88条申請の対象かどうかを確認するとき、最初に目に入りやすいのは高さや規模の数字です。ただし、数字だけを拾って終わると、足場の種類、設置期間、橋梁の支間、掘削面の下方への立入り、改造や解体を含むかどうかなどを見落とすことがあります。この記事では、工事担当者が現場計画の初期段階で確認しやすいように、高さと規模を軸にした6つの目安を整理します。
目次
• 88条申請の対象確認は高さと規模だけで終わらせない
• 目安1 31mを超える建築物や工作物は早い段階で確認する
• 目安2 足場は種類と高さと設置期間を合わせて見る
• 目安3 型枠支保工は支柱高さ3.5m以上を起点に見る
• 目安4 架設通路は高さと長さの両方が10m以上かを見る
• 目安5 地山掘削は高さまたは深さ10m以上かを見る
• 目安6 橋梁やずい道など規模基準が別にある工事を拾う
• 高さや規模の判定で迷いやすい実務上の注意点
• 対象確認を現場で運用するための記録の残し方
• まとめ 88条申請の対象確認を早めに固める
88条申請の対象確認は高さと規模だけで終わらせない
実務で「88条申請」と呼ばれる手続きは、労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出を指して使われることが多い言葉です。厳密には許可を求める「申請」ではなく、一定の建設物、機械等、建設工事などについて事前に計画を届け出る手続きとして整理されます。そのため、社内では通称として88条申請という言葉を使っていても、提出書類や所轄への確認では「計画の届出」「機械等設置・移転・変更届」「建設工事計画届」など、該当する制度名を取り違えないことが大切です。
88条申請の対象確認では、高さや規模の数字が入口になります。たとえば、建築物や工作物の高さ、足場の高さ、型枠支保工の支柱高さ、架設通路の高さと長さ、地山掘削の高さや深さ、橋梁の最大支間など です。これらは現場の図面や施工計画書から比較的拾いやすいため、担当者が初期チェックを行う際の目安になります。
一方で、対象かどうかは単純な高さだけで決まりません。足場であれば、つり足場や張出し足場なのか、それ以外の足場なのかによって見方が変わります。型枠支保工であれば、建物全体の高さではなく支柱の高さを見ます。地山掘削であれば、掘削の高さまたは深さだけでなく、作業内容や労働者がどこに立ち入るかも関係します。橋梁では全長ではなく最大支間が問題になる場合があります。
また、届出の種類によって提出期限の考え方も異なります。足場、型枠支保工、架設通路など一定の機械等を設置し、移転し、または主要構造部分を変更する場合は、原則としてその工事の開始前に機械等設置・移転・変更届の要否を確認します。一方、一定規模の建設工事や土石採取業の仕事は、建設工事計画届として仕事の開始前に確認します。一般に、所轄労働基準監督署長への届出では30日前または14日前といった期限が問題になり、さらに特に大規模な仕事では厚生労働大臣への届出が必要になる区分もあります。したがって、同じ88条関連でも、設備の届出なのか、建設工事の計画届なのかを最初に分けてお くことが重要です。
この記事で紹介する6つの目安は、最終判断そのものではなく、見落としを減らすための初期スクリーニングです。高さや規模で少しでも該当しそうな場合は、施工計画が固まりきる前に図面、工程、仮設計画、作業方法をそろえ、所轄の労働基準監督署や社内の安全衛生担当者に確認できる状態にしておくと、後戻りを減らせます。
目安1 31mを超える建築物や工作物は早い段階で確認する
最初の目安は、建築物や工作物の高さです。一定規模の建設工事として、建築物または工作物の高さが31mを超える場合は、88条申請の対象確認を早い段階で行う必要があります。ここで注意したいのは、「31m以上」と思い込むのではなく、「31mを超える」という表現で整理することです。現場では数字だけが独り歩きしやすいため、31m付近の建物や工作物では、設計図、立面図、断面図、仮設計画のどの寸法を基準に判断しているのかを明確にしておく必要があります。
この確認で対象となり得るのは、新築だけではありません。建設、改造、解体、破壊を伴う仕事は確認対象に入る可能性があります。既存建物の一部改修であっても、高さのある工作物を扱う場合や、上部での解体、外装更新、設備更新、仮設構造の設置を伴う場合には、「新築ではないから関係ない」と判断せず、工事内容を分解して見ることが大切です。
実務上の落とし穴は、建物高さの確認が意匠図や確認申請関係の図面だけで終わってしまうことです。安全衛生上の届出では、現場で実際にどのような作業を行うか、どの高さで作業するか、どのような仮設設備を設けるかが問題になります。建物本体が31mを超えない場合でも、足場や型枠支保工、架設通路など別の設備基準に該当することがあります。反対に、橋梁のように別の規模基準で見るべきものを同じ基準に混ぜてしまうと、確認の筋道が乱れます。
高さを確認するときは、計画初期の概算値ではなく、提出や相談の時点で説明できる寸法として整理することが重要です。設計地盤面、施工時の作業床、仮設足場の最上部、屋上設備、塔屋、工作物の頂部など、どの高さを見ているのかを社内で統一しておきます。図面上の寸法が複数ある場合は、最も安全側に見た高さ、作業実態に近い高さ、届出判断に使った高さを分けて記録しておくと、後から説明しやすくなります。
特に解体工事や改修工事では、既存図面が古い、現況と図面が一致しない、外部足場の高さが段階的に変わる、屋上設備まわりだけ高所作業になるといったことが起こります。このような場合に、当初図面だけで「対象外」と決めてしまうのは危険です。現地調査で高さを確認し、必要に応じて写真や測定記録を残して、施工計画と照合する流れを作っておくことが望まれます。
目安2 足場は種類と高さと設置期間を合わせて見る
2つ目の目安は足場です。足場は88条申請の対象確認で頻繁に出てくる項目です。足場については、つり足場、張出し足場、それ以外の足場を分けて確認します。つり足場や張出し足場は、高さ10m以上という条件だけで考えるのではなく、足場の種類そのものから届出対象になり得るものとして拾い上げます。つり足場、張出し足場以外の足場については、高さが10m以上の構造かどうかが大きな確認点になります。
足場では設置期間も重要です。機械集材装置、運材索道、架設通路または足場については、組立てから解体までの期間が60日未満のものが除外される扱いがあります。したがって、足場の対象確認では、高さだけを見て終わるのではなく、足場の種類、構造上の高さ、組立てから解体までの期間を工程表と合わせて確認します。
現場で多い誤りは、足場の高さだけを見て、設置期間や足場の種類を後回しにすることです。たとえば、高さが10m以上ある足場でも、実際の組立てから解体までの期間がどうなるかを工程表で確認しなければ、届出要否の整理が不十分になります。また、足場の一部だけが10mを超える場合、建物の片面だけ高くなる場合、段差地に設置する場合、屋上や法面に近い場所に組む場合などは、図面上の高さと現場での見え方がずれることがあります。
足場の対象確認では、まず足場の種類を決めます。外部足場、内部足場、つり足場、張出し足場、部分足場、設備工事用の仮設足場など、呼び方が現場ごとに変わることがあります が、届出判断では安全衛生上の構造と設置形態が重要です。施工計画書や仮設計画図に記載された名称だけでなく、実際にどのように支持され、どこに荷重がかかり、どの範囲に作業床が設けられるかを確認します。
次に高さを確認します。足場の高さは、建物の階数だけでは判断できません。1階あたりの階高が大きい施設、吹抜けや大空間、斜面地、地下階を伴う建物、屋上設備まわりの仮設では、階数と高さが一致しないことがあります。現場担当者は「何階建てか」ではなく、足場の最下部から上部までの寸法、作業床の位置、手すりや養生材を含めた仮設構造の範囲を図面で確認する必要があります。
さらに設置期間を確認します。設置期間は工程表の開始日と終了日だけでなく、実際に組み立てた日、部分的に解体する日、盛替えを行う日、同じ場所で継続使用する期間を含めて整理します。外装工事、設備工事、検査、手直しが重なると、当初予定より足場が長く残ることがあります。60日未満で終わる予定だった足場が、工程変更で60日以上になる可能性がある場合は、早めに安全衛生担当者へ共有し、対象確認をやり直すことが大切です。
足場は現場の安全に直結するだけでなく、近隣、道路、第三者動線にも影響します。高さと設置期間だけでなく、敷地境界、道路占用、搬出入経路、落下物対策、強風時の対応、養生材の範囲もあわせて検討することで、88条申請の対象確認だけでなく、施工中のトラブル予防にもつながります。
目安3 型枠支保工は支柱高さ3.5m以上を起点に見る
3つ目の目安は型枠支保工です。型枠支保工では、支柱の高さが3.5m以上かどうかが重要な入口になります。ここで見るのは、建物全体の高さではなく、コンクリートを打設する型枠を支える支柱の高さです。対象確認では、コンクリート構造物の概要、構造、材質、主要寸法、設置期間などを整理する必要があるため、単に「高い支保工があるか」ではなく、どの区画にどの高さの支柱が入るかを図面で説明できる状態にしておくことが重要です。
型枠支保工で注意したいのは、足場や架設通路にある60日未満の除外をそのまま当てはめないことです。型 枠支保工は、支柱高さが3.5m以上かどうかを起点に、設置期間の長短だけで対象確認から外さないようにします。短期間の仮設だから届出確認が不要だと決めつけると、重要な計画確認を落とすおそれがあります。
型枠支保工でよくある見落としは、階高だけで判断してしまうことです。建物の階高が3.5m未満に見えても、梁下、スラブ下、段差部、ピット、地下階、大梁まわり、設備開口部、斜めスラブなどで支柱高さが大きくなる場合があります。逆に、階高が大きい建物でも、支保工の組み方や作業床の位置によって、確認すべき支柱高さの取り方が変わることがあります。図面上の階高と、実際の支柱高さを混同しないことが大切です。
型枠支保工は、短期間の仮設であっても、コンクリート打設時には荷重が集中し、組立て、打設、養生、脱型、撤去の各段階で危険が変化します。支柱高さが3.5m以上となる部分がある場合は、対象になるかどうかだけでなく、支柱の配置、根太や大引きの条件、水平つなぎ、筋かい、沈下防止、打設順序、打設速度、作業員の立入範囲まで一体で確認する必要があります。
また、型枠支保工では、施工中の変更が起こりやすい点にも注意が必要です。現場で部材が変更される、支柱のピッチが変わる、段差部の納まりが変わる、設備開口との干渉で一部の支保工を組み替えるといった変更は珍しくありません。届出対象かどうかを当初計画だけで判断して終わりにすると、現場変更後の状態が計画と合わなくなるおそれがあります。
実務では、型枠支保工の高さ確認を、躯体図、型枠支保工計画図、支保工組立図、コンクリート打設計画、工程表とセットで行うと整理しやすくなります。支柱高さが3.5mに近い区画、段差がある区画、打設荷重が大きい区画は、図面に印を付けて安全衛生担当者や協力会社と共有します。支柱高さの根拠を口頭説明に頼るのではなく、図面上に寸法として残しておくことが、差戻しや現場での認識違いを防ぐ近道です。
目安4 架設通路は高さと長さの両方が10m以上かを見る
4つ目の目安は架設通路です。架設通路は、足場や型枠支保工に比べると見落とされやすい項目です 。確認の入口は、高さと長さがそれぞれ10m以上かどうかです。つまり、高さだけが10m以上でも、長さだけが10m以上でも、同じ条件にはなりません。高さと長さの両方を確認し、さらに組立てから解体までの期間が60日未満のものは除外される扱いも踏まえて、工程と照合する必要があります。
架設通路は、現場内の仮設動線として計画されることが多く、名称もさまざまです。仮設通路、歩廊、昇降通路、連絡通路、渡り通路、作業員通路など、現場では用途や形状に応じて呼び分けられます。しかし、届出対象の確認では、呼び名よりも構造、設置場所、高さ、長さ、使用目的が重要です。高所に設ける作業員動線、道路や構造物をまたぐ通路、法面や掘削部を横断する通路、建物間をつなぐ通路などは、早めに寸法を確認する必要があります。
架設通路で迷いやすいのは、高さの取り方です。地盤が水平でない場合、通路の一端と他端で高さが異なる場合、掘削部の上をまたぐ場合、盛土や仮設ステージの上に通路を設ける場合は、どの位置から高さを測るかを明確にしなければなりません。図面では問題ないように見えても、現地の高低差を反映すると10mに近づくことがあります。測量値や現況地盤の情報を施工計画に反映し てから判断することが大切です。
長さについても同じです。平面図上の水平距離だけで見るのか、通路の実延長で見るのか、階段や傾斜部を含めるのか、折れ曲がり部分をどう扱うのかを社内で確認しておく必要があります。特に、現場内の仮設動線は工区変更や搬入計画の変更によって延長されることがあります。当初は短い通路として計画していたものが、施工段階で連結され、結果として長さの条件に近づくこともあります。
架設通路は、使用者が多くなるほどリスクが高まります。作業員だけでなく、検査員、発注者、近隣関係者、他工区の作業員が通行する場合、幅員、手すり、床材、滑り止め、照明、避難経路、落下物対策を含めて検討が必要です。88条申請の対象確認を行う段階で、単に高さと長さの数字を見るだけでなく、誰が、いつ、どの頻度で、何を持って通るのかまで確認しておくと、実際の安全計画も組み立てやすくなります。
目安5 地山掘削は高さまたは深さ10m以上かを見る
5つ目の目安は地山掘削です。地山の掘削では、掘削の高さまたは深さが10m以上かどうかが重要な確認点になります。ここでいう高さまたは深さは、掘削面の規模を把握するためのものであり、単に掘削土量が多いか少ないかでは判断できません。深い掘削、切土、法面掘削、造成、擁壁工事、地下構造物の施工などでは、早い段階で掘削断面を確認しておく必要があります。
地山掘削で注意したいのは、除外される条件があることです。ずい道等の掘削や岩石の採取のための掘削は、この区分とは別に整理されます。また、掘削機械を用いる作業で、掘削面の下方に労働者が立ち入らないものは除かれる扱いがあります。したがって、10m以上という数字だけで即断するのではなく、作業方法、機械の配置、労働者の立入範囲、掘削面下方での作業の有無を確認することが必要です。
現場で起こりやすいのは、「機械で掘るから対象外」と考えてしまうことです。しかし、掘削機械を使っていても、掘削面の下方に作業員が入る場面があれば、リスクの見方は変わります。床付け確認、測量、丁張り、排水設備の設置、土留め部材の確認、法面整形、検査、写真撮影など、短時間でも人が入る作業がある場合は、施工計画上どのように扱うかを確認しなければなりません。
地山掘削では、計画段階の断面と実際の掘削形状が変わりやすい点も重要です。地質条件、湧水、埋設物、隣接構造物、施工ヤードの制約、搬出入経路などによって、勾配や段切り、掘削深さが変更されることがあります。設計上は10m未満でも、現場条件により一部で10mに近づく場合があります。特に段差地や斜面地では、どの位置を基準に高さや深さを測るかによって判断が変わることがあるため、測点を明確にして記録することが大切です。
また、地山掘削は88条申請の対象確認だけでなく、土砂崩壊、転落、重機接触、湧水、酸欠、埋設物損傷など、多くの安全課題とつながります。対象かどうかを確認する際には、掘削深さ、法面勾配、土質、地下水、周辺荷重、仮設排水、立入禁止範囲、重機動線をまとめて整理します。安全衛生担当者が見る資料と、施工担当者が現場で使う資料を分けすぎないことが、実効性のある管理につながります。
目安6 橋梁やずい道など規模基準が別にある工事を拾う
6つ目の目安は、橋梁、ずい道、圧気工法など、建築物の高さや足場の高さだけでは拾えない工事です。橋梁では、最大支間50m以上の橋梁の建設等が確認対象となり得ます。また、最大支間30m以上50m未満の橋梁でも、上部構造の建設等で、人口集中地域内の道路上や道路に隣接した場所、鉄道の軌道上や軌道に隣接した場所など、施工場所の条件によって確認が必要になる場合があります。
橋梁で注意したいのは、全長と最大支間を混同しないことです。全長が長い橋でも、支間の取り方によって確認すべき区分が変わる場合があります。反対に、全体としては小規模に見える橋梁でも、特定の支間が大きい場合や、道路、鉄道、第三者動線に近接して作業する場合は、早めの確認が必要です。橋梁工事では、架設方法、ベント、クレーン配置、仮設支保工、交通規制、夜間作業の有無も安全計画に直結します。
ずい道等の建設等についても、別の目線が必要です。ずい道等では、内部に労働者が立ち入るかどうかが 重要な確認点になります。単にトンネルという名称が付いているかどうかではなく、施工中に人が内部に入る作業があるか、掘削、支保、覆工、設備設置、点検などの工程がどのように行われるかを確認します。無人化施工や機械化施工が計画されている場合でも、点検や補助作業で人が入る可能性があれば、作業実態を慎重に見る必要があります。
圧気工法による作業も、規模の数字だけでは拾いにくい項目です。圧気工法は、予定最高気圧などによって届出先や期限の整理が変わることがあるため、高さや深さの条件だけを見ていると確認漏れにつながります。地下工事、河川や海域に近い工事、軟弱地盤での作業、密閉性の高い空間を伴う作業では、工法そのものが安全衛生上の確認対象にならないかを確認しておく必要があります。
さらに、石綿等の除去作業のように、高さや規模の数字だけでは拾いにくい計画届の対象もあります。この記事の主題は高さと規模からの初期確認ですが、実際の現場では、建築物の構造、使用材料、解体や改修の内容、特殊な作業環境もあわせて確認する必要があります。高さや支間のチェックで対象外に見えても、工法や有害物の観点から別の届出が必要になる可能性があるためです。
橋梁やずい道のような土木工事では、設計部門、施工部門、安全部門、協力会社の間で使う言葉が異なることがあります。設計図では「支間」、施工計画では「架設ブロック」、工程表では「上部工」、安全書類では「高所作業」や「重機作業」と表現されることがあります。88条申請の対象確認では、これらを同じ工事範囲としてつなぎ、どの基準に該当する可能性があるかを一覧化しておくと、確認漏れを減らせます。
高さや規模の判定で迷いやすい実務上の注意点
高さや規模を確認するときに最も大切なのは、誰が見ても同じ判断に近づくように、基準点と対象範囲を明確にすることです。建物高さ、足場高さ、支柱高さ、通路高さ、掘削深さ、最大支間は、それぞれ測り方が異なります。すべてを同じ「高さ」という言葉でまとめてしまうと、図面確認の段階で認識違いが起こります。
たとえば、建物高さ では設計地盤面からの高さを見ているのか、現況地盤からの高さを見ているのか、屋上部分や塔屋を含めているのかが問題になります。足場では、足場の最下部から最上部までなのか、作業床の高さなのか、外部養生を含めるのかが問題になります。型枠支保工では、階高ではなく支柱の高さを見ます。架設通路では、通路の高さと長さの両方を見ます。地山掘削では、掘削の高さまたは深さに加えて、作業員がどこに立ち入るかを確認します。
次に、工事の途中変更に対応できるようにすることです。88条申請の対象確認は、着工前の一度きりの作業ではありません。工程変更、仮設変更、施工範囲の追加、支保工の組替え、足場の存置期間延長、掘削断面の変更などが起きれば、当初の判断が変わる可能性があります。特に、対象外として進めていた計画が途中で対象に近づく場合は、気づいた時点で早めに安全衛生担当者へ共有する必要があります。
また、対象確認を担当者個人の経験に頼りすぎないことも重要です。ベテラン担当者であれば、図面を見ただけで危険箇所や届出対象の可能性に気づけることがあります。しかし、属人的な判断のままでは、担当替えや協力会社の変更があったときに漏れが生じます。高さや規 模の確認項目を社内のチェックシートや施工計画レビューに組み込み、誰が確認しても同じ資料にたどり着ける状態を作ることが必要です。
さらに、所轄による確認の進め方や、提出時に求められる資料の粒度に差が出ることもあります。法令上の対象範囲を押さえることは前提ですが、実際の届出では、工事概要、配置図、平面図、立面図、断面図、組立図、工程表、災害防止措置の説明など、現場の状況を説明する資料が求められます。対象かどうかが微妙な場合ほど、早めに資料をそろえて相談できる状態にしておくと、工程への影響を小さくできます。
対象確認を現場で運用するための記録の残し方
88条申請の対象確認を実務で機能させるには、判断結果だけでなく、判断に使った根拠を残すことが重要です。「対象外と判断した」「対象になる可能性がある」だけでは、後から見返したときに、どの高さを測ったのか、どの工程を前提にしたのか、誰に確認したのかが分からなくなります。記録が残っていないと、工程変更時の再確認も難しくなります。
まず残すべきなのは、対象設備や対象工事の名称です。足場、型枠支保工、架設通路、地山掘削、橋梁、ずい道など、どの区分で確認したのかを明確にします。次に、高さや規模の数値を残します。足場であれば種類、高さ、組立てから解体までの期間を確認します。型枠支保工であれば支柱高さ、架設通路であれば高さと長さ、地山掘削であれば高さまたは深さ、橋梁であれば最大支間を記録します。
そのうえで、数値の根拠となる図面番号、図面名、改訂番号、作成日を残します。図面が更新されるたびに数値が変わる可能性があるため、どの版をもとに判断したかを明確にしておくことが大切です。現地測定を行った場合は、測定日、測定者、測定位置、写真、簡単なスケッチを残します。写真だけでは寸法が分からないことがあるため、写真と図面、測定メモを組み合わせて残すと説明しやすくなります。
工程の記録も欠かせません。足場や架設通路では、設置期間が判断に影響する場合があります。工程表の予定だけでなく、実際の組立日、使用開始日、解体日、延長 や変更の理由を残しておくと、後から確認しやすくなります。型枠支保工では、組立、検査、打設、養生、解体のタイミングを記録し、支保工の変更や打設順序の変更があった場合は、変更後の計画図と合わせて保存します。
対象確認の記録は、紙のファイルに閉じるだけでは現場で活用しにくいことがあります。現場写真、位置情報、図面、測定値、確認メモを紐づけて残せる仕組みを使うと、後から「どの場所の話か」を確認しやすくなります。特に、大規模現場や複数工区の現場では、同じような足場や支保工が複数あり、口頭だけでは場所を取り違えることがあります。位置と写真をセットで残す運用は、対象確認だけでなく、日々の安全管理にも役立ちます。
まとめ 88条申請の対象確認を早めに固める
88条申請の対象を高さや規模から確認するときは、数字を単独で見るのではなく、工事の種類、設備の種類、設置期間、作業方法、労働者の立入範囲を組み合わせて判断することが大切です。建築物や工作物では31mを超えるか、足場では種類と高さと設置期間、型枠支保工では支柱高さ3.5m以上、架設通路では高さと長さがそれぞれ10m以上か、地山掘削では高さまたは深さ10m以上か、橋梁やずい道では最大支間や内部立入りの有無などを確認します。
ただし、この記事で整理した目安は、対象確認の出発点です。最終的な届出要否、提出期限、添付資料、相談の進め方は、工事内容や所轄の確認によって整理が必要です。特に、31m付近、10m付近、3.5m付近など基準値に近い計画や、工程変更で設置期間が延びる計画、途中で仮設構造が変わる計画では、安全側に早めの確認を行うことが望まれます。
実務担当者が最初に行うべきことは、対象になりそうな工事や仮設設備を拾い上げ、図面と工程表に基づいて高さや規模を記録することです。そのうえで、対象外と判断した場合でも、なぜ対象外と考えたのかを残しておきます。対象になる可能性がある場合は、施工計画が固まりきる前に、安全衛生担当者、協力会社、所轄への確認に進めるよう準備します。これにより、届出漏れ、資料不足、工程の手戻りを減らしやすくなります。
88条 申請の対象確認は、単なる書類作成ではありません。現場でどの高さに人が立ち、どの仮設構造を使い、どの範囲に危険が生じるかを事前に見える化する作業です。高さや規模を正しく把握し、図面、写真、測定値、位置情報を残しておけば、届出判断だけでなく、作業手順の見直し、立入禁止範囲の設定、協力会社との共有、現場巡視にも活用できます。
こうした現場記録を日常的に残すには、測量、写真、位置情報を現場で素早く扱える環境が役立ちます。高さや規模の確認、仮設位置の記録、施工前後の状況整理をより確実に進めたい場合は、スマートフォンを活用して位置情報付きの現場記録を残せるLRTK Phoneへ自然に検討を広げることで、88条申請の対象確認と日々の安全管理をつなげやすくなります。
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