88条申請は「何日前までに出すのか」だけでなく、「誰が出すのか」「官庁工事でも必要なのか」「工事開始日のどこを起点に数えるのか」で迷いやすい届出です。特に公共工事では、発注者側の着手書類、施工計画書、契約上の工程承認と、労働基準監督署などへ出す法定届出が同時に動くため、実務担当者ほど判断に悩みます。
この記事では、現場で「88条申請」と呼ばれる計画届について、官庁工事での考え方と発注形態別の期限確認方法を、実務で使える順番に整理します。なお、「申請」という呼び方は実務上の通称であり、労働安全衛生法第88条で中心になるのは、許可を求める手続というより、対象となる工事や仕事を始める前に計画を届け出る手続です。
目次
• 88条申請は「官庁工事なら不要」ではなく工事内容で判断する
• まず押さえる期限は30日前と14日前
• 官庁工事で迷いやすい発注者・元請・下請の役割
• 発注形態別に見る期限確認の実務
• 「何日前」を数える起点は契約日ではなく仕事の開始日
• 対象工事の見落としが起きやすい場面
• 官庁工事で提出前に固めるべき資料と確認事項
• 遅れそうなときの現実的な対応と再発防止
• 現場で使える期限確認フロー
• まとめ:88条申請は発注者名ではなく危険性と工事開始日から逆算する
88条申請は「官庁工事なら不要」ではなく工事内容で判断する
結論から言えば、88条申請は官庁工事でも必要になることがあります。正確には、官庁工事だから必要、民間工事だから必要という分け方ではなく、労働安全衛生法第88条に定める機械等の設置・移転・主要構造部分の変更、または一定の建設業等の仕事に当たるかどうかで判断します。発注者が国、地方公共団体、公共的な機関であっても、対象となる仕事が含まれる場合に法定の計画届から当然に外れるわけではありません 。([Ministry of Health, Labour and Welfare][1])
官庁工事で誤解が起きやすいのは、発注者側に提出する書類が多いことです。契約上の着手届、施工計画書、工程表、安全管理計画、仮設計画、材料承諾、関係機関協議資料などを発注者へ提出していると、「発注者に出したから行政手続も済んだ」と感じてしまうことがあります。しかし、発注者への提出書類と、所轄の労働基準監督署長などへ届け出る88条関係の書類は、目的も提出先も異なります。発注者の監督職員が施工計画を確認していても、それだけで法定届出が完了したことにはなりません。
また、官庁工事では仕様書や特記条件に「関係法令を遵守すること」「必要な届出を行うこと」といった表現が置かれていることが多くあります。この場合、発注者が個別に「88条申請を出してください」と明示していなくても、受注者側で対象性を確認し、必要な届出を期限内に行うことが前提になります。公共工事は書類の様式や審査手順が整っているため安心しがちですが、法令上の届出要否は契約書の見出しではなく、工事の実態で判断する必要があります。
なお、公共団体が発注する工事について、別制度の技術上の審査などで対象除外が問題になる場面があります。しかし、それを「官庁工事なら88条届出が不要」と一般化するのは危険です。届出、審査、発注者承認、建築確認、道路使用・占用、石綿関係の報告や届出は、それぞれ根拠法令と目的が異なります。似た言葉に引っ張られず、対象作業、提出先、提出期限を分けて確認することが大切です。([Ministry of Health, Labour and Welfare][2])
つまり、実務担当者が最初に確認すべき問いは、「この工事は官庁工事か」ではありません。「この工事の中に、88条の計画届または機械等設置等の届出対象となり得る作業があるか」です。官庁工事であっても、対象工事であれば期限までに届け出る。対象外であれば、官庁工事であっても88条の届出は不要です。ただし、対象外と判断した根拠は、後で説明できるように仕様書、図面、工程、仮設計画、使用機械、作業内容の確認記録として残しておくことが重要です。
まず押さえる期限は30日前と14日前
「88 条申請 何日前」と検索する実務担当者が最初に押さえるべき数字は、30日前と14日前です。労働安全衛生法第88条では、機械等の設置・移転・主要構造部分の変更については工事開始日の30日前まで、特に大規模な建設業の仕事については仕事開始日の30日前まで、一定の建設業その他の仕事については仕事開始日の14日前までという枠組みが置かれています。提出先は、内容によって所轄労働基準監督署長または厚生労働大臣に分かれます。([Ministry of Health, Labour and Welfare][1])
30日前の対象として特に注意したいのは、まず機械等の設置、移転、主要構造部分の変更です。これは所轄労働基準監督署長への届出が問題になります。次に、建設業に属する事業の仕事のうち、重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事です。この場合は、仕事開始日の30日前までに厚生労働大臣へ届け出る規定が置かれています。大規模な塔、ダム、橋梁、ずい道、圧気工法を伴う仕事などが代表例として規則で定められています。([Ministry of Health, Labour and Welfare][2])
14日前の対象としては、高さ31メートルを超える建築物や工作物の建設・改造・解体・破壊、一定規模以上の橋梁、ずい道等、深さまたは高さ10メートル以上の地山掘削、圧気工法、一定の石綿除去等、廃棄物焼却施設の設備解体等、土石採取業に関する掘削などが規則で定められています。ここで重要なのは、「解体なら全部」「改修なら全部」という単純な整理ではなく、規模、構造、作業方法、有害物の有無などの条件に照らして見ることです。([Ministry of Health, Labour and Welfare][2])
30日前と14日前は、どちらか好きなほうを選べる期限ではありません。対象となる条文、仕事の種類、規模、提出先によって期限が決まります。実務上は、まず全体工事の中に88条関係の対象があるかを洗い出し、次にそれが30日前の届出なのか、14日前の届出なのかを分けます。そのうえで、工程表のうち最も早く始まる対象作業日から逆算します。全体工期の開始日が後ろでも、対象作業が先行するなら、その作業開始日が期限管理の基準になります。
また、法定期限を営業日換算でゆるく見積もるのは危険です。休日や閉庁日をまたぐ場合、担当者の不在、書類補正、添付図面の差替え、発注者確認の遅れまで考えると、期限当日に持ち込む運用は安全とはいえません。特に官庁工事では、発注者へ提出する施工計画の内容と、法定届出の添付資料の内容を合わせる必要があります。社内期限は法定期限より前に置き、補正や再確認 の時間を確保しておくのが実務上は安全です。
官庁工事で迷いやすい発注者・元請・下請の役割
官庁工事で88条申請の担当が迷う最大の理由は、発注者、元請、下請、共同企業体、専門工事業者など関係者が多いことです。発注者が官庁である場合、発注者側の監督職員や工事監理担当者が強い確認権限を持つため、「発注者が届出するのではないか」と考えてしまうことがあります。しかし、88条関係の届出は、単に発注者名だけで決まるものではありません。誰が事業者として仕事を行うのか、数次の請負契約になっているのか、元請がいるのか、自ら仕事を行う発注者がいるのかを確認する必要があります。
労働安全衛生法第88条には、数次の請負契約で行われる仕事について、一定の規定の適用主体を整理する規定があります。自ら仕事を行う発注者がいる場合と、そうでない場合とで、発注者以外の事業者や元請負人以外の事業者への適用関係が変わります。したがって、下請が実際に対象作業を行うからといって、常に下請が単独で届出すれば足りるという単純な整理にはなりません。([Ministry of Health, Labour and Welfare][1])
公共工事で一般的な単独元請方式では、受注した元請が全体の施工管理、安全管理、関係請負人の調整を担います。この場合、88条届出の要否確認も元請側が主導するのが通常です。下請が足場、解体、石綿除去、掘削、仮設構造物、設備据付などの専門作業を担当する場合でも、元請は専門工事業者から必要な計画、図面、計算書、資格者情報、施工方法、使用機械情報を集め、届出書類として整える必要があります。下請任せにして提出期限を逃すと、工程管理上の大きな問題になります。
共同企業体で受注する官庁工事では、代表構成員、構成員ごとの施工分担、現場代理人、監理技術者、安全衛生責任体制の関係を確認します。実務上は、共同企業体の協定、施工分担、発注者との協議記録を踏まえ、誰の名義で届け出るのか、誰が添付資料を取りまとめるのかを早期に決めておかなければなりません。代表者が決まっていても、各構成員の担当範囲に対象作業が隠れていると、資料集約が遅れます。
下請として官 庁工事に参加する会社も、元請から指示が来るまで待てばよいわけではありません。自社の施工範囲に対象となり得る作業がある場合は、見積段階または施工計画作成段階で元請へ申告し、必要書類の作成期間を工程に入れておく必要があります。特に専門工事では、元請が対象性を細部まで把握していないことがあります。下請が自社の専門領域として「この作業は計画届の対象になる可能性があります」と早めに伝えられるかどうかで、工程遅延のリスクは大きく変わります。
発注形態別に見る期限確認の実務
発注形態別に見ると、88条申請の期限確認はかなり整理しやすくなります。単独元請方式では、元請が全体工程を持っているため、対象作業を工程表にひも付け、30日前または14日前の期限を逆算します。このとき、契約上の工期開始日だけを見るのではなく、実際に現場で対象作業が始まる日を確認します。仮囲い、測量、試掘、既設物調査、仮設足場、解体、掘削などが先行する場合、どの作業が88条届出の対象になり得るのかを作業単位で分けて見ます。
分離発注方式では、建築、電気、機 械、外構、解体、設備改修などが別契約になることがあります。この場合、一つの官庁施設内で複数の元請が並行して作業するため、「誰か一社が出しているはず」という思い込みが危険です。各契約の受注者は、自社が請け負った仕事の中に88条対象の作業があるかを確認しなければなりません。建築工事側では解体や仮設が問題になり、設備工事側では機械等の設置や既存設備の改造が問題になり、外構側では掘削や土留めが問題になることがあります。
設計施工一括方式では、設計段階で工法や仮設計画が固まり切っていないまま契約が進むことがあります。そのため、受注直後に「詳細設計が終わってから届出を考える」という運用にすると、実施工開始までの時間が足りなくなります。この方式では、基本設計や提案時点の仮設計画をもとに、88条対象になり得る作業を先に抽出しておき、詳細設計で変更があった場合に届出内容へ反映する段取りが必要です。届出は完成した図面を後から添える事務作業ではなく、施工計画と同時に走らせる安全確認の一部と考えるべきです。
維持修繕や包括的な保全契約では、名称が「保守」「修繕」「小規模改修」となっていても、実際には解体、撤去、石綿含有建材への対応、高所 作業、仮設足場、大型機械の据付、深い掘削などを含む場合があります。官庁施設の維持管理では、年度内に複数の小工事が発生し、個別指示で着手するケースもあります。この場合、個別指示を受けてから届出要否を確認すると間に合わないことがあります。契約時点で想定される作業メニューを確認し、対象になり得る作業が出た場合の連絡ルートを先に決めておくことが重要です。
災害復旧や緊急対応工事では、早急な着手が求められるため、88条申請の期限管理が最も難しくなります。緊急だからといって、法定届出の対象性が自動的に消えるわけではありません。崩落の防止、人命保護、二次災害防止などで急を要する場合でも、所轄の行政機関へ早期に相談し、どの作業をいつ開始するのか、どの資料がいつ整うのかを明確にする必要があります。実務上は、緊急対応部分と通常施工部分を分け、通常施工部分については通常どおり期限を逆算する姿勢が欠かせません。
「何日前」を数える起点は契約日ではなく仕事の開始日
88条申請の期限確認で最も多い誤りは、契約日、工期開始日、発注者への着手届提出日、現場事務所開設日をそのまま起点にしてしまうことです。法定期限は、対象となる工事または仕事の開始日から逆算して確認します。機械等の設置・移転・主要構造部分の変更では「工事の開始の日」、建設業等の一定の仕事では「仕事の開始の日」が基準になります。契約日は契約関係が始まる日であり、工期開始日は契約上の期間の始まりです。法令が問題にしているのは、対象となる機械等の工事や建設業等の仕事が実際に始まるタイミングです。([Ministry of Health, Labour and Welfare][1])
たとえば、契約工期は4月1日からでも、実際の現場作業は4月10日から始まることがあります。一方で、工期開始直後に仮設足場や解体に入る場合は、4月1日またはその直後が対象作業の開始日になる可能性があります。さらに、準備工として行う既設物撤去や試掘が、対象作業と一体で扱われる可能性もあります。したがって、「本体工事はまだ始まっていない」という理由だけで届出を後ろ倒しにするのは危険です。
数え方の実務としては、まず工程表の作業項目を細かく分けます。次に、その中から88条対象になり得る項目を拾います。そして、その対象項目の初日を期限計算の起点にします。対象項目が複数ある場合は 、最も早い開始日を基準にします。30日前対象と14日前対象が混在する場合は、それぞれ別に逆算します。工程変更で対象作業が前倒しになる場合は、届出期限も前倒しになります。工程短縮を決めた後に届出期限だけ元のままにすることはできません。
官庁工事では、発注者との工程協議で「早期着手」「前倒し施工」「休日施工」「夜間施工」が決まることがあります。こうした変更は、単に作業時間帯や工程効率の問題ではなく、法定届出の期限にも影響します。発注者との協議で工程が変わった場合は、施工計画書の改定だけでなく、88条届出済みの内容や提出予定日にも影響がないかを確認します。特に、仮設計画や施工方法が変わる場合、届出内容の変更や追加説明が必要になることもあります。
また、14日前や30日前は、提出すればその瞬間にすべて完了するという意味ではありません。書類に不足があれば補正が必要になり、図面や計算書の整合が取れていなければ再確認が発生します。期限ぎりぎりの提出は、形式上は間に合ったように見えても、実際には着手判断を不安定にします。安全に運用するなら、社内レビュー、専門工事業者確認、発注者説明、行政窓口確認、補正対応まで含めた逆算が必要です。
対象工事の見落としが起きやすい場面
88条申請の見落としは、大規模な新築工事よりも、改修、解体、仮設、部分施工、設備更新で起きやすい傾向があります。大規模新築工事では、最初から安全書類の体制が整い、計画届の確認も工程に組み込まれやすいからです。反対に、短期間の官庁施設改修、学校や庁舎の休業期間中工事、病院や研究施設の一部改修、既存設備の入替工事などでは、「小規模だから対象外だろう」という先入観が働きやすくなります。
代表的に確認したいのは、高さ31メートルを超える建築物や工作物の建設、改造、解体、破壊を伴う仕事、一定規模以上の橋梁工事、ずい道等の工事、深い地山掘削、圧気工法を伴う工事です。こうした仕事は、発注者が官庁であっても民間であっても、危険性の性質は変わりません。特に改修工事では、図面上は一部撤去でも、実際には高所、重量物、開口、墜落、飛来落下、崩壊、粉じん、閉所、酸欠など複数のリスクが重なります。
石綿関連の工事も見落としが多い分野です。既存建築物、工作物、船舶などに使用されている吹付け材、保温材、耐火被覆材、断熱材などの除去、封じ込め、囲い込みでは、事前調査、作業計画、掲示、隔離、記録、届出など複数の手続が関係します。厚生労働省の石綿総合情報ポータルでも、石綿を含む保温材等の除去工事の計画は、吹付け石綿の除去工事と同様に14日前までに労働基準監督署へ届け出る必要があると案内されています。([石綿総合情報ポータル][3])
仮設足場、型枠支保工、架設通路、つり足場などの仮設設備も、条件次第で88条関係の届出が問題になります。仮設は本体構造物ではないため軽く見られがちですが、墜落、倒壊、崩壊のリスクが高く、むしろ安全確認上は重要です。公共施設の外壁改修や屋上防水、耐震改修、設備更新では、足場や仮設通路が主役になることもあります。工事名が「外壁改修」や「防水改修」でも、88条確認では仮設計画を中心に見る必要があります。
設備工事では、機械室内の大型設備の入替、重量物の搬入、既設架台の改造、排気設備や集じん設備の設置、危険または有害な作業環境に関係する装 置の変更などが問題になります。建築工事の担当者は設備側の88条対象性を見落とし、設備担当者は建築側の仮設や解体を見落とすことがあります。分離発注の官庁工事ではこの分断が起こりやすいため、工程会議で「88条対象になり得る作業」を工種横断で確認する場を設けることが有効です。
官庁工事で提出前に固めるべき資料と確認事項
88条申請の資料作成では、届出書そのものより、添付資料の整合性が重要です。官庁工事では発注図、現場説明書、特記仕様書、数量書、施工条件、関係機関協議条件、現場制約が多く、これらと届出書類の内容が食い違うと補正や説明に時間がかかります。届出書の提出前には、まず工事名称、施工場所、発注者名、元請名、施工範囲、工期、対象作業の開始日を一致させます。
建設業に係る計画届では、仕事を行う場所の周囲の状況や四隣との関係を示す図面、建設等をしようとする建設物等の概要を示す図面、工事用の機械・設備・建設物等の配置図、工法の概要、労働災害を防止するための方法や設備の概要、工程表などが添付資料として規則に示されて います。実際に必要な資料は届出の種類や工事内容で変わるため、所轄や社内安全部門と確認しながら準備するのが安全です。([Ministry of Health, Labour and Welfare][2])
官庁工事では、発注者側に提出する施工計画書と、88条届出の添付資料を別々に作ることがあります。しかし、内容は同じ現場を説明するものです。片方では足場の設置開始日が月初、もう片方では中旬になっている。片方では掘削深さが設計変更前、もう片方では設計変更後になっている。片方では作業主任者が未定、もう片方では別の氏名が入っている。このような不整合は、単なる事務ミスに見えて、工程や安全管理の信頼性を損ないます。
資料の確認では、発注者承認を待つものと、届出期限に間に合わせるため先に固めるものを分ける必要があります。公共工事では、施工計画書の承認や協議に時間がかかることがありますが、法定届出の期限はそれとは別に進みます。発注者確認中だから届出できないという状態を避けるため、早い段階で発注者に「88条関係の届出期限があるため、対象作業に関する仮設計画や施工方法を先行確認したい」と伝えることが実務上有効です。
また、所轄の確認も重要です。提出先は工事場所または仕事を行う場所を管轄する労働基準監督署長になる場合が多い一方、特に大規模な仕事では厚生労働大臣への届出が問題になります。官庁工事の発注者所在地と、実際の工事場所が異なる場合、発注者の近くの窓口ではなく、現場所在地を基準に確認する必要があります。複数の行政区域にまたがる工事、長い線状工事、施設群を対象にした改修では、所轄の整理を早めに行うことが大切です。
遅れそうなときの現実的な対応と再発防止
88条申請が遅れそうなとき、最も避けるべき対応は、対象性をあいまいにしたまま現場を進めることです。「たぶん不要」「小さい工事だから大丈夫」「官庁工事だから発注者が見ている」「下請がやる作業だから元請は関係ない」といった判断は、後で説明がつきません。遅れそうだと分かった時点で、まず対象作業の開始日、対象性、提出期限、未作成資料、工程上の余裕を整理します。
次に、所轄窓口や社内の安全担当、必要に応じて専門家へ早急に相談します。相談時には、工事名だけではなく、具体的な作業内容、規模、高さ、深さ、施工方法、使用機械、仮設の概要、開始予定日、発注形態を説明できるようにします。窓口へ「必要ですか」とだけ聞いても、情報が不足していれば正確な判断は難しくなります。図面、工程表、施工手順の要点を整理したうえで相談することが、結果的に早道です。
工程上可能であれば、対象作業の開始日を後ろにずらし、届出期限を確保します。官庁工事では工期全体を変えられない場合でも、対象作業以外の準備、資材手配、現場調査、仮設以外の協議、施工図作成などを先行し、88条対象作業だけを期限後に開始する方法を検討できます。ただし、準備作業そのものが対象作業に該当する可能性がある場合は、単に名称を変えて先行させることはできません。何を開始でき、何を開始できないのかを明確に分ける必要があります。
再発防止としては、入札前または見積段階で88条確認欄を設けるのが有効です。工事概要を見た時点で、建築物や工作物の高さ、解体の有無、掘削の深さ、橋梁やずい道の有無、石綿調査の要否、仮設足場の条件、機械等設置の有無を確認します。受注後に初めて88条を確認する運用では、契約から着手までの期間が短い官庁工事に対応できません。特に年度末工事や休業期間中工事では、契約後すぐに現場が動くため、入札前確認が重要です。
さらに、工程表に「88条届出期限」という行を入れることも効果的です。多くの工程表では、契約、施工計画書提出、材料承認、現場着手、完成検査は管理されますが、法定届出の期限が別管理になっています。工程表上に対象作業開始日、届出提出予定日、社内審査日、発注者確認日を入れておけば、工程会議で自然に確認できます。安全書類を現場代理人だけに任せず、工務、設計、購買、専門工事業者まで同じ日付を共有することが遅延防止につながります。
現場で使える期限確認フロー
88条申請の期限確認は、複雑に見えても、順番を決めれば実務に落とし込めます。最初に行うのは、工事全体の名称ではなく、作業単位への分解です。新築、改修、解体、撤去、掘削、仮設、設備据付、石綿対応、橋梁、ずい道、土留め、重量物搬入など、実際の作業に分けて工程を見ます。官庁工事の件名が「改修工事一式 」であっても、その中に何が含まれるかを見なければ、88条の要否は判断できません。
次に、分解した作業ごとに対象性を確認します。ここでは、工事の規模、高さ、深さ、支間、施工方法、使用機械、仮設条件、有害物の有無、解体や破壊の有無を見ます。対象になりそうな作業を見つけたら、30日前対象か14日前対象かを分けます。判断に迷う場合は、早めに所轄へ相談する前提で工程を組みます。届出が不要だった場合より、必要だったのに期限を逃した場合のほうが現場への影響は大きいからです。
その次に、誰が届け出るのかを決めます。単独元請、分離発注、共同企業体、下請施工、自社施工を含む発注者、保全契約など、発注形態を確認し、届出主体と資料作成者を分けます。実務上は、届出名義を持つ会社と、添付資料を作る会社が異なることがよくあります。足場専門業者、解体業者、設備業者、土工業者、調査会社が資料を作り、元請が全体をまとめるケースでは、資料提出期限を下請にも明示する必要があります。
続 いて、対象作業の開始日を工程表から拾い、法定期限を逆算します。30日前対象なら30日前、14日前対象なら14日前を確認し、閉庁日や補正対応を考慮して提出予定日を前倒しします。ここで大切なのは、提出予定日だけでなく、資料完成日、社内確認日、発注者への説明日も工程化することです。届出書の作成だけなら数日でできる場合でも、図面修正、計算書確認、有資格者情報の収集、施工方法の見直しには時間がかかります。
最後に、提出後の変更管理を行います。88条申請は、提出したら終わりではありません。工程変更、施工方法変更、仮設計画変更、使用機械変更、作業範囲変更、設計変更があれば、届出内容との整合を確認します。官庁工事では、発注者からの指示、現場条件の変更、関係機関協議の結果によって施工計画が変わることがあります。そのたびに、88条届出の内容に影響がないかを確認する運用を持つことで、提出済み書類と実施工のずれを防げます。
まとめ:88条申請は発注者名ではなく危険性と工事開始日から逆算する
88条申請が官庁工事でも必要かどうかの答えは、「官庁 工事だから免除されるわけではなく、対象工事なら必要」です。判断軸は発注者の種類ではなく、工事内容、作業方法、規模、仮設、使用機械、有害物、請負形態です。公共工事では発注者に提出する書類が多いため、法定届出と契約書類を混同しやすくなりますが、両者は別の手続です。発注者の確認を受けていても、所轄などへの届出が必要な場合は期限内に別途対応しなければなりません。
期限確認では、30日前と14日前をまず押さえます。機械等の設置や変更、特に大規模な建設業の仕事では30日前が問題になり、一定規模・種類の建設工事等では14日前が問題になります。ただし、どちらも起点は契約日ではなく、対象となる工事または仕事の開始日です。工程変更で対象作業が前倒しになれば、届出期限も前倒しになります。現場着手前の慌ただしい時期に確認するのではなく、見積段階、受注直後、施工計画作成時の三段階で確認するのが安全です。
発注形態別には、単独元請なら元請主導、分離発注なら各契約の受注者ごとの確認、共同企業体なら代表者と分担範囲の整理、保全契約なら個別作業発生時の早期判定がポイントになります。下請が実作業を行う場合でも、元請は資料を集約し、届出主体や工程への影響 を管理する必要があります。下請側も、自社の専門作業が対象になり得る場合は、元請へ早期に申告することで工程遅延を防げます。
実務で重要なのは、対象性、期限、届出主体、添付資料、変更管理を一つの流れで見ることです。88条申請は、単なる書類提出ではなく、危険な工事や作業を始める前に計画の安全性を確認するための仕組みです。だからこそ、図面、工程、施工方法、資格者、仮設計画、現場写真、協議記録をばらばらに管理していると、確認漏れや期限遅れが起きます。
現場の情報を早く集め、関係者へ共有し、提出期限から逆算して動く体制があれば、官庁工事でも88条申請は慌てずに対応できます。特定の発注者名や工事件名だけで判断せず、対象作業の有無、開始日、届出主体、提出先を一つずつ確認し、必要に応じて所轄労働基準監督署や専門家へ早めに相談することが、公開前・着手前の安全な確認方法です。
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