目次
• 88条申請で足場の設置期間が重要になる理由
• 設置期間は「いつからいつまで」で考えるのか
• 資料1 工程表で組立開始日と解体完了日を示す
• 資料2 足場計画図で設置範囲と対象足場を示す
• 資料3 契約・発注関係資料で工期と仮設条件を裏付ける
• 資料4 現場記録と変更履歴で延長・短縮の経緯を残す
• 4つの資料を整合させる確認ポイント
• 60日未満の判断で起きやすいミス
• 88条申請を遅らせない運用と記録管理
• まとめ:足場の設置期間は資料をそろえて説明できる状態にする
88条申請で足場の設置期間が重要になる理由
建設現場で「88条申請 足場」と検索する実務担当者の多くは、自社の足場計画が届出対象に当たるのか、また足場の設置期間をどの資料で説明すればよいのかを確認したい状況にあります。特に大規模修繕工事、外壁改修工事、解体工事、設備更新工事などでは、足場の高さや種類だけでなく、組立てから解体までの期間が判断の中心になります。
一般に「88条申請」と呼ばれることがありますが、法令上の手続きとしては労働安全衛生法第88条に基づく届出です。厚生労働省の案内でも、「足場/局所排気装置等の設置・移転・変更届」は労働安全衛生法第88条に基づく届出として整理されています。([Ministry of Health, Labour and Welfare][1]) そのため、社内や検索上の便宜として「申請」と表現する場合でも、本文や実務資料では「届出」「設置・移転・変更届」と区別しておくと誤解を避けやすくなります。
足場については、つり足場、張出し足場、またはそれ以外の足場で高さ10メートル以上の構造のものが、届出対象となり得る足場として確認されます。さらに、組立てから解体までの期間が60日未満のものは除外される扱いが示されているため、設置期間が60日以上になるかどうかは重要な分岐点です。 ここで注意したいのは、担当者が見ている「工事期間」と、届出要否の確認で見るべき「足場の設置期間」が必ずしも一致しないことです。
たとえば、外壁塗装の作業自体は45日で終わる予定でも、足場の組立てに数日、下地補修や検査待ちに数日、追加工事の調整に数日、解体に数日を要することがあります。結果として、足場が現場に残っている期間は60日以上になることがあります。逆に、全体工期は長くても、足場を必要とする範囲を工区ごとに分け、対象足場ごとの設置期間を短く整理できる場合もあります。したがって、88条申請の要否を判断する際は、工事全体の開始日と竣工日だけを見るのではなく、対象となる足場がいつ組み立てられ、いつ解体完了するのかを資料で説明できるようにしておく必要があります。
足場の設置期間を証明する資料は、単に「60日未満です」と主張するためのものではありません。所轄の労働基準監督署、元請、発注者、協力会社、社内安全部門に対して、同じ日付、同じ範囲、同じ前提で説明できる状態をつくるためのものです。資料同士に食い違いがあると、届出対象の判断が揺らぎ、提出期限の遅れ、工程変更、再確認、補正対応につながるおそれがあります。
とくに足場は、現場の安全管理に直結する仮設設備です。足場がある期間は、高所作業、第三者災害、資材落下、強風時対応、点検、養生、搬出入などのリスク管理が続きます。そのため、設置期間を曖昧にしたまま着工準備を進めることは避けるべきです。88条申請の実務では、足場の高さや種類だけでなく、足場が存在する期間をどのように把握し、どの資料で裏付けるかが、早期判断の大きな鍵になります。
設置期間は「いつからいつまで」で考えるのか
足場の設置期間を考えるときは、まず「作業している日数」ではなく「足場が現場に設置されている期間」として整理することが重要です。実務上は、足場の組立てを開始する日から、足場の解体が完了する日までを一連の期間として確認します。途中に休工日、雨天順延、検査待ち、発注者確認、資材待ち、追加作業の調整期間があっても、足場が残っているのであれば設置期間に含めて工程を確認する必要があります。
ここで誤りやすいのが、「足場の組立完了日から数える」「外壁作業の開始日から数える」「解体開始日までで終わりと考える」といった判断です。現場にとっては、作業員が足場上で本格作業を始める日が実質的なスタートに見えるかもしれません。しかし、足場そのものは組立作業の開始時点から現場に設置され始めます。また、解体についても、解体に着手した日ではなく、対象となる足場が解体され、残置状態が解消された日までを確認するほうが安全です。
設置期間の証明では、日付だけでなく対象範囲も重要です。建物全周に足場を設ける場合は比較的整理しやすいですが、複数棟、複数工区、部分足場、内部足場、屋上周り、塔屋周り、張出し部、つり構造を含む足場では、どの足場を一つの対象として見るのかが曖昧になりがちです。A工区の足場は45日、B工区の足場は50日でも、実際には一部が連続して残り、同じ構造として一体的に使われている場合には、単純に工区別の日数だけで判断できないことがあります。
また、当初は60日未満の予定であっても、追加工事や検査のやり直し、天候不良、入居者対応、近隣調整、資材納期の変更などにより、解体完了日が後ろ倒しになる ことがあります。88条申請の要否は、着工直前の予定だけでなく、工程変更の可能性も含めて早めに確認しておくことが大切です。ぎりぎり59日で組んだ工程は、現場では余裕が少なくなります。数日の変更で60日以上になる可能性があるなら、届出要否の確認を先送りせず、必要資料を整えて社内外に相談できる状態にしておくべきです。
設置期間を説明するためには、ひとつの資料に頼るのではなく、複数の資料で同じ結論を支えることが重要です。工程表だけでは、足場の範囲や種類が不明確なことがあります。足場計画図だけでは、日付が明確でないことがあります。契約書や発注書だけでは、現場変更が反映されていないことがあります。現場写真や日報だけでは、申請前の予定を説明する根拠としては不足することがあります。そこで、工程表、足場計画図、契約・発注関係資料、現場記録と変更履歴の4つを組み合わせることで、設置期間の説明力が高まります。
資料1 工程表で組立開始日と解体完了日を示す
足場の設置期間を証明するうえで、最初に確認すべき資料は工程表です。工程表は、現場全 体の流れを示す資料であり、足場の組立て、本工事、検査、手直し、解体までの時系列を説明する基本資料になります。88条申請の判断では、工程表に「足場」という独立した項目があり、組立開始日と解体完了日が明確に示されていることが重要です。
よくある工程表では、外壁補修、塗装、防水、設備工事などの本工事項目は詳しく書かれていても、足場については「仮設工」や「準備工」にまとめられていることがあります。この状態では、足場がいつからいつまで設置されるのかが読み取りにくくなります。88条申請の要否を判断する工程表として使うなら、足場組立、足場使用期間、足場解体を分けて記載し、日付の起点と終点が一目で分かるようにすることが望ましいです。
工程表で注意すべき点は、足場の組立開始日を作業開始日として明確にすることです。足場材の搬入日、先行養生、仮囲い、昇降設備の設置などが先行する場合、どこから足場の設置に当たるのかを現場の実態に合わせて整理する必要があります。搬入だけの日と、足場を組み立て始める日が異なる場合は、工程表上でも区別しておくと説明しやすくなります。単に「外壁工事開始」と記載しているだけでは、足場の組立期間が抜け落ちる可能性があ ります。
同じように、解体完了日も明確にする必要があります。工程表に「足場解体」とだけ書かれている場合、それが解体開始日なのか、解体作業期間なのか、解体完了日なのかが分からないことがあります。足場の設置期間を証明する資料として使うなら、解体作業の最終日、つまり対象足場が現場からなくなる日が分かるように記載します。解体後の清掃、搬出、補修、最終確認が続く場合でも、足場が残っているのかどうかを切り分けておくと説明しやすくなります。
工程表には、当初工程と変更後工程の両方が存在することがあります。88条申請の判断では、どの時点の工程表を根拠にしたのかが重要です。見積段階の概略工程、契約時の実施工程、着工前の詳細工程、月間工程、週間工程が混在していると、日付の食い違いが起きやすくなります。資料として使う工程表には、作成日、版数、作成者、承認者、適用範囲を明記し、古い工程と新しい工程を取り違えないように管理します。
さらに、設置期間が60日に近い現場では、工 程表に余裕日をどう扱うかも重要です。天候、検査、追加作業、発注者確認、入居者対応、休日、搬出入制限などにより、足場解体が遅れる可能性は十分にあります。工程表上は59日でも、現場条件から見て延長の可能性が高い場合には、申請要否の確認を早めるべきです。工程表は予定を示す資料ですが、現場の不確定要素を織り込まずに形式的な日数だけで判断すると、後から対応が苦しくなります。
工程表を足場の設置期間の証明に使う場合は、足場の種類や設置範囲と結びつけて読むことも欠かせません。同じ工程表の中に複数の足場がある場合、どの足場の期間を示しているのかが分からないと、88条申請の対象判断が曖昧になります。A棟外部足場、B棟外部足場、内部吹抜足場、屋上設備足場など、対象ごとに名称を分け、足場計画図の名称と一致させると、後の確認がスムーズになります。
資料2 足場計画図で設置範囲と対象足場を示す
工程表が日付を示す資料であるのに対して、足場計画図は「どの足場の期間なのか」を示す資料です。88条申請の判断では、足場の種類、設置位置、用途、構造、材質、主要寸法、建物との関係、張出しやつり構造の有無などを確認します。工程表に60日未満と書かれていても、足場計画図で対象範囲が不明確であれば、設置期間の説明としては十分ではありません。
足場計画図には、平面図、立面図、断面図、詳細図などがあります。平面図では、建物のどの範囲に足場を設置するのか、道路や敷地境界、搬出入口、資材置場、第三者動線との関係が分かります。立面図では、足場の高さ、段数、壁つなぎ、昇降設備、養生、手すり、幅木などの配置が分かります。断面図や詳細図では、張出し部、庇周り、屋上、段差部、狭あい部など、標準的な図面だけでは読み取りにくい部分を補足できます。
設置期間を証明する目的で足場計画図を見る場合、図面そのものに日付が書かれているかどうかよりも、工程表と同じ対象を示しているかが重要です。工程表に「北面足場」と書かれているのに、図面では建物全周の足場が描かれている場合、どの範囲が何日設置されるのかが分からなくなります。逆に、図面ではA工区、B工区、C工区に分かれているのに、工程表では「外部足場」と一括されている場合も、期間の判断が難しくなります。
足場計画図には、対象足場の名称や工区名を明確に入れることが有効です。工程表、施工計画書、作業手順書、協力会社の資料でも同じ名称を使えば、資料間の対応関係が分かりやすくなります。たとえば、工程表では「南面外部足場」、図面では「南面足場」、契約資料では「外壁南面仮設」と表現がばらばらだと、同じ対象なのか別対象なのかを確認する手間が増えます。名称をそろえることは、単純ですが重要な実務上の工夫です。
また、足場計画図は設置期間の短縮や分割施工を説明する資料にもなります。工期全体が長い場合でも、足場を工区ごとに組み替え、各工区の足場が連続して設置されない計画であれば、その考え方を図面で示す必要があります。ただし、図面上は分かれていても、実際には通路、昇降設備、養生、控え、連結部材などで一体的に使われる場合があります。その場合、単純に別々の足場として扱ってよいかは慎重に確認し、判断に迷うときは社内安全部門や所轄の労働基準監督署へ確認することが安全です。
足場計画図で設置期間を支えるためには、改訂履歴の 管理も欠かせません。現場では、建物形状の確認、近隣協議、道路使用条件、搬入計画、設備干渉、発注者要望などにより、足場範囲が変更されることがあります。図面の改訂により足場範囲が広がったり、撤去予定だった部分が残置されたりすれば、設置期間の判断にも影響します。古い図面をもとに60日未満と判断していたのに、最新図面では足場が継続しているということがないよう、工程表と足場計画図の版を合わせて管理します。
資料3 契約・発注関係資料で工期と仮設条件を裏付ける
足場の設置期間を証明する3つ目の資料は、契約・発注関係資料です。具体的には、工事請負契約、注文書、注文請書、見積条件書、仮設工事の発注範囲、協力会社との施工条件、工事仕様書、施工計画書に含まれる仮設条件などが該当します。これらは工程表や足場計画図の前提となる資料であり、足場の設置がどの範囲で、どの期間を想定して発注されているのかを裏付けます。
契約・発注関係資料は、設置期間を直接示す資料としては工程表ほど分かりやすくない場合があります。しかし、発注範囲や工期条 件を確認するうえでは重要です。たとえば、契約上の工期が長く、仮設足場が工事全体にわたり必要とされている場合、工程表だけで足場期間を短く見せても説得力が弱くなります。逆に、契約上は複数工区に分けて足場を設置・撤去する条件が明確であれば、工程表や図面と合わせて設置期間を説明しやすくなります。
見積条件や仮設条件には、足場の設置期間、存置期間、延長条件、組替え条件、搬入出条件などが書かれていることがあります。ここで注意したいのは、見積上の仮設期間が実際の工程と一致しているとは限らないことです。見積段階では概算期間で作成され、契約後の詳細工程で変更されることがあります。そのため、契約・発注関係資料は単独で判断するのではなく、最新の工程表や足場計画図と照合して使います。
協力会社への発注資料も重要です。元請の工程表では足場解体がある日に設定されていても、足場施工会社への発注条件では別の日付になっていることがあります。現場担当者、工務担当者、購買担当者、安全担当者が別々の資料を見ていると、足場の設置期間に対する認識がずれることがあります。88条申請の要否を判断する段階では、社内資料だけでなく、足場施工に関わる協力会社との 合意内容も確認しておくと安全です。
契約・発注関係資料で特に確認したいのは、足場の残置に関する条件です。外壁作業が終わっても、検査、手直し、設備復旧、シーリング確認、入居者対応、看板撤去、屋上作業などのために足場を残すことがあります。契約資料や発注条件に残置期間が含まれている場合、それは設置期間の判断に影響します。「本工事は終わっているから足場期間ではない」と考えるのではなく、足場が残っている理由と期間を資料上で説明できるようにしておく必要があります。
また、契約・発注関係資料は、後から工程変更が生じた場合の根拠にもなります。発注者から追加工事の指示があり、足場解体が延期された場合、変更指示書や協議記録、追加発注資料が残っていれば、なぜ設置期間が延びたのかを説明できます。これらの資料がないと、現場では当然の変更であっても、後から見ると単なる管理漏れに見えてしまうことがあります。88条申請の実務では、当初の予定だけでなく、変更の経緯を残すことが重要です。
資料4 現場記録と変更履歴で延長・短縮の経緯を残す
4つ目の資料は、現場記録と変更履歴です。工程表、足場計画図、契約・発注関係資料は、主に予定や計画を示す資料です。一方で、現場記録と変更履歴は、実際に何が起きたのか、いつ足場を組み始め、いつ解体したのか、なぜ予定が変わったのかを説明する資料です。足場の設置期間が当初予定から変わる可能性がある現場では、この記録が重要になります。
現場記録には、作業日報、安全日誌、朝礼記録、足場点検記録、搬入出記録、施工写真、写真台帳、協議記録、工程会議議事録、変更指示書、是正指示書などがあります。これらは、申請前の届出要否判断だけでなく、後から設置期間を確認する場面でも役立ちます。特に、足場組立開始日と解体完了日は、工程表上の予定だけでなく、実際の記録として残しておくと、説明の信頼性が高まります。
写真記録は、足場の設置状況を視覚的に示せる点で有効です。ただし、写真だけでは日付、場所、対象範囲が分からないことがあります。写真を証明資料として使うなら、撮影日、撮 影位置、対象工区、作業内容が分かるように整理する必要があります。単に足場が写っている写真を大量に残すだけでは、後から必要な写真を探すのに時間がかかります。組立開始、主要部の設置完了、部分解体、全面解体完了など、節目ごとに記録しておくと実務で使いやすくなります。
変更履歴も欠かせません。足場の設置期間は、現場の事情によって延びることがあります。天候不良による作業遅れ、追加補修、検査不合格による再施工、資材搬入の遅れ、近隣対応、作業時間制限、他工種との調整など、理由はさまざまです。重要なのは、延びた事実だけでなく、いつ、誰が、どの理由で、どの工程を変更したのかを残すことです。変更後の解体完了日が60日以上になる見込みがある場合、届出要否の再確認が必要になる可能性があります。
一方で、足場の設置期間が短縮された場合にも記録は必要です。当初は60日以上を見込んでいたものの、工区分けや工程改善により60日未満になった場合、その根拠を残しておかなければ、後から判断の妥当性を説明しにくくなります。短縮した理由、対象足場、変更後の工程表、実際の解体完了記録をそろえておくことで、社内確認や発注者説明がしやすくなります。
現場記録と変更履歴は、日々の忙しい現場では後回しにされがちです。しかし、88条申請の判断に関わる足場では、記録の遅れがそのまま説明不足につながります。特に、現場担当者が交代する場合、複数の協力会社が関わる場合、発注者や管理者から工程変更が頻繁に出る場合には、口頭のやり取りだけで済ませないことが大切です。足場の設置期間に影響する変更は、記録に残し、工程表と足場計画図に反映させる運用が必要です。
4つの資料を整合させる確認ポイント
工程表、足場計画図、契約・発注関係資料、現場記録と変更履歴の4つは、それぞれ役割が異なります。工程表は日付を示し、足場計画図は対象範囲を示し、契約・発注関係資料は前提条件を示し、現場記録と変更履歴は実態と経緯を示します。設置期間を証明するには、この4つが同じ結論を指していることが重要です。
まず確認すべきは、足場名称の一致です 。工程表では「外部足場」、図面では「枠組足場」、発注資料では「仮設足場」、日報では「南面足場」と書かれている場合、同じ足場を指しているのか分かりにくくなります。現場内では通じていても、第三者が資料を確認すると迷う可能性があります。足場の名称、工区、建物名、範囲をできるだけ統一し、資料間の対応関係を明確にします。
次に、日付の一致を確認します。工程表の足場組立開始日、発注資料の施工開始日、日報の組立開始日、写真の撮影日が大きくずれている場合、その理由を説明できるようにしておく必要があります。搬入日と組立開始日が違う、準備作業と本組立が違う、部分足場と全体足場が違うといった事情があるなら、資料上で区別しておくと誤解を避けられます。
解体完了日についても同様です。工程表では月末に解体完了となっているのに、写真では翌月も足場が残っている場合、設置期間の判断が変わる可能性があります。一部だけ残っていたのか、別足場だったのか、養生や昇降設備が残っていたのか、搬出待ちだったのかを確認し、必要に応じて記録を補足します。足場の設置期間は、現場の感覚ではなく、資料で説明できる状態にしておくことが大切です。
版数管理も重要です。工程表や図面は何度も改訂されます。古い資料が現場に残っていると、打合せのたびに違う日付が出てきてしまいます。最新版の資料には作成日と改訂日を明記し、古い資料を参照する場合は「当初計画」「変更前」「変更後」と区別します。88条申請の判断に使った資料がどの版なのかを残しておくことで、後から経緯を追いやすくなります。
また、4つの資料は社内確認の順番にも関わります。見積段階では契約・発注条件と概略工程で大枠を確認し、施工計画段階では工程表と足場計画図で対象判断を行い、着工前には最新工程と図面で届出要否を確定し、施工中は現場記録と変更履歴で延長リスクを監視します。この流れを決めておくと、担当者の経験だけに頼らず、組織として判断しやすくなります。
60日未満の判断で起きやすいミス
足場の88条申請で特に注意したいのが、60日未満と判断する場面です。届出 対象にならないと判断する場合ほど、根拠資料を丁寧に残す必要があります。なぜなら、60日以上の場合は届出に向けて資料を整える流れになりますが、60日未満と判断した場合は、資料が十分に残らないまま現場が進んでしまうことがあるからです。
最も多いミスは、本工事の作業日数だけで判断することです。外壁補修が40日、塗装が10日、検査が5日というように本工事だけを見ると60日未満でも、足場の組立と解体、休工日、検査待ち、手直し期間を含めると60日以上になることがあります。足場の設置期間は、実際に足場が現場に存在する期間として確認する必要があります。
次に多いのが、組立完了日から数えてしまうミスです。足場が完成して本格使用できるようになった日を起点にすると、組立期間が抜け落ちます。足場の規模が大きいほど、組立期間は数日にわたることがあります。組立途中であっても、足場材が建ち上がり、現場に仮設構造物として存在している以上、設置期間の確認から外してよいかは慎重に考える必要があります。
解体開始日までで数えてしまうこともあります。解体に着手した日で足場がなくなるわけではありません。大規模な足場では、解体作業にも数日を要します。対象足場が完全に解体される日までを確認しなければ、設置期間を短く見積もることになります。工程表には、解体開始日と解体完了日を分けて記載しておくと、このミスを防ぎやすくなります。
工区分けによる誤解もあります。工区ごとに足場期間を短くしているつもりでも、実際には一部の足場が連続して残っている場合があります。共通の昇降設備、通路、養生、連結部分などが残る場合、その部分の扱いを明確にしないと、設置期間の判断が不安定になります。工区ごとに足場を入れ替える計画なら、図面と工程表で切替日、解体範囲、残置範囲を説明できるようにしておく必要があります。
また、予定と実績を混同するミスもあります。届出要否の判断は着工前の計画段階で行う必要がありますが、施工中に工程が変われば、再確認が必要です。当初予定で60日未満だったからといって、施工中に延長してもそのままでよいとは限りません。工程変更が発生した時点で、足場の設置期間がどう変わるのかを確認し、60日以上になる見込みが出た場合は、 社内安全部門や所轄の労働基準監督署に相談する運用が必要です。
88条申請を遅らせない運用と記録管理
88条申請を遅らせないためには、足場を組む直前に確認するのではなく、見積段階や施工計画段階から届出対象の可能性を拾い上げることが重要です。足場の種類、高さ、設置範囲、組立開始日、解体完了日、工区分け、工程変更の可能性を早めに確認し、60日以上になる可能性がある現場は、余裕を持って資料作成に入ります。
足場の設置・移転・主要構造部分の変更に関する届出では、設置等の30日前までに監督署へ提出する必要がある手続きとして案内されています。 そのため、60日前後の工程で要否判断が遅れると、届出準備だけでなく、足場の組立予定そのものに影響する可能性があります。提出期限や添付資料の運用は案件や所轄署の確認事項によって異なることがあるため、迷う場合は早めに確認することが大切です。
実務では、営業、積算、工務、安全、現場、協力会社の間で情報が分かれやすくなります。営業段階では全体工期しか分からず、積算段階では仮設条件が概算で、現場段階では詳細工程が変更されるということがよくあります。そのため、足場の設置期間を管理する項目を社内で決め、どの段階で誰が確認するのかを明確にすることが大切です。
有効なのは、足場専用の確認項目を工程管理に組み込むことです。全体工程表の中に足場組立開始日と足場解体完了日を必ず入れ、60日以上または60日に近い場合は安全担当者や管理部門へ確認する流れをつくります。足場計画図が更新された場合は、工程表の日付も見直します。契約条件が変わった場合は、足場の残置期間が変わらないかを確認します。現場で変更が出た場合は、日報や議事録だけでなく、工程表の改訂にも反映します。
記録管理では、資料を後から探せる状態にすることが重要です。工程表、足場計画図、契約・発注資料、変更履歴、写真記録が別々の場所に保存されていると、確認に時間がかかります。足場ごと、工区ごと、日付ごとに資料を整理し、最新版と過去版を区別できるようにしておくと、申請準備や社内確認がスムーズになります 。
現場写真については、撮影しただけで満足しないことが大切です。足場の組立開始、組立完了、使用中、部分解体、解体完了といった節目を意識して撮影し、日付と場所が分かる形で整理します。後から「この写真はどこの足場か」「いつ撮ったのか」「解体完了を示しているのか」が分からない状態では、証明資料として使いにくくなります。
88条申請は、書類を作る担当者だけの仕事ではありません。足場の設置期間は、工程を組む人、図面を作る人、発注する人、現場で変更を受ける人、写真を撮る人の全員に関係します。だからこそ、資料の整合性を現場任せにせず、組織として管理する仕組みが必要です。特に、複数現場を同時に抱える会社では、担当者の記憶や個別の判断に頼るほど、申請漏れや判断遅れが起きやすくなります。
まとめ:足場の設置期間は資料をそろえて説明できる状態にする
88 条申請における足場の設置期間は、単に工程表の日数を数えるだけでは十分ではありません。大切なのは、対象となる足場がどれで、いつ組立てを開始し、いつ解体が完了し、その期間がどの資料で裏付けられるのかを説明できる状態にすることです。
そのためには、工程表で日付を示し、足場計画図で対象範囲を示し、契約・発注関係資料で工期と仮設条件を裏付け、現場記録と変更履歴で実態と経緯を残すことが重要です。この4つの資料がそろっていれば、60日以上に該当する場合の届出準備もしやすくなり、60日未満と判断する場合でも根拠を説明しやすくなります。
一方で、4つの資料に食い違いがあると、判断は不安定になります。工程表では足場解体が終わっているのに写真では残っている、図面では全周足場なのに工程表では一部足場になっている、契約資料では残置期間が含まれているのに現場では本工事期間だけで数えている、といった状態は避けなければなりません。資料の整合性は、申請書類のためだけでなく、現場の安全管理そのものを支える基盤です。
足場の設置期間は、現場が始まってから慌てて整理するものではありません。見積段階、施工計画段階、着工前、施工中の変更時、解体完了時のそれぞれで記録を残し、必要に応じて更新していくものです。特に60日前後の工程では、数日の遅れが届出要否の判断に影響する可能性があります。早めに資料を確認し、迷った場合は社内の安全担当者や所轄の労働基準監督署に相談できる状態を整えておくことが大切です。
足場の組立日、解体日、変更指示、現場写真、位置情報を現場で確実に残し、後から設置期間の説明資料として整理したい場合は、日々の記録をその場で残せる仕組みが役立ちます。紙の工程表や担当者の記憶だけに頼らず、写真、日報、変更履歴、図面の版数を一元的に追える運用を整えることで、88条申請に関わる足場の期間管理をより安全に進めやすくなります。
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