版の図面と判断根拠をひもづけます。どの図面を使って最大掘削深さを確認したのか、どの施工ステップで作業員が下方に入るのか、どの地盤資料を参照したのか、どの仮設計画を前提にしたのかを記録します。後から確認したときに、判断の経緯が追えることが重要です。担当者の記憶に頼る運用では、異動や引き継ぎ、急な工程変更の際に抜けが発生します。
工事開始日までの準備としては、対象可能性の洗い出しを早い段階で行い、必要資料 の作成に時間を確保します。掘削工事の資料は、平面図、断面図、施工ステップ、土止め計画、地盤情報、周辺状況、作業員の立入計画など、多くの情報を整合させる必要があります。着手直前に対象と分かると、書類の作成だけでなく、施工計画そのものの見直しが必要になることもあります。工程を守るためにも、対象判断は早めに行うべきです。
掘削工事の対象漏れを防ぐ社内確認の進め方
掘削工事の88条申請対象を見落とさないためには、個人の経験だけに頼らない社内確認が必要です。経験豊富な担当者であっても、複数工区を同時に見ている場合や、設計変更が多い現場では見落としが起こります。逆に、経験の浅い担当者でも、確認項目と判断の流れが整っていれば、早い段階で対象可能性を拾い上げることができます。
社内確認では、まず掘削工事を一覧化します。工区ごと、工程ごと、掘削目的ごとに、最大深さ、掘削面の高さ、地山の有無、作業員の立入、土止めの有無、周辺影響、開始予定日を整理します。このとき、対象か対象外かをすぐに決めつけるのではなく、対象可能性 あり、確認中、対象外のように段階を分けて管理すると実務に合います。判断が難しい工区を早めに見える化することが重要です。
次に、工事担当、安全衛生担当、施工図担当、協力会社の認識を合わせます。掘削工事では、担当者ごとに見ている資料が異なることがあります。工事担当は工程表を見ており、施工図担当は最新図面を見ており、安全担当は安全書類を見ており、協力会社は現実の施工手順を見ています。これらが一致していないと、書類上の判断と現場の作業がずれます。対象確認の会議では、最新図面と施工手順を同じ場で確認することが効果的です。
判断に迷う場合は、迷っている理由を記録します。たとえば、最大深さが確定していない、地山の範囲が不明、作業員の立入有無が未確定、土止め形式が検討中、施工開始日が変わる可能性があるといった理由です。単に確認中とするだけでは、次に何を確認すればよいか分からなくなります。未確定事項を具体的に残しておけば、関係者への確認も進めやすくなります。
また、所轄への相談が必要になりそうな案件は、資料を整えて早めに動くことが大切です。相談時には、工事名だけでなく、掘削の深さ、地山の状況、作業員の立入、施工手順、仮設計画、工程を説明できるようにします。抽象的に「この工事は対象ですか」と聞くより、判断材料をそろえて相談するほうが、実務的な確認につながりやすくなります。
社内確認の最後には、変更時の連絡ルールを決めておきます。掘削深さや施工手順が変わったら誰に連絡するのか、協力会社からの変更提案を誰が受けるのか、最新版図面をどこで管理するのか、判断結果をどこに残すのかを決めます。88条申請の対象漏れは、最初の判断ミスだけでなく、変更情報が安全担当に届かないことで起こることも多いです。変更に強い確認体制をつくることが、対象漏れ防止につながります。
現場の記録と位置情報を活用して確認精度を高める
掘削工事の88条申請対象を見落とさないためには、机上の図面確認だけでなく、現場の状況を正確に記録することも重要です。掘削範囲、現況地盤高、床付け高、法面位置、土止 め位置、作業員の立入範囲、重機動線、周辺構造物との距離などは、現地で確認して初めて分かることがあります。図面と現場に差がある場合、その差が対象判断や安全計画に影響することもあります。
従来の現場記録では、写真を撮っても位置が分かりにくい、どの断面の写真か後で確認しづらい、図面との対応付けに時間がかかるといった課題がありました。掘削工事では日々状況が変わるため、記録の遅れや整理不足があると、判断根拠があいまいになりやすくなります。特に深い掘削や段階施工では、どの時点でどの高さの掘削面が発生していたのかを残しておくことが大切です。
現場での記録精度を高めるには、位置情報付きの写真、測点、点群、施工範囲の記録を活用する方法があります。掘削前の現況、一次掘削後、土止め設置後、床付け完了時、埋戻し前など、節目ごとに位置と状況を残しておけば、図面との照合や変更時の確認がしやすくなります。社内で対象判断を説明するときも、現場写真と位置が結びついていると、関係者が同じ状況を共有しやすくなります。
また、掘削範囲や深さを継続的に記録しておくことは、安全管理にも役立ちます。法肩の位置、掘削底の範囲、重機の作業位置、仮設通路、立入禁止範囲が記録されていれば、計画と実態のずれを見つけやすくなります。対象判断だけでなく、日々の安全巡視、協力会社との打合せ、出来形確認、変更協議にも使える情報になります。
掘削工事では、対象になるかどうかの判断を一度で終わらせるのではなく、現場の変化に合わせて確認を更新することが重要です。そのためには、現場の状態をできるだけ正確に、後から見返せる形で残す仕組みが必要です。紙の図面や通常の写真だけでは補いにくい部分を、位置情報や三次元的な記録で補うことで、確認作業の精度とスピードを高められます。
掘削工事の88条申請対象を見落とさないためには、最大深さ、地山の範囲、作業員の立入、土止めなどの仮設計画、地質や湧水、工事開始日と変更管理を一体で確認することが大切です。さらに、現場の状況を正確に記録し、図面や施工計画と結びつけて管理できれば、対象判断の根拠が明確になり、関係者間の認識違いも減らせます。現場の位置情報付き記録や点群活用を効率化したい場 合は、スマートフォンで高精度な位置情報と現場記録を扱えるLRTK Phoneの活用も、掘削工事の確認精度を高める選択肢になります。
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