目次
• 切土・盛土収支を合わせる前に押さえたい基本
• 計算方法1 現況地形と計画地形から切土・盛土体積を分けて算出する
• 計算方法2 地山土量・ほぐし土量・締固め土量を換算する
• 計算方法3 表土や不良土など盛土に使えない土を除外する
• 計算方法4 場内流用できる土量から借土量を逆算する
• 計算方法5 余剰土量から残土量と搬出量を算出する
• 計算方法6 施工区間ごとの土量収支と運搬方向を整理する
• 計算方法7 施工中の実測値で土量収支を更新する
• 切土・盛土の計算結果が合わない主な原因
• 土量収支表を実務で運用するための手順
• まとめ
切土・盛土収支を合わせる前に押さえたい基本
造成工事や道路工事、外構工事などでは、現況地盤を掘り下げる切土と、土を盛り上げる盛土の体積を計算し、現場条件に応じて場内で土を有効利用することが重要です。しかし、切土体積と盛土体積を単純に比較するだけでは、実際に必要となる借土量や場外搬出対象量を適切に求められません。
土は掘削すると空隙が増えて体積が変化し、運搬や仮置きを経て、締め固めると別の体積状態になります。また、切土として発生した土のすべてを盛土材料に利用できるとは限りません。表土、植物根、異物を含む土、含水状態が施工条件に合わない土、設計図書や品質基準上使用できない土などを区分すると、盛土本体へ配分できる土量は当初の切土体積より少なくなる場合があります。
そのため、切土・盛土の収支を計算するときは、少なくとも現況地形と計画地形から求める幾何学的な体積、土の状態による体積変化、土質や用途ごとの流用可能量、借土量、場外搬出対象量、運搬範囲を区別して考える必要があります。
同じ体積状態に換算したうえで、収支の入口と出口を整理する考え方は次のように表せます。
盛土に必要な土量=切土由来の盛土流用土量+借土量
切土による発生土量=盛土本体への流用土量+他用途への流用土量+場内保管量+場外搬出対象量
ここで、表土や条件付き利用土を場内で別用途に使う場合は他用途への流用土量に含め、場外へ搬出する利用不可土は場外搬出対象量に含めます。同じ土量を複数の項目へ重ねて計上しないことが重要です。
また、これらの体積は同じ状態に換算して比較しなければなりません。切土体積を地山状態で表し、盛土体積を締固め後の状態で表したまま差し引くと、単位は立方メートルで同じでも、意味の異なる体積を比較することになります。
実務では、計算書の中で地山土量、ほぐし土量、締固め土量のどれを扱っているかを明記し、比較する数値を同じ基準にそろえることが欠かせません。さらに、設計段階の概算値と施工段階の実績値を混在させないようにし、測量日、計算範囲、使用した地盤面、土質区分、控除対象、換算係数の根拠を記録しておくことが重要です。
以下では、借土と残土を含めて切土・盛土収支を合わせるための7つの計算方法を、実務の流れに沿って解説します。
計算方法1 現況地形と計画地形から切土・盛土体積を分けて算出する
最初に行うのは、現況地形と計画地形の差分から、切土体積と盛土体積を別々に算出する作業です。切土と盛土を 合算した差引体積だけを求めるのではなく、それぞれの体積を独立して把握することがポイントです。
現況地盤高が計画地盤高より高い場所は切土となり、現況地盤高が計画地盤高より低い場所は盛土となります。各地点の高低差を計算し、対象範囲の面積と組み合わせることで体積を求めます。
比較的単純な敷地では、平均断面法やメッシュ法が用いられます。道路や水路のように延長方向へ連続する工事では、一定間隔で横断面を作成し、隣接する断面積の平均に区間距離を掛けて体積を求める方法があります。
区間体積は、次の考え方で算出します。
区間体積=前断面積と後断面積の平均値×断面間距離
ただし、断面間で地形や計画形状が急変する場所では、断面間隔を細かくする、変化点に追加断面を設ける、別の体積算出方法と照合するなどの対応が必要です。
敷地造成のように面的な範囲を扱う場合は、対象区域を一定の格子に分割し、各格子の四隅または代表点における現況高と計画高の差から体積を計算します。格子内に切土と盛土の境界がある場合は、格子全体を一律に切土または盛土として扱わず、境界位置を推定して分割することが大切です。
より複雑な地形では、現況地形と計画地形をそれぞれ三次元の面として作成し、二つの面に挟まれた体積を計算します。この方法では、斜面、法肩、法尻、段差、構造物周辺などを細かく表現できますが、元となる測点の密度、補間方法、地表面以外の点の除去、地形面の作り方によって結果が変わります。
特に注意したいのは、計算範囲の境界です。現況地形と計画地形の範囲が一致していない場合、ソフトウェアの設定によって範囲外が補間され、意図しない体積が加算されることがあります。造成範囲、法面範囲、道路境界、構造物の控除範囲を明確にし、原則として同じ外周線で比較します。
また、擁壁、基礎、地下構造物、排水施設、舗装、砕石層などがある場合は、土として計算する範囲と構造物や別材料として扱う範囲を分けます。例えば、盛土完成面までの全体積を求めた後に、路盤材や基礎砕石など土以外の材料が占める体積を控除しなければ、必要土量を多く見積もることがあります。
この段階では、切土体積と盛土体積を幾何学的に算出し、計算範囲と控除条件を明確にすることを優先します。土質や体積変化による補正は、次の段階で行います。
計算方法2 地山土量・ほぐし土量・締固め土量を換算する
切土と盛土の体積が求められたら、土の状態をそろえて比較します。土量収支の計算では、地山土量、ほぐし土量、締固め 土量という三つの状態を区別する必要があります。
地山土量は、掘削前の地盤状態における体積です。現況地形と計画地形の差から算出する切土体積は、通常、地山状態の幾何学的体積として扱います。
ほぐし土量は、掘削後に土粒子の並びが変わり、空隙が増えた状態の体積です。運搬車両への積込み量、仮置き場の容量、場外搬出時の運搬回数などを検討するときに関係します。
締固め土量は、盛土として敷き均し、所定の方法で締め固めた後の体積です。計画地形から求める盛土体積は、通常、完成後の締固め状態に対応する体積として扱います。
換算式を使う前に、土量変化率の定義を固定します。地山土量をVb、ほぐし土量をVl、締固め土量をVcとすると、ほぐし率Lと締固め率Cは次のように定義できます。
L=Vl÷Vb
C=Vc÷Vb
この定義を用いる場合、地山土量からほぐし土量を求める式は次のとおりです。
ほぐし土量=地山土量×L
盛土完成体積から必要な地山土量を求める式は次のとおりです。
盛土に必要な地山土量=盛土完成体積÷C
反対に、利用可能な地山土量から完成後に造成できる盛土体積を求める式は次のとおりです。
施工可能な盛土完成体積=利用可能な地山土量×C
盛土完成体積から運搬時のほぐし土量を求める場合は、同じ土質と同じ係数条件であれば、次のように換算できます。
盛土に必要なほぐし土量=盛土完成体積×L÷C
LとCの定義を逆にした独自係数を使用すると式も変わるため、名称だけで判断せず、必ず分子と分母を計算書に記載します。
体積比は土質、粒度、含水状態、締固め方法、施工機械、施工厚さなどによって変わります。そのため、一般的な係数を無条件に採用するのではなく、設計図書、適用する積算基準、土質試験、試験施工、過去の施工実績などを確認して設定する必要があります。
例えば、切土が複数の地層に分かれている場合、すべてに同じ換算係数を適用すると誤差が大きくなる可能性があります。砂質土、粘性土、礫質土、岩塊を含む土では、掘削後のほぐれ方や締固め後の体積変化が異なるためです。
実務では、切土範囲を土質区分ごとに分け、それぞれの地山土量に対応する係数を設定します。そのうえで、盛土に利用できる量を土質別に集計すると、借土量と場外搬出対象量をより現実的に予測できます。
運搬計画ではほぐし土量、最終的な土量収支では地山換算土量または締固め換算土量を使うなど、目的によって基準を使い分けることもあります。ただし、一つの計算表の中で複数の状態を扱う場合は、列名や単位だけでなく、「地山」「ほぐし」「締固め」の区分と換算式を必ず明示します。
計算方法3 表土や不良土など盛土に使えない土を除外する
切土によって発生する土のすべてを、盛土材料として利用できるとは限りません。借土と残土を適切に計算するには、切土発生土を用途と品質に応じて区分し、盛土本体へ配分できる量を求める必要があります。
最初に確認したいのが表土です。表土には植物根や有機物が含まれることがあり、そのまま構造物の基礎地盤や主要な盛土材料として使用することが適さない場合があります。一方で、法面の植生基盤や緑地部分への再利用を計画する場合もあるため、単純にすべてを場外搬出するのではなく、用途別に区分します。
現況地盤の表土を一定厚さで剥ぎ取る場合、表土量は対象面積と剥ぎ取り厚さから概算できます。
表 土量=対象面積×平均剥ぎ取り厚さ
ただし、斜面では、平面投影面積に鉛直方向の厚さを掛けるのか、斜面の実面積に斜面直角方向の厚さを掛けるのかで結果が変わります。面積と厚さの定義をそろえ、表土厚が場所によって変化する場合は、複数地点で厚さを確認して区域を分けて計算します。
次に、不良土や利用条件を満たさない土を区別します。含水状態が高く施工時に安定しにくい土、異物が混入した土、粒度や強度が用途に合わない土などは、盛土への使用が制限される場合があります。ただし、利用の可否は外観だけで断定せず、設計条件、品質基準、試験結果、施工方法を踏まえて判断します。
土質改良や含水調整によって利用できる可能性がある土については、最初から残土として扱うのではなく、「そのまま利用可能」「処理後に利用可能」「別用途に利用可能」「利用不可」といった区分を設けると、収支計算が整理しやすくなります。
盛土本体へ配分可能な地山土量は、次の考え方で求められます。
盛土本体へ配分可能な地山土量=切土地山土量-別用途へ確保する表土等の土量-利用不可土量-既定の他用途使用量
ここでいう他用途使用量には、仮設道路、構造物周辺の埋戻し、法面整形、植栽基盤、施工ヤードの復旧などがあります。これらは場内流用の一部ですが、盛土本体へ使える量からはあらかじめ差し引いて管理します。
一方、場内流用総量を集計するときは、盛土本体への流用量と他用途への流用量を合算します。盛土本体へ配分可能な量を求める式と、場内全体で流用した量を求める式を混同しないことが、二重控除を防ぐポイントです。
特に構造物の埋戻しでは 、盛土本体とは異なる材料条件が指定されることがあります。切土で発生した土を使用できるかどうかを事前に確認し、使用できない場合は、盛土用の借土とは別に埋戻し材料を計上します。
仮置き中の土が降雨によって高含水状態になることや、他の土と混ざって品質区分が変わることもあります。そのため、計算上は流用可能であっても、保管方法や施工順序によって実際の利用可能量が減る場合があります。
土量収支表では、切土総量だけでなく、盛土本体向け流用土、他用途向け流用土、条件付き利用土、利用不可土、場内保管土を分けて記録します。この区分を行うことで、借土が必要になる理由と、場外搬出が必要になる理由を説明しやすくなります。
計算方法4 場内流用できる土量から借土量を逆算する
借土量は、盛土完成体積から切土体積を単純に差し引いて求めるものではありま せん。盛土に必要な土量を基準状態に換算し、そこから実際に盛土本体へ配分できる土量を差し引いて求めます。
地山土量を基準にする場合、借土量の基本式は次のようになります。
借土必要地山量=盛土に必要な地山換算土量-盛土本体へ配分可能な場内土量
実際に計上する借土必要地山量は、負の値を借土として扱わないよう、次のように整理します。
借土必要地山量=0と上記差額のうち大きい方
差額がゼロ以下であれば、計算上は借土が不要で、余剰分は残土側の計算へ回します。ただし、場内流用土の品質や発生時期まで含めて確認しなければ、施工中 に一時的な土不足が生じる可能性があります。
例えば、工区の前半で盛土を施工する一方、流用予定の切土が工区後半で発生する場合、最終的な収支は均衡していても、施工順序上は先に材料を確保しなければなりません。この場合は、切土工区を先行する、仮置き場を設ける、施工順序を変更する、一時的な搬入材を検討するなどの対応が必要です。
借土量を算出するときは、盛土本体だけでなく、各用途の必要量を整理することも重要です。計画地盤までの盛土、構造物周辺の埋戻し、道路路体、法面整形、施工ヤードの復旧など、必要となる土の用途と品質条件が異なる場合があります。
また、盛土の施工では、仕上げ整形、余盛り、沈下への対応などにより、設計上の幾何学的体積と実際の投入量に差が生じることがあります。しかし、根拠のない余裕率を一律に上乗せすると、借土の過大計上につながります。設計条件、施工計画、地盤特性、試験施工、出来形管理の方法などを踏まえ、必要性と算定根拠を説明できる範囲で扱いま す。
借土の算定は、土量だけでなく品質を同時に考える必要があります。場内に余剰土があっても、盛土に必要な材料条件を満たしていなければ、借土が必要になることがあります。その一方で、場内土を選別または処理することで利用できれば、借土量を減らせる可能性があります。
実務では、借土を一つの数量としてまとめるのではなく、用途別、品質区分別、使用時期別に整理すると管理しやすくなります。主要盛土用、埋戻し用、表層付近の仕上げ用などに区分しておけば、場内流用土との対応関係を確認できます。
借土量の計算では、搬入された土の受入数量と完成後の盛土体積を同じものとして扱わないことにも注意が必要です。運搬車両で管理する数量はほぐし状態に近く、完成した盛土は締固め状態です。搬入実績と設計数量を比較するときは、LとCの定義に基づき、体積状態の違いを換算します。
計算方法5 余剰土量から残土量と搬出量を算出する
切土による盛土本体向け流用可能量が、盛土に必要な土量を上回る場合は、余剰土が発生します。この余剰分が残土見込みの基礎となりますが、実際の場外搬出対象量を求めるには、土の状態、別用途への転用、場内保管、利用不可土の扱いを整理する必要があります。
地山状態を基準とした余剰流用土量は、次の考え方で算出できます。
余剰流用地山土量=盛土本体へ配分可能な地山土量-盛土本体に使用する地山換算土量
実際に余剰として扱う量は、負の値を残土として扱わないよう、次のように整理します。
余剰流用地山土量=0と上記差額のうち大きい方
この値が正であれば、盛土本体では使い切れない土が存在します。ただし、余剰土のすべてが直ちに場外へ搬出されるとは限りません。場内の別区域で利用する、仮設盛土に使用する、将来工区用に保管する、地形整正に用いるなどの可能性を確認します。
残土量を考えるときは、利用不可土も区分します。表土や不良土など、盛土本体に利用できない土であっても、場内で別用途に使えるものと、場外搬出が必要なものは分けて扱います。
場外搬出対象の地山換算土量は、次のように整理できます。
場外搬出対象地山量=余剰流用地山土量+場外搬出が必要な利用不可地山量-余剰土から追加で場内利用または場内保管する地山量
ただし、計算方法3で他用途使用量をすでに控除している場合、その同じ数量をこの式で再度差し引いてはいけません。追加転用分として差し引くのは、余剰量を算出した後に新たに決まった場内利用量または場内保管量だけです。
運搬計画を作成する場合は、地山換算土量をほぐし土量へ換算します。
搬出時のほぐし土量=搬出対象の地山土量×L
運搬車両の台数や仮置き場の容量は、地山土量ではなく、実際に積み込まれる状態に近い体積で検討します。ただし、車両ごとの積載量は土の密度、含水状態、積載方法、積載質量の制限などでも変化するため、体積だけでなく質量による管理が必要となる場合があります。
掘削直後の土はほぐれますが、運搬中の振動や仮置きによって沈下することがあります。そのため、机上で求めたLだけを使って運搬回数を固定すると、実績と差が生じることがあります。施工初期に、同じ土質区分について積載質量、荷台容積、搬出量、測量値を照合し、必要に応じて計画を見直します。
残土量の増加を防ぐには、切土発生前に利用先と品質条件を整理しておくことが重要です。掘削後に土質や含水状態を確認してから利用先を探すと、仮置き期間が長くなり、土が混ざったり品質が変化したりする可能性があります。
残土の搬出に関しては、契約条件、受入先の条件、運搬管理、適用される法令や地域の手続きなどを確認し、必要な記録方法を事前に整理します。建設発生土と異物が混入した土では扱いが異なる場合があるため、一般論だけで判断せず、工事ごとの適用条件を確認します。
計算書では、残土を単に切土から盛土を引いた数量とせず、余剰流用土、場外搬出が必要な表土、利用不可土、異物を含む土などに 分けます。こうすることで、搬出理由、受入条件、処理方法を明確にしやすくなります。
計算方法6 施工区間ごとの土量収支と運搬方向を整理する
工事全体の切土量と盛土量が一致していても、実際の施工が円滑に進むとは限りません。土量収支は、工事全体だけでなく、施工区間や施工時期ごとに確認する必要があります。
道路工事のように延長が長い現場では、測点や一定の区間ごとに切土量と盛土量を集計します。そのうえで、各区間で発生した土をどの区間へ運ぶかを整理します。
切土が多い区間から盛土が多い区間へ土を移動させることで、場内流用率を高められる場合があります。ただし、単に距離が近い区間へ運べばよいわけではありません。土質条件、施工順序、運搬経路の勾配、作業車両の通行条件、仮置き場所の有無などを考慮します。
累積土量を使うと、施工区間ごとの収支を把握しやすくなります。起点から各測点までの切土量を正、盛土必要量を負などとして累積し、その変化を見る方法です。累積値が増加する区間では土が余り、減少する区間では土が不足する傾向を確認できます。
ただし、累積土量の基準状態は統一しなければなりません。切土は地山土量、盛土は締固め体積のまま累積すると、グラフ上では収支が合っているように見えても、実際の必要量とは一致しません。盛土を地山換算するなど、同じ状態にそろえて集計します。
施工区間別の収支では、土質の適合性も反映します。ある区間の切土が大量に発生しても、別区間の盛土条件に適合しない場合は、その二つを収支上で直接対応させることはできません。
そのため、土質区分ごとに別の収支を作る方法が有効です。主要盛土に使える土、一般的な埋 戻しに使える土、表土として利用する土、処理後に利用する土、利用不可土などを区分し、それぞれの発生地点と使用地点を対応させます。
また、構造物工事や排水工事との工程関係も重要です。盛土予定地に地下構造物を先に施工する必要がある場合、その部分へ早期に土を運ぶことはできません。逆に、切土区間を先行しても仮置き場所がなければ、場外搬出が必要になる可能性があります。
工事全体の最終収支だけでなく、月別、施工段階別、工区別の最大余剰量と最大不足量を把握すると、仮置き容量や一時的な借土の必要性を検討できます。
施工区間ごとの計算は、土をどこからどこへ運ぶかを決める土工計画の基礎となります。土量の一致だけでなく、運搬距離、運搬回数、施工順序、材料品質を含めて検討することで、実行可能な収支計画になります。
計算方法7 施工中の実測値で土量収支を更新する
設計段階で作成した土量収支は、施工開始後も継続して更新する必要があります。現況測量の不確かさ、想定していた地層との違い、表土厚の変化、掘削範囲の変更、設計変更、盛土や基礎地盤の沈下などによって、当初計算と実績には差が生じるためです。
施工中の更新では、まず基準となる測量時点を明確にします。着工前、表土剥ぎ取り後、切土途中、盛土途中、完成時など、地盤面が変化する節目で計測します。同じ区域を継続して比較できるよう、座標系、高さ基準、計測範囲、地形面の作成条件を統一します。
切土区間では、施工前地形と施工後地形の差から実掘削量に対応する地山体積を計算します。盛土区間では、盛土前の基盤面と計測時点の盛土面の差から施工済みの締固め体積を求めます。施工途中の盛土面を計測する場合は、その後に施工する表層、路盤、舗装、構造物などを混同しないようにします。
測量による出来高体積と、運搬車両の台数から算出した数量が一致しない場合もあります。これは、測量値が施工前後の面から求めた地山相当または締固め後の体積を示す一方、運搬実績はほぐし状態の土を扱うことが主な理由の一つです。両者を比較するときは、体積状態、土質区分、計測期間、含水状態、対象範囲をそろえます。
施工中の収支更新は、次の関係を確認する作業です。
残りの盛土完成体積=計画盛土完成体積-施工済み盛土完成体積
残りの盛土必要地山量=残りの盛土完成体積÷C
残りの流用可能地山量=未掘削の盛土向け流用可能地山量+仮置き土の地山換算量
見込み借土地山量=0と、残りの盛土必要地山量-残りの流用可能地山量のうち大きい方
見込み余剰地山量=0と、残りの流用可能地山量-残りの盛土必要地山量のうち大きい方
この結果に、場外搬出が必要な利用不可土、他用途への追加配分、場内保管量を反映して、最終的な借土見込みと場外搬出見込みを更新します。仮置き土については、品質、混合の有無、含水状態、使用可能時期を確認します。
初期の実績から換算係数を見直すこともあります。例えば、同一の土質区分について、施工前後の測量、運搬実績、完成した盛土体積を同じ期間と範囲で対応させれば、その現場における体積変化の傾向を把握できます。ただし、基礎地盤の沈下、土の流出、含水量の変化、異なる土質の混合があると単純な体積比では評価できないため、試験結果や施工条件と合わせて判断します。
設計変更が発生した場合は、変更前後の地形面を保存し、どの範囲がどの時点で変更されたかを記録します。最新の計画地形だけを残すと、既施工部分との対応が分からなくなる可能性があります。
日常の進捗管理では、すべての区域を毎日詳細に計測する必要はありません。土量変動の大きい場所、設計との差が生じやすい場所、切土と盛土の切替部、仮置き場などを重点的に確認し、工事の節目で全体を更新する方法が現実的です。
施工中に土量収支を更新すれば、借土の手配が遅れる事態や、想定以上の場外搬出土が工事終盤に判明する事態を防ぎやすくなります。収支計算を設計時の一度きりの作業ではなく、施工管理の一部として運用することが重要です。
切土・盛土の計算結果が合わない主な原因
切土・盛土の収支が合わないときは、計算式だけでなく、体積の定義、計測範囲、土質区分、施工実績を順番に確認します。
よくある原因の一つは、切土と盛土で体積状態が異なることです。切土を地山状態、盛土を締固め状態のまま比較すると、差が生じます。借土、仮置き、搬出についても、どの状態の体積で記録されているかを確認します。
次に、計算範囲の不一致があります。現況地形と計画地形で外周が異なる、法面の先端が計算範囲に含まれていない、施工ヤードや仮設道路が片方だけに含まれているといった場合、体積差が発生します。
地形面の精度も結果に影響します。測点が少ない場所で実際には起伏がある場合、地形が過度に平滑化されます。草木や資材、車両などを地盤面として取得した場合は、現況地盤が実際より高く計算される可能性があります。
計画地形の作成ミスにも注意が必要です。法面の勾配方向が逆になっている、計画高の入力単位が違う、構造物部分が地盤として埋められている、設計変更前の面が残っているなどの問題が考えられます。
表土剥ぎ取りを二重に控除するケースもあります。現況地形から表土剥ぎ取り後の地形までの体積を別途計上しているにもかかわらず、切土総量から再び表土量を差し引くと、流用可能量を少なく見積もります。反対に、表土分をまったく区分しなければ、盛土本体へ配分できる量を多く見積もることがあります。
他用途使用量の二重控除も確認します。仮設道路、構造物埋戻し、植栽基盤などの数量を盛土本体向け流用可能量からすでに差し引いている場合、残土計算で同じ数量を再度差し引くと収支が合わなくなります。
盛土内に含まれる構造物や土以外の材料の扱いも確認します。排水管、基礎、砕石層、舗装層などが占める体積を土量から控除していない 場合、盛土必要量が過大になります。
計測時期の違いも見落とされやすい要因です。切土の計測期間と搬出記録の期間が一致していない、前月の仮置き土が当月の搬出量に含まれている、盛土の沈下前後を混在させている場合、数字が一致しません。
運搬車両の公称容量だけで土量を算出している場合も、実績との差が生じやすくなります。実際の積載量は土の状態や積み方によって変わるため、車両台数だけから算出した数量は、測量による体積と完全には一致しないことがあります。
誤差を確認するときは、最初から換算係数を調整して数字を合わせるのではなく、元の地形面、範囲、土質区分、計測日、控除項目、仮置き量、搬入出期間を確認します。原因が分からないまま係数だけを変更すると、別の区間や施工段階でさらに大きなずれが生じる可能性があります。
土量収支表を実務で運用するための手順
実務で使いやすい土量収支表を作るには、計算結果だけでなく、数量の根拠と更新履歴を残すことが重要です。
最初に、計算対象範囲と基準日を設定します。工事全体、工区、測点区間、構造物周辺など、管理したい単位を決めます。次に、着工前現況、最新現況、計画地形の名称と作成日を記録します。
切土については、地山土量を土質区分別に整理します。そこから、盛土本体向け流用土、他用途向け流用土、条件付き利用土、利用不可土、場内保管土、場外搬出対象土へ配分します。
盛土については、完成後の体積を用途別に分けます。各用途について必要な品質条件を確認し、Cを用いて地山換算土量を算出します。場内流用土で満たせる量を割り当て、残りを借土量として計上します。
盛土本体向け流用土が余る場合は、別用途への転用可能量と場内保管可能量を確認し、それでも余る分を場外搬出見込み量とします。運搬計画では、これをLによりほぐし状態へ換算して、搬出期間や仮置き容量の検討に使います。
計算表には、設計値、前回見込み、今回実測、最新見込みを区別して記録すると、変化の理由を追跡しやすくなります。変更があった場合は、数量だけを書き換えるのではなく、設計変更、土質変更、計測範囲変更、係数見直し、用途変更などの理由を残します。
収支確認では、工事全体の最終値に加えて、施工時期ごとの不足量と余剰量も確認します。最終的に切土と盛土が均衡していても、施工途中で大量の仮置きが必要になる場合や、一時的に借土が必要になる場合があるためです。
計算担当者と施工担当者の間では、用語を統一します。「発生土」「流用 土」「残土」「借土」といった言葉が、人によって異なる意味で使われると、数量の二重計上や計上漏れが起きます。各項目が地山、ほぐし、締固めのどの状態を示すか、LとCをどの式で定義するかも共有します。
施工現場で取得した地形データを活用する場合は、計測範囲、不要物の除去、基準点との整合、地表面の抽出方法を確認します。計測点が多くても、地表面以外の点が含まれていたり、座標や高さ基準がずれていたりすれば、体積計算の信頼性は高まりません。
最後に、土量収支表の合計値が元の計算と整合しているかを確認します。切土総地山量が、盛土本体への流用量、他用途への流用量、場内保管量、場外搬出対象量の合計と一致するかを確かめます。同様に、盛土必要地山量が、場内流用量と借土地山量の合計で説明できるかを確認します。
このように収支の入口と出口を同じ体積状態で対応させることで、数量の抜けや重複を発見しやすくなります。
まとめ
借土と残土を含む切土・盛土収支を合わせるには、切土体積と盛土体積を単純に差し引くだけでは不十分です。まず現況地形と計画地形から切土と盛土を別々に計算し、地山土量、ほぐし土量、締固め土量の状態をそろえる必要があります。
土量変化率は、L=ほぐし土量÷地山土量、C=締固め土量÷地山土量のように分子と分母まで定義し、その定義に対応した換算式を使います。名称だけで係数を扱うと、掛け算と割り算を逆にするおそれがあります。
そのうえで、切土発生土を盛土本体向け、他用途向け、条件付き利用、利用不可、場内保管、場外搬出対象に区分します。盛土に必要な地山換算土量が盛土本体へ配分可能な場内土量を上回れば借土が必要となり、場内土量が上回れば余剰土が発生します。
工事全体の合計が均衡していても、施工区間、土質、施工順序によって一時的な不足や余剰が生じます。工区別、時期別、品質区分別に収支を整理し、どの場所の土をどこへ運ぶかまで計画することが重要です。
また、設計段階の土量収支は固定された答えではありません。施工中の測量結果、実際の土質、搬入量、搬出量、仮置き量、設計変更を反映し、借土と場外搬出の見込みを定期的に更新する必要があります。
切土・盛土の体積計算で大切なのは、計算値の細かさだけではなく、どの範囲を、どの時点で、どの状態の体積として計算したかを説明できることです。条件を明確にしたうえで継続的に計測すれば、借土不足や残土の過剰発生を早い段階で把握しやすくなります。
現場の地形を効率よく記録し、施工前後の形状を比較しながら土量管理を進めたい場合は、位置情報を活用した計測が役立つことがあります。日々変化する切土面、盛土面、仮置き場の状況を現地で取得して共有する方法 としてLRTK Phoneを用いる場合も、現場条件に応じた計測手順、座標・高さ基準、取得範囲、精度確認の方法をあらかじめ定めて運用することが重要です。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

