「88条申請 足場」で調べている実務担当者がまず知りたいのは、自分の現場の足場が届出対象なのか、それとも通常の安全書類管理で足りるのかという判断基準です。足場の88条申請は、実務上の通称であり、正式には労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出に関係する手続きです。足場の場合は、労働安全衛生規則第85条、第86条、別表第七に定められた対象や添付資料を確認する必要があります。([労働安全衛生法][1]、[労働安全衛生規則][2])
足場が届出対象になるかどうかは、建物が大きいか、工事金額が大きいか、見た目が大掛かりかだけで決まるものではありません。足場の種類、高さ、組立てから解体までの期間、設置・移転・主要構造部分の変更に当たるか、現地条件と図面の整合を順番に確認することで、届出漏れのリスクを減らせます。
目次
• 88条申請が必要な足場を最初に整理する
• ステップ1 足場の種類を確認する
• ステップ2 足場の高さが10m以上か確認する
• ステップ3 組立てから解体まで60日以上か確認する
• ステップ4 設置、移転、主要構造部分の変更に当たるか確認する
• ステップ5 図面、工程、現地条件を照合して届出漏れを防ぐ
• 実務で迷いやすい大規模足場の判断例
• 88条申請が必要と分かった後の準備
• まとめ
88条申請が必要な足場を最初に整理する
足場の「88条申請」は、実務では「足場の設置届」「機械等設置届」などと呼ばれることがあります。ただし、法令上の中心は、労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出と、労働安全衛生規則第86条に基づく様式第20号の届書です。厚生労働省の様式一覧でも、様式第20号は「機械等設置・移転・変更届」として示されています。([労働安全衛生規則関係様式][3])
ここで注意したいのは、「大 規模足場」という言葉が法令上の直接の判定語ではないことです。現場では大規模足場という表現がよく使われますが、届出対象の判断では、足場が大きく見えるかどうかよりも、労働安全衛生規則別表第七の足場に該当するかを確認します。別表第七では、足場について「つり足場、張出し足場以外の足場にあっては、高さが10m以上の構造のものに限る」とされています。([労働安全衛生規則][2])
そのため、最初の入口は三つです。第一に、つり足場または張出し足場に当たるかを確認します。第二に、それ以外の足場であれば、高さが10m以上の構造になるかを確認します。第三に、労働安全衛生規則第85条の除外規定に照らし、足場の組立てから解体までの期間が60日未満でないかを確認します。60日未満の足場は、足場の機械等設置・移転・変更届としては届出対象から除かれる扱いです。
ただし、60日未満であれば安全管理が不要になるわけではありません。足場の組立て、解体、変更、点検、墜落防止措置、作業主任者などの安全衛生上の義務は、88条届出の要否とは別に確認が必要です。また、建設工事そのものが別の計画届の対象になる場合もあります。足場の届出だけを見て、工事全体の届出や安全措置を見落とさないようにします。
したがって、88条申請が必要な大規模足場を見分ける基本は、「足場の種類を見る」「高さを見る」「設置期間を見る」「設置や変更に当たるかを見る」「図面と現地を照合する」という順序です。この順番で確認すれば、担当者の経験や感覚だけに頼らず、社内確認や所轄労働基準監督署への事前相談にもつなげやすくなります。
特に改修工事や大規模修繕工事では、当初は短期間の予定だった足場が工程変更で長期化したり、建物の一部だけ足場高さが10m以上になったりすることがあります。届出の要否を着工直前に慌てて確認すると、図面、工程表、構造検討、社内確認、協力会社との調整が間に合わないおそれがあります。対象になりそうな足場は、見積段階や施工計画段階から早めに拾い上げておくことが大切です。
ステップ1 足場の種類を確認する
最初のステップは、設置する足場の種類を確認することです。88条申請の足場判断では、まずつり足場や張出し足場に当たるかどうかを見ます。つり足場は、地上から建て上げるのではなく、上部の構造物などから吊って作業床を設ける足場です。橋梁、プラント、工場設備、吹き抜け部、地上から足場を組みにくい場所などで採用されることがあります。
張出し足場は、建物や構造物から外側へ張り出す形で支持する足場です。地盤から通常どおりに建てられない場所や、庇、外壁、設備まわりなどで作業床を確保するために使われることがあります。つり足場や張出し足場は、一般的な地上建て足場と支持方法や荷重の伝わり方が異なるため、見た目の高さだけで「低いから届出不要」と判断するのは避けるべきです。
労働安全衛生規則別表第七の足場欄では、高さ10m以上という限定は「つり足場、張出し足場以外の足場」にかかっています。つまり、つり足場や張出し足場は、高さだけで対象外とは判断できません。ただし、足場全体については、組立てから解体までの期間が60日未満のものを除く規定もあるため、種類と期間をセットで確認する必要があります。
実務担当者が迷いやすいのは、足場計画書や見積書に書かれた名称だけで判断してしまうことです。書類上に「外部足場」「作業足場」「仮設足場」とだけ記載されている場合、それが地上から建て上げる足場なのか、部分的に張り出す構造を含むのか、吊り材を使うのかが分からないことがあります。仮設業者や施工担当者に確認し、支持方法、建地の有無、吊元や張出し支持部の有無を明確にします。
一つの現場に複数種類の足場が混在することもあります。外周部は通常の地上建て足場であっても、庇の下、設備架台の周辺、橋梁下面、吹き抜け内部、屋上設備まわりだけは、つり足場や張出し足場になることがあります。この場合、「外周足場は10m未満だから対象外」と一括で判断すると、部分的な対象足場を見落とすおそれがあります。
足場の種類は、建物全体ではなく、設置区画ごと、作業場所ごとに確認する意識が重要です。平面図、立面図、断面図、仮設計画図を見ながら、足場がどこに支持され、どこに荷重が伝わり、どの部分が作業床になるのかを追います。図面だけで分からない場合は、現地写真や現況測量の結果も合わせて確認します。特に既存建物の改修では、図面上の想定と現地の納まりが異なることがあるため、現地条件を見ずに種類を決めるのは避けましょう。
ステップ2 足場の高さが10m以上か確認する
次のステップは、足場の高さが10m以上になるかどうかを確認することです。つり足場や張出し足場以外の足場では、高さ10m以上の構造かどうかが88条申請の大きな判断点になります。ここで大切なのは、建物の階数や外観の印象ではなく、実際の足場計画に基づいて確認することです。
足場高さの確認では、どの基準面から、どの最高部までを見ているのかを明確にします。法令の文言だけでは、すべての現場条件に対する細かな測り方まで示されているわけではありません。そのため、現地の地盤差、敷板やベース部、作業床の最上部、手すり、パラペットまわり、屋上設備まわりなどを図面上で確認し、判断根拠を残すことが重要です。

