道路改良工事や造成工事で既設盛土を拡幅する場合、新しい盛土を既設法面へ単純に載せると、接合面が弱面となり、すべりや不均一な変形の要因になるおそれがあります。そのため、設計図書や適用基準に基づいて既設盛土の法面を階段状に掘削する「段切り」を行い、新旧の盛土をなじませながら施工する方法が用いられます。
段切りは盛土の安定性や施工品質を確保するうえで重要ですが、数量計算では見落とされやすい部分でもあります。横断図から算出した盛土量だけを集計し、段切りによって発生する掘削量や、段切り後の空間を盛土材料で充填する数量が計算条件へ反映されていないと、設計数量と実施工数量に差が生じます。
特に、道路延長が長い現場、既設法面の勾配が変化する現場、左右で拡幅幅が異なる現場では、わずかな計算条件の違いが全体数量へ大きく影響します。施工途中で段切り形状が変更された場合や、表土除去を伴う場合には、さらに数量の整理が複雑になります。
この記事では、盛土拡幅部の段切り掘削量を正しく加算するために確認したい6つの計算ポイントを解説します。段切り断面積の求め方、平均断面法による区間数量の算出、盛土量との関係、重複計上を防ぐ方法まで、数量計算の実務で迷いやすい部分を順番に整理します。実際の設計数量や契約数量は、対象工事の設計図書、特記仕様書、発注者の数量算出要領を優先して決定してください。
目次
• 盛土拡幅部で段切りが必要になる理由
• 段切り掘削量を加算する前に整理する数量
• 計算ポイント1 段切りの対象範囲を明確にする
• 計算ポイント2 段切り一段ごとの形状を正しく設定する
• 計算ポイント3 横断面ごとの段切り掘削断面積を算出する
• 計算ポイント4 測点間の変化を平均断面法で反映する
• 計算ポイント5 掘削量と盛土量の関係を整理する
• 計算ポイント6 表土除去や法面整形との重複を防ぐ
• 段切り掘削量の計算例
• 段切り形状が途中で変わる場合の計算方法
• 左右両側を拡幅する場合の注意点
• CADや3次元データを利用する場合の確認事項
• 数量計算で起こりやすい間違い
• 計算結果を施工数量へ反映する手順
• 盛土拡幅部の段切り掘削量を正確に管理する方法
盛土拡幅部で段切りが必要になる理由
既設盛土の法面には、長期間の降雨や乾燥、植生の成長、表面浸食などによって、施工当時とは異なる状態が生じていること があります。法面表面に草木や腐植土が残っている場合、その上へ新しい盛土材料を載せても所定の締固めを行いにくく、新旧盛土の接合面が弱部になる可能性があります。
また、既設法面は傾斜しているため、そのまま盛土を追加すると、新しい盛土材料と既設地盤との接合面が連続した傾斜面になります。設計図書に基づいて階段状の施工面を設けることで、新しい盛土材料を層状に敷きならしやすくなり、既設盛土とのなじみも確保しやすくなります。
段切りの形状や寸法は、工事の設計図書、特記仕様書、標準図、地盤条件、使用する締固め機械などによって異なります。一般的な参考寸法が示されることはありますが、すべての現場で同じ寸法を使用できるわけではありません。
数量計算では、図面に記載された段切り形状を優先し、図面に明記されていない場合は、設計条件や施工計画を確認したうえで計算条件を決定する必要があります。数量計算担当者が独自に段の高さや幅を決めると、設計者や施工担当者が想定する形状と一致 しなくなるため注意が必要です。
段切りによって既設盛土の一部を掘削すると、その掘削後の空間は新しい盛土材料で充填されます。このため、段切り数量の整理では、既設土を取り除く掘削量だけでなく、段切り後地盤線から計画盛土線までの盛土量も関係します。
ここを理解せずに掘削量だけを計上すると、盛土側の数量条件が実際の形状を表さない可能性があります。反対に、横断図の盛土断面積に段切り部分がすでに含まれているにもかかわらず、段切り相当の盛土量を別途加算すると、盛土量を二重に計上してしまいます。
段切り掘削量を加算する前に整理する数量
段切り掘削量を計算する前に、工事数量をいくつかの区分へ分けて考える必要があります。最低限整理したいのは、既設法面から取り除く地山状態の土量、新たに造成する締固め後の盛土本体量、段切り後の空間を充填する締固め後の盛土量、表土や不良土として処分する土量です。
既設法面を基準として新しい完成断面との差を計算した場合、通常の盛土断面積には、既設地盤より外側へ追加される部分が含まれます。しかし、段切りとして既設法面の内側へ食い込んで掘削する部分は、段切り施工前の現況断面と完成断面の差だけでは盛土側に表現されない場合があります。
その場合、段切り掘削量を別途算出し、掘削数量へ加算します。さらに、段切りで生じた空間は最終的に盛土材料で充填されるため、盛土施工量を求める際には、段切り施工後の地盤線を基準にした盛土断面へ反映します。
ただし、設計数量の作成方法によっては、段切り形状を反映した施工後地盤線と計画盛土線から盛土断面積を計算している場合があります。この場合は、段切り部分の盛土量がすでに盛土断面積へ含まれています。
数量の加算を判断するときは、単に「段切りがあるから掘削量と盛土量を両方追加する」と考えるのではなく、使用している横断図や計算モデルの地盤線が、段切り施工前の地盤を示しているのか、段切り施工後の地盤を示しているのかを確認することが重要です。
また、掘削数量は地山土量、盛土数量は締固め後土量として扱う要領が一般的です。両者は形状上の空間が対応していても、材料の流用量、運搬量、購入量を計画するときには土量変化率を介して整理する必要があります。
数量計算書には、段切り掘削、盛土本体、表土除去、不良土処理、法面整形などの項目を分けて記載すると、計上範囲が明確になります。計算根拠を分けておけば、設計変更や施工形状の変更が生じたときにも修正しやすくなります。
計算ポイント1 段切りの対象範囲を明確にする
最初の 計算ポイントは、どの区間で段切りを行うのかを明確にすることです。段切りの対象範囲が曖昧なまま断面積を求めても、延長方向の始点と終点が不正確であれば、全体数量は正しくなりません。
盛土拡幅区間の始点と終点が、そのまま段切り区間の始点と終点になるとは限りません。すり付け区間を含む段切りの適用範囲は、拡幅幅だけで一律に判断せず、設計図書や施工条件を確認して決めます。
まず平面図、縦断図、横断図、標準断面図を照合し、段切りが必要となる測点を抽出します。横断図に段切り形状が直接描かれている場合は、その測点を基準に対象区間を設定できます。標準断面図にだけ段切りが示されている場合は、その標準断面を適用する範囲を設計図書から読み取る必要があります。
平均断面法で道路土工量を算出する場合、区間延長は道路中心線上の距離を用いることが標準です。半径の小さい曲線部など、中心線上の距離を用いることが適当でない場合は、適用する数量算出要領に従い、計算断面の図心位置におけ る距離などを用います。段切り施工線の実延長へ独自に置き換えると、横断面積の定義と延長の基準が一致しなくなるおそれがあるため、設計図書または発注者の算出方法を確認します。
曲線区間では、道路中心線の内側と外側で弧長が異なりますが、中心線に直交する横断面を用いた平均断面法では、左右それぞれの段切り線の弧長を無条件に掛ける方法が標準とは限りません。中心線距離では数量を適切に表せない曲線部は、図心位置の距離を使う方法や3次元モデルによる差分体積など、採用要領に適合する方法で算出します。
段切り区間の途中に橋台、函渠、擁壁、取付道路、水路などがある場合、その構造物部分では段切りが連続しないことがあります。構造物の占有範囲を控除せずに区間全体を計算すると、施工しない部分まで掘削量へ含めてしまう可能性があります。ただし、数量算出要領に控除しない小規模部分が定められている場合は、その規定を優先します。
数量計算書では、対象区間を測点名だけで記載するのではなく、 開始位置、終了位置、左右区分、除外範囲、適用する段切り形状を一緒に整理します。対象範囲の根拠が明確であれば、後から横断図が追加された場合や、施工範囲が変更された場合にも計算条件を追跡できます。
計算ポイント2 段切り一段ごとの形状を正しく設定する
2つ目の計算ポイントは、一段ごとの幅、高さ、勾配を正しく設定することです。段切りを単純な長方形の連続として扱える場合もありますが、実際には既設法面の勾配や段の切り方によって、掘削断面が三角形や台形を含む形状になります。
段切り形状を設定するときは、段の鉛直高さ、水平幅、段面の勾配、段数、最上段と最下段の処理を確認します。段面が水平ではなく、排水や施工上の理由から勾配を持つ場合、断面積は単純な長方形として計算できないことがあります。
たとえば、一段の水平幅をB、鉛直高さをHとし、既設 法面の勾配が鉛直1に対して水平mである場合、法面上で一段の高さHに対応する水平距離はmHになります。段切り幅Bとこの水平距離の関係によって、既設法面へ食い込む形状が変わります。
段切り線を既設法面より内側へ一定幅だけ切り込む方法では、各段の掘削断面を長方形として近似できることがあります。一方、水平な段面と鉛直な立上がりを交互に設ける方法では、既設法面との間に生じる掘削部分が複数の三角形または台形として表れます。
一段当たりの掘削断面積を一定と仮定し、段数を掛けて計算する方法は簡便ですが、最上段と最下段の形状が標準段と異なる場合には誤差が生じます。法尻付近では地盤との取り合いによって段幅が短くなることがあり、法肩付近では完成盛土面との接続によって段の一部が不要になることがあります。
そのため、標準段の断面積に段数を掛ける方法を使用する場合でも、端部の形状は個別に確認する必要があります。特に段高で割り切れない法面高さの場合、最上段の高さが標準寸法より小さ くなることがあります。最上段も標準寸法のまま計上すると、実際より掘削量が大きくなります。
既設法面が一様な直線ではなく、途中で勾配が変わる場合には、勾配ごとに段切り形状を分割します。上部が緩勾配、下部が急勾配となっている法面を一つの平均勾配で処理すると、各段の食い込み量を適切に表せない場合があります。
段切り形状を図面から読み取る際は、図面縮尺による計測だけに頼らず、記載寸法を優先します。寸法の記載がない場合は、CADデータ上の座標や設計条件を確認し、使用した寸法を数量計算書へ明記します。
計算ポイント3 横断面ごとの段切り掘削断面積を算出する
3つ目の計算ポイントは、各測点の横断面で段切り掘削断面積を求めることです。延長方向の数量を計算する前に、代表となる横断面ごとの断面積を正しく算出する必要があります。
横断面上では、段切り施工前の既設地盤線と、段切り施工後の階段状地盤線を重ねます。この2本の線に囲まれた範囲が、その測点における段切り掘削断面積です。
計算対象となる範囲が単純な三角形であれば、底辺と高さの積を2で割って求められます。長方形であれば幅と高さの積、台形であれば上底と下底の和に高さを掛けて2で割ります。複雑な段切り形状では、断面を複数の三角形、長方形、台形へ分割し、それぞれの面積を合計します。
手計算を行う場合は、各図形の区分が重ならず、隙間も生じないように分割することが重要です。段の水平面と立上がり線の交点を基準に座標を設定すると、図形を整理しやすくなります。
座標法を使用する場合は、既設地盤線と段切り線で囲まれた多角形の頂点座標を順番に並べ、多角形面積を求めます。段数が多い断面では、 図形分割より座標法のほうが計算過程を統一しやすくなります。
CADを使用する場合は、既設地盤線と段切り線が閉じたポリラインを形成していることを確認します。線がわずかに接続していない場合や、同じ位置に重複線がある場合、面積が取得できなかったり、意図しない範囲が選択されたりします。CADによる算出値は、代表断面の手計算などで適宜確認します。
横断面積を計算するときは、左右を分けて管理する方法が有効です。左側段切り面積をAL、右側段切り面積をARとすると、同じ横断面内の合計段切り面積Aは、A=AL+ARで求められます。
左右を分けておけば、一方だけ拡幅幅や法面勾配が変更された場合でも、その側だけを再計算できます。また、片側だけ段切りの開始位置や終了位置が異なる場合にも、補助断面を設定しやすくなります。

