目次
• 膨張率・収縮率を土量計算へ反映する理由
• 切土・盛土計算で区別する3種類の土量
• 手順1 計算対 象範囲と基準面を確定する
• 手順2 地山状態の切土量と締固め後の盛土量を算出する
• 手順3 土質ごとに膨張率・収縮率を設定する
• 手順4 切土量をほぐし土量と利用可能盛土量へ換算する
• 手順5 盛土に必要な地山土量と運搬土量を逆算する
• 手順6 土量収支と搬出入量を区間別に集計する
• 膨張率・収縮率を使った切土・盛土量の計算例
• 計算結果が合わないときに確認したいポイント
• 土質が混在する現場での集計方法
• 設計段階と施工段階で計算値を更新する方法
• 現場計測と土量管理を効率化する考え方
• まとめ
膨張率・収縮率を土量計算へ反映する理由
切土と盛土の体積を計算するときは、地形データから求めた体積をそのまま差し引くだけでは、実際の搬出入量や盛土可能量を正しく把握できないことがあります。土は掘削すると空隙が増えて体積が大きくなり、盛土として敷きならして締め固めると体積が小さくなるためです。
掘削前の地山状態、掘削後のほぐれた状態、締固め後の状態では、同じ土でも体積が異なります。この変化を考慮するために使用するのが膨張率と収縮率です。膨張率は、地山を掘削したときに体積がどの程度増えるかを示します。収縮率は、地山状態の土を盛土として締め固めたときに、体積がどの程度小さくなるかを示します。
たとえば、地山状態で1,000立方メートルの土を掘削し、膨張率を20%とした場合、運搬時のほぐし土量は1,200立方メートルになります。一方、収縮率を10%とした場合、その土を盛土に使用して締め固めた後の体積は900立方メートルです。同じ土を扱っていても、計算の段階によって300立方メートルの差が生じます。
この違いを考慮せず、切土量1,000立方メートルと盛土量1,000立方メートルを同量として扱うと、盛土材が不足する可能性があります。また、搬出車両の台数や仮置き場の容量を地山土量だけで計画すると、実際には想定以上のスペースや運搬回数が必要になることもあります。
切土・盛土の体積計算では、単に体積を求めるだけでなく、その体積がどの状態を表しているのかを明確にすることが重要です。地山土量、ほぐし土量、締固め後土量を区別し、適切な膨張率・収縮率で換算することで、土量収支、運搬計画、仮置き計画、工程計画を現実に近づけられます。
ただし、膨張率や収縮率は土質、含水状態、掘削方法、締固め方法、締固め度、施工機械などによって変化します。土質名だけを見て一律の数値を当てはめるのではなく、設計図書、現地調査、土質試験、試験施工、過去の施工実績などを踏まえて設定する必要があります。
切土・盛土計算で区別する3種類の土量
膨張率・収縮率を反映した計算を行うには、最初に3種類の土量を区別します。それが地山土量、ほぐし土量、締固め後土量です。
地山土量は、掘削前の自然な状態で存在している土の体積です。現況地盤面と計画面の差から算出する切土量は、通常、この地山土量として扱います。測量データや地形モデルから求めた切土体積も、特別な換算をしていない限りは地山状態の体積です。
ほぐし土量は、地 山を掘削して土粒子の配列が乱れ、空隙が増えた状態の体積です。掘削した土をダンプトラックなどで運搬するときの積載量、仮置き場で必要となる容量、掘削土を一時保管するヤードの規模を検討するときに関係します。
締固め後土量は、盛土材を敷きならし、所定の方法で締め固めた後の完成形に近い体積です。計画地盤面と現況地盤面の差から算出する盛土量は、一般に締固め後の完成体積として取り扱います。
この3種類の土量は、同じ単位である立方メートルを使用するため、集計表では混同しやすくなります。数字の横に単位だけを記載しても、それが地山状態なのか、ほぐし状態なのか、締固め後なのかは分かりません。そのため、土量集計では「地山立方メートル」「ほぐし立方メートル」「締固め立方メートル」のように、状態が分かる名称を付けて管理することが大切です。
膨張率を小数で表した値をr、収縮率を小数で表した値をsとすると、地山土量Vbからほぐし土量Vlを求める基本式は、Vl=Vb×(1+r)です。地山土量Vbから締固め後土量Vcを求める基本式は、Vc=Vb×(1-s)です。
膨張率20%であればrは0.20、収縮率8%であればsは0.08です。地山土量が1,000立方メートルの場合、ほぐし土量は1,000×1.20で1,200立方メートル、締固め後土量は1,000×0.92で920立方メートルとなります。
ここで注意したいのは、膨張率・収縮率の名称や計算方法が、資料や組織によって異なる場合があることです。割合ではなく換算係数として示されていることもあります。たとえば、膨張後の体積を地山体積で割った1.20という数値が、そのまま膨張係数として示される場合があります。
収縮についても、地山体積に対する減少率として8%と示す方法と、締固め後体積を地山体積で割った0.92を換算係数として示す方法があります。数値の意味を確認せずに式へ代入すると、結果が大きくずれるため、採用する資料の定義を必ず確認します。
手順1 計算対象範囲と基準面を確定する
最初の手順は、切土・盛土量を計算する範囲と、体積比較に使用する基準面を確定することです。膨張率や収縮率を正しく設定しても、計算範囲や面データが誤っていれば、結果は正しくなりません。
切土・盛土の体積は、基本的に現況地盤面と計画地盤面の高低差から求めます。現況地盤面より計画地盤面が低い部分は切土、現況地盤面より計画地盤面が高い部分は盛土です。ただし、実務では工事区域全体を単純に比較するだけでは不十分な場合があります。
道路工事では、路床面、路盤面、舗装面など、どの高さを計画面として採用するかによって土工量が変わります。造成工事では、宅地仕上げ面を使うのか、表土や路盤を控除した土工仕上げ面を使うのかを決める必要があります。構造物周辺では、基礎掘削、床掘り、埋戻し、置換土などを一般土工と分けて計算することもあります。
計算範囲の境界も重要です。工区境、施工区画境、用地境、法肩、法尻、構造物外周などを基準に、どこまでを対象とするのかを明確にします。隣接工区と範囲が重複すると二重計上が発生し、反対に境界間に空白があれば計上漏れが生じます。
現況地盤データについては、測点の密度だけでなく、地形の変化を適切に表現できているかを確認します。法面、段差、側溝、擁壁、盛土端部などの変化点が不足していると、実際とは異なる滑らかな地形面が作られ、体積に誤差が生じます。樹木や資材、車両、仮設物などを地表面として取り込んでいないかも確認が必要です。
計画面については、設計変更や施工条件の更新が反映されているかを確認します。古い計画面を使ったまま計算すると、数式や換算率が正しくても、現在の施工内容とは一致しません。データの作成日、改訂番号、座標系、標高基準、単位を記録し、計算に使用した面を後から追跡できる状態にしておきます。

