88条申請の対象かどうかは、工事件名や元請・下請の立場だけで決まるものではありません。重要なのは、労働安全衛生法第88条で求められる計画の届出に該当する規模、構造、作業方法、仮設設備、危険有害作業の有無を、着工前の計画段階で整理できているかどうかです。特に建設現場では、建築物、工作物、橋梁、ずい道、地山掘削、足場、型枠支保工、石綿等の除去、焼却施設の解体など、対象候補が複数の切り口で現れます。この記事では、「88条申請 対象」で検索する実務担当者が、社内確認や監督署 への事前相談に進む前に迷いやすい点を、5つの確認ポイントとして実務目線で整理します。
目次
• 88条申請の対象は工事件名ではなく計画の中身で判断する
• 建築物や工作物は高さと工事内容を確認する
• 橋梁やずい道は支間と立入り条件を確認する
• 掘削や圧気工法は深さと作業方法を確認する
• 足場や型枠支保工など仮設設備を確認する
• 対象判断を工程と記録に落とし込む
88条申請の対象は工事件名ではなく計画の中身で判断する
88条申請の対象確認で最初に押さえたいのは、「この工事名なら対象」「この業者なら対象外」といった単純な判定をしないことです。労働安全衛生法第88条は、危険または有害な作業を必要とする機械等の設置、移転、主要構造部分の変更に関する届出と、建設業に属する仕事のうち一定の大規模・高リスクな仕事に関する届出を規定しています。第1項と第2項では原則として開始日の30日前までの届出が定められ、第3項では建設業その他の一定業種の仕事で省令に定めるものについて、仕事開始前の届出が位置づけられています。([ジャイシュ][1])
実務では、88条申請という言葉が広く使われるため、機械等設置届、建設工事計画届、地山掘削や橋梁・ずい道などの計画届が混同されることがあります。しかし、対象確認では、まず「何を設置するのか」「どのような構造物を建設、改造、解体、破壊するのか」「労働者がどこに立ち入るのか」「危険有害作業があるのか」という順に、計画の実体を見る必要があります。書類名だけを先に決めるのではなく、工事内容を法令上の対象区分に当てはめる作業が先です。
たとえば、同じ建築工事でも、高さが基準に届かない一般的な建物工事と、高さが大きい工作物の解体では、確認すべき論点が変わります。同じ土木工事でも、浅い造成や排水溝整備と、深さのある地山掘削、ずい道内部に労働者が入る作業、圧気工法を伴う作業では、88条申請の対象可能性が大きく異なります。また、工事本体だけを見て対象外と判断しても、現場内に設置する足場や型枠支保工、架設通路が別の切り口で届出対象になることがあります。
対象確認で失敗しやすいのは、発注図、施工計画書、仮設計画、工程表が別々に作られ、それぞれの担当者が自分の範囲だけで判断してしまうケースです。建築担当は建物高さを見て対象外と考え、土木担当は掘削深さを見落とし、仮設担当は足場や型枠支保工の設置期間を後回しにする、といった分断が起きると、開始直前になって届出が必要だったことに気づく可能性があります。88条申請は、着工直前の事務処理ではなく、安全衛生上重要な計画を工事開始前に確認するための手続きです。そのため、対象候補は見積段階、施工計画の初期段階、仮設計画の作成段階で拾い上げることが望ましいです。
特に「対象工事がわからない」と いう悩みは、対象一覧を暗記していないことよりも、現場情報を対象判定に使える形で整理できていないことから生じます。工事名称、施工場所、構造物の高さ、橋梁の最大支間、ずい道の延長、掘削の深さ、作業員の立入り範囲、圧気工法の有無、石綿等の有無、焼却施設の解体の有無、足場や型枠支保工の規模と設置期間を同じ確認シートで見るだけでも、判断の抜けはかなり減ります。
また、対象かどうかが微妙な場合に「たぶん不要」と現場内だけで処理するのは避けるべきです。88条申請は、工事開始日、届出先、添付書類、計画変更時の扱いが工程に直結します。対象外と判断した場合でも、なぜ対象外と考えたのかを図面寸法、数量、施工範囲、作業方法と結び付けて記録しておくと、後から説明しやすくなります。対象か対象外かの結論だけではなく、判断に使った根拠を残すことが、実務上の安全策になります。
建築物や工作物は高さと工事内容を確認する
建築物や工作物に関する88条申請の確認では、まず高さの基準と工事内容をセットで確認します。労働安全衛生規則第90条では、法第88条第3項の対象となる仕事として、高さ31メートルを超える建築物または工作物の建設、改造、解体または破壊の仕事が挙げられています。ここで重要なのは、単に「新築かどうか」だけでなく、改造、解体、破壊も対象確認に含めることです。高さ31メートルを超える建築物や工作物であれば、建てる工事だけではなく、既存構造物に手を入れる工事でも確認が必要になります。([厚生労働省][2])
実務で迷いやすいのは、建築物と工作物の境界、または高さの測り方です。一般的な建築物であれば設計図に高さが明示されていますが、プラント設備、塔状設備、煙突、鉄塔、広告塔、支持構造物、擁壁、架台など、工作物に近いものでは、建築図だけで高さが整理されていない場合があります。対象確認では、建築確認上の分類だけでなく、実際に建設、改造、解体、破壊する対象物がどの高さを持つのかを、立面図、断面図、配置図、既存図、現地測量結果から確認する必要があります。
高さ31メートルを超えるかどうかが境界に近い場合は、計画図上の寸法だけでなく、現況地盤、基準面、仮設ステージ、解体時の作業床、屋上付属物の扱いも整理しておくと安全です。たとえば、建物本体の高さは基準未満でも、屋上に設けられた 工作物の改造や撤去が別途ある場合、または塔状の工作物を扱う場合には、対象物ごとに切り分けて確認することが必要です。現場でよくある「建物全体ではなく一部だけだから対象外」といった判断は、工事範囲や危険性によっては不十分になることがあります。
建築物や工作物の対象確認では、工事内容の言葉にも注意が必要です。改修、更新、撤去、改良、補強、取替え、減築、部分解体といった表現は、契約書や施工計画書では便利ですが、88条申請の対象確認では、実際に「建設、改造、解体または破壊」に当たる作業が含まれるかを見ます。たとえば、設備更新と呼ばれていても、既存工作物の主要な構造部分を撤去したり、支持部材を改造したりする場合は、単なる設備交換ではなく、工作物の改造や解体を含む可能性があります。
また、建築物や工作物の工事では、仮設足場や仮設通路、型枠支保工、クレーン作業、掘削作業など、別の届出や安全衛生上の確認事項が重なることがあります。高さ31メートルを超える建築物の工事であれば、建築物本体の計画届だけを考えるのではなく、外部足場の高さ、つり足場や張出し足場の有無、型枠支保工の支柱高さ、地山掘削の深さも同時に確認すべきです。88条申請の対象 確認は、工事本体と仮設を分けすぎると漏れやすくなります。
解体工事では、さらに注意が必要です。既存図が古い、増改築履歴が不明、現地と図面が一致しない、付属工作物の高さが図面に載っていない、といったことが珍しくありません。対象外と判断する前に、現地確認、写真記録、測量結果、既存資料の照合を行い、どの構造物をどの範囲で解体するのかを明確にしておく必要があります。特に高さのある工作物を部分的に撤去する場合、足場や重機配置、作業床、立入禁止範囲、落下物対策も計画に関係します。
建築物や工作物の確認ポイントは、最終的には「対象物の高さ」「対象物の種類」「工事内容」「仮設計画」「作業開始日」の5つを同じ資料上で結び付けることです。高さだけを見て安心するのではなく、その高さの構造物に対して何をするのかを確認します。対象となる可能性がある場合は、工程表上で届出準備、社内確認、図面修正、提出、控えの保管までの期間を確保しておくことが重要です。
橋梁やずい道は支間と立入り条件を確認する
橋梁やずい道は、88条申請の対象確認で特に見落としが起きやすい分野です。建築物のように高さだけで判断できるものではなく、橋梁では最大支間、ずい道では内部への労働者の立入り、延長や立坑の条件、大規模性などを確認する必要があります。労働安全衛生規則第90条では、最大支間50メートル以上の橋梁の建設等の仕事、一定の場所で行われる最大支間30メートル以上50メートル未満の橋梁上部構造の建設等の仕事、ずい道等の建設等の仕事が対象として挙げられています。([厚生労働省][2])
橋梁工事でまず確認すべきなのは、橋長ではなく最大支間です。現場では「橋の全長」「施工延長」「対象径間」「上部工の施工範囲」など複数の寸法が使われますが、対象判定では最大支間という切り口が重要になります。橋全体の長さが長くても各支間が短い場合と、橋長はそれほど長くなくても一つの支間が大きい場合では、判断が変わる可能性があります。設計図、構造一般図、橋梁台帳、施工計画書で、どの径間が対象工事に含まれるのかを確認してください。
最大支間30メー トル以上50メートル未満の橋梁上部構造については、場所の条件が関係します。人口が集中している地域内の道路上や道路に隣接した場所、または鉄道の軌道上や軌道に隣接した場所など、周辺環境によって対象となる可能性があるため、構造条件だけでは判断できません。橋梁の上部構造を扱う場合は、支間、施工場所、周辺道路、鉄道、第三者動線、交通規制計画を合わせて確認することが大切です。
橋梁の改造、解体、撤去、架替えでも注意が必要です。新設工事であれば設計図から支間を確認しやすい一方、既設橋の撤去や補修では、対象となる作業範囲が部分的であることから、届出対象の確認が後回しになりがちです。しかし、桁の撤去、上部構造の解体、支承交換に伴う仮受け、既設部材の切断や揚重などは、重大災害につながる危険がある作業です。工事件名が「補修」や「長寿命化」であっても、実際に上部構造の建設等に当たる作業があるかを確認する必要があります。
ずい道等の工事では、内部に労働者が立ち入るかどうかが重要です。労働安全衛生規則第90条では、ずい道等の建設等の仕事について、内部に労働者が立ち入らないものを除くとされています。つまり、ずい道やトンネルに関係する工事であって も、すべてが同じように対象になるわけではありません。遠隔施工や外部からの作業だけで完結するものと、坑内に作業員が入って掘削、支保、覆工、点検、補修、撤去を行うものでは、確認すべき内容が異なります。
ずい道工事では、延長、掘削断面、地質、湧水、ガス、換気、避難経路、支保パターン、施工順序が安全計画に大きく影響します。特に長大ずい道や立坑を伴う工事、圧気工法を伴う工事では、法第88条第2項に基づく特に大規模な仕事の届出対象に該当するかも確認が必要です。厚生労働大臣に対する計画届の対象には、高さ300メートル以上の塔、堤高150メートル以上のダム、最大支間500メートル以上の橋梁、長さ3000メートル以上のずい道等、長さ1000メートル以上3000メートル未満で深さ50メートル以上の立坑を伴うずい道等、ゲージ圧力0.3メガパスカル以上の圧気工法による作業などが示されています。([厚生労働省][3])
橋梁やずい道の対象確認で大切なのは、専門部署だけに判断を閉じないことです。構造担当は支間や断面を把握していますが、現場担当は施工ヤード、交通規制、仮設桟橋、作業員の立入り範囲を把握しています。安全担当は届出や添付書類を把握していますが、工程担当は実際の開始日や段階施 工を把握しています。これらの情報が分断されると、対象判定の根拠が曖昧になります。初期段階で、支間、施工場所、立入り範囲、工程、仮設計画を一枚の確認資料にまとめておくと、後工程での手戻りを防ぎやすくなります。
掘削や圧気工法は深さと作業方法を確認する
掘削に関する88条申請の対象確認では、「掘る深さ」と「作業員がどの位置で作業するか」をセットで確認します。労働安全衛生規則第90条では、掘削の高さまたは深さが10メートル以上である地山の掘削の作業を行う仕事が対象として挙げられています。ただし、ずい道等の掘削や岩石採取のための掘削は別の扱いになり、掘削機械を用いる作業で掘削面の下方に労働者が立ち入らないものは除かれます。つまり、深さだけでなく、掘削の目的、作業方法、労働者の立入り位置が判断に関係します。([厚生労働省][2])
実務で多い誤解は、「機械で掘るから対象外」「人が掘削面に近づかない予定だから対象外」と早く決めてしまうことです。確かに、掘削機械を用い、掘削面の下方に労働者が立ち入らない作業は対象から除かれる場合があります。しかし、実際の現場では、測量、丁張り、法面整形、湧水処理、支保工設置、排水設備設置、出来形確認、写真撮影、資材搬入、重機誘導などで、労働者が掘削面の下方や近接部に入る場面が発生することがあります。計画書上で「立ち入らない」としていても、施工手順に立入りを伴う作業が残っていれば、判断は慎重に行うべきです。
掘削深さの確認では、平均深さではなく最大深さ、段階掘削時の一時的な深さ、施工ヤード内の高低差、法肩から法尻までの高さ、仮設構台や既設地盤との関係を確認します。掘削範囲が広い場合、全体の大部分は10メートル未満でも、一部だけ10メートル以上になることがあります。対象確認では、もっとも深い箇所、もっとも高低差が大きい箇所、労働者が立ち入る可能性のある箇所を拾い上げる必要があります。
また、地山掘削と土石採取のための掘削は、似ているようで対象区分が変わる場合があります。第90条には、掘削の高さまたは深さが10メートル以上の土石採取のための掘削作業、坑内掘りによる土石採取のための掘削作業も挙げられています。造成工事、道路工事、河川工事、砂防工事、採石、土砂採取など、名称が似た作業でも、目的と作業形態によって確認すべき項目が異なります。契約上の工種名だけでなく、実際に何を採取し、何を構築し、どこまで掘削するのかを整理してください。
圧気工法を伴う作業では、対象確認をさらに早い段階で行う必要があります。圧気工法は、施工設備、作業環境、健康障害防止、緊急時対応、工程管理に大きく関わるため、単なる添付書類の問題ではありません。法第88条第2項に基づく特に大規模な仕事では、ゲージ圧力0.3メガパスカル以上の圧気工法による作業が届出対象として示されており、第90条でも圧気工法による作業を行う仕事が対象として挙げられています。圧気工法を採用する可能性がある時点で、施工方法の比較段階から届出要否を確認することが重要です。
掘削や圧気工法の確認は、設計変更や現場条件の変化によって途中で変わることがあります。想定より地質が悪い、湧水が多い、法面勾配を変更する、掘削深さが増える、作業員の立入り位置を変更する、施工機械を変更する、といった場合、当初の対象外判断が維持できるとは限りません。特に掘削深さが境界に近い現場では、変更のたびに88条申請への影響を確認する運用が必要です。
実務担当者にとって大切なのは、掘削図、断面図、施工ステップ図、重機配置図、作業員動線図、立入禁止範囲図を分けずに確認することです。深さだけを断面図で見ても、労働者がどこに入るかがわからなければ判断できません。逆に、作業員動線だけを見ても、掘削の最大深さがわからなければ対象確認はできません。掘削に関する88条申請の判断では、寸法と施工方法の両方を結び付けることが不可欠です。
足場や型枠支保工など仮設設備を確認する
88条申請の対象確認では、工事本体だけでなく、足場、架設通路、型枠支保工などの仮設設備を必ず確認します。建築物や土木構造物そのものが対象外に見えても、仮設設備が別の基準で届出対象になることがあるためです。労働安全衛生規則では、法第88条第1項の対象となる機械等について、別表第七の上欄に掲げるものが示されており、型枠支保工、架設通路、足場などが含まれます。型枠支保工は支柱の高さが3.5メートル以上のもの、架設通路は高さおよび長さがそれぞれ10メートル以上のもの、足場はつり足場や張出し足場以外では高さ10メートル以上の構造のものが対象候補になります。([厚生労働省][2])
足場で注意したいのは、地上からの建物高さと足場高さを混同しないことです。建物が低くても、斜面、擁壁、橋台、プラント架台、吹抜け、内部足場などでは、足場の構造高さが想定より大きくなることがあります。また、つり足場や張出し足場は、一般的な枠組足場や単管足場とは違う危険性を持つため、単純に「高さ10メートル未満だから対象外」と考えないようにする必要があります。足場の種類、設置高さ、設置期間、設置場所、作業床の範囲を合わせて確認します。
架設通路についても、単なる通路だからと軽く見てはいけません。高低差のある現場、仮桟橋、登り桟橋、立坑周辺、法面上の通路、工事用仮設ヤードをつなぐ通路では、高さと長さが基準に近づく場合があります。人が日常的に通行する設備であるほど、墜落、転倒、資材運搬時の接触、緊急時の避難に関わります。架設通路は、現場の後工程で追加されることも多いため、当初計画にない仮設通路を設ける場合は、88条申請への影響を再確認することが必要です。
型枠支保工では、支柱 の高さが3.5メートル以上かどうかが重要な確認点になります。ここで見るべきなのは、階高や天井高さの印象ではなく、支柱として使う部材の実際の高さ、組立状態、ジャッキや敷角、梁下、段差部、スラブ厚、勾配、部分的な高低差です。全体としては一般的な階高に見えても、一部の梁下、ピット、段差、スロープ、吹抜け、設備基礎まわりで支柱高さが3.5メートル以上になることがあります。対象確認では、もっとも高い支柱、もっとも不利な支柱配置、打設荷重が集中する範囲を確認することが大切です。
型枠支保工の対象判断では、支柱高さだけでなく、コンクリート打設計画との整合も重要です。打設順序、打設速度、ポンプ配管、作業員配置、支保工の盛替え、解体時期、存置期間が変わると、安全計画に影響します。対象となる可能性がある場合は、構造、材質、主要寸法、設置期間、組立図、配置図などの資料を早めに整理しておく必要があります。労働安全衛生規則第86条では、別表第七に掲げる機械等を設置、移転、主要構造部分を変更しようとするとき、届書に必要事項を記載した書面と図面等を添えて所轄労働基準監督署長に提出することが定められています。([厚生労働省][2])
仮設設備で特に問題になり やすいのは、設置期間です。労働安全衛生規則第85条では、機械集材装置、運材索道、架設通路または足場で、組立てから解体までの期間が60日未満のものなど、一定のものは除外される規定があります。([厚生労働省][2]) ただし、設置期間は工程変更で延びることがあり、当初は60日未満の予定でも、天候、設計変更、資材遅延、他工区との調整により長期化することがあります。対象外判断を設置期間に依存する場合は、工程変更時に再確認する仕組みが欠かせません。
仮設設備は、元請、専門工事会社、仮設担当、構造担当、安全担当の間で情報が分かれやすい領域です。足場図、支保工計画図、架設通路計画図が遅れて提出されると、88条申請の要否判断も遅れます。その結果、着工直前に届出準備が必要になり、工程に余裕がなくなります。施工計画の初期段階で、仮設設備の候補を一覧化し、各設備について高さ、長さ、支柱高さ、設置期間、主要構造部分の変更予定を確認することが、実務上もっとも効果的です。
対象判断を工程と記録に落とし込む
88条申請の対象確認は、法令上の対象を調 べて終わりではありません。実務では、対象判断を工程表、施工計画書、図面管理、社内承認、監督署への事前相談、提出控えの保管まで落とし込んで初めて機能します。対象工事であることに気づいても、提出に必要な図面や工程表がそろっていなければ、計画的な届出が難しくなります。逆に、対象外であると判断した場合でも、その根拠が記録されていなければ、後から説明できません。
まず工程表には、工事開始日だけでなく、届出対象となる作業や仮設設備の開始日を明確に入れる必要があります。建築工事全体の着工日、掘削開始日、足場組立開始日、型枠支保工組立開始日、橋梁上部工の施工開始日、ずい道内部作業の開始日、石綿等除去作業の開始日などは、それぞれ意味が異なります。88条申請の提出期限は、対象となる工事または作業の開始日から逆算して考える必要があるため、工程表上で対象作業の開始日が曖昧なままだと、届出準備の期限も曖昧になります。
次に、対象確認の記録を残します。対象候補に対して、どの基準で確認したのか、どの図面のどの寸法を見たのか、設置期間は何日を予定しているのか、作業員の立入りはあるのか、圧気工法や石綿等の作業はあるのか、橋梁の最大支間はいくつ か、掘削の最大深さはいくつかを記録します。対象外の場合でも、「対象外」とだけ書くのではなく、判断に使った数値と図面番号を残すことが重要です。工事中に変更が起きたとき、過去の判断根拠が残っていれば、再確認がすばやくできます。
対象工事である可能性がある場合は、添付書類の準備を早めに始めます。建設業に係る計画届では、仕事を行う場所の周囲の状況および四隣との関係を示す図面、建設等をしようとする建設物等の概要を示す図面、工事用の機械、設備、建設物等の配置を示す図面、工法の概要を示す書面または図面、労働災害を防止するための方法および設備の概要を示す書面または図面、工程表などが必要になることがあります。厚生労働大臣に対する大規模工事の計画届でも、これらの書類や圧気工法に関する摘要書などが示されています。([厚生労働省][3])
また、届出先の違いも工程に影響します。特に大規模な仕事では厚生労働大臣に対する届出が関係し、法第88条第3項に基づく建設業の一定の仕事では所轄労働基準監督署長への届出が関係します。機械等設置届も所轄労働基準監督署長への提出が基本になります。現場によっては、事前相談、提出部数、添付書類の求められ方、修正対応の進め方に実務上の違いが出ることがあります。提出先を早めに確認し、社内で誰が窓口になるのかを決めておくと、書類の手戻りを減らせます。
対象判断を記録に落とし込むうえで、現場写真や位置情報も役立ちます。掘削範囲、足場設置範囲、型枠支保工の設置範囲、既存工作物の高さ、周辺道路や鉄道との位置関係、労働者の動線、仮設ヤードの配置を写真とメモで残しておくと、図面だけでは伝わりにくい現場条件を説明しやすくなります。特に設計図と現地が一致しない場合や、既存構造物の資料が不足している場合は、現地記録が対象判断の補助資料になります。
最後に、変更管理を必ず組み込みます。88条申請の対象確認は、着工前に一度だけ行えば終わるものではありません。設計変更、施工範囲の追加、仮設設備の変更、設置期間の延長、掘削深さの変更、施工手順の変更、作業員立入り範囲の変更があれば、対象判断を見直す必要があります。特に足場や型枠支保工は、現場の都合で盛替えや仕様変更が生じやすいため、主要構造部分の変更に当たる可能性がないかを確認する運用が大切です。
88条申請の対象工事を正しく見極める目的は、単に書類を提出することではなく、重大な労働災害につながりやすい計画を、開始前に見える化し、安全対策を整えることです。対象確認を工事担当者だけの作業にせず、安全担当、設計担当、仮設担当、施工担当、協力会社が同じ情報を見られる状態にしておくことで、判断の抜けや認識違いを防ぎやすくなります。
88条申請の対象確認では、建築物や工作物の高さ、橋梁の最大支間、ずい道内部への立入り、掘削の深さ、圧気工法、石綿等や焼却施設の解体、足場や型枠支保工などの仮設設備を、ばらばらではなく一体で確認することが大切です。そして、その確認結果を工程、図面、写真、位置情報、社内記録に結び付けて管理することで、提出漏れや手戻りを抑えられます。
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